軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

107、楽園への誘い

楽園への帰りは出会うに任せて海の魔物や陸の魔物をいくつか狩ってみた。意外とたくさん獲れたので、この夏の食糧はもう十分だろう。

最後にマギトレントを伐採して終わりだ。いつもとは来た方向が違うから分かりにくいんだよな。確かこの辺りだと思うんだが……

なにぶん上から見たら一面の森だもんな。

おっ、一本だけやたら大きい木が生えてるな。ノワールフォレストの森のボスか? ならば近寄るまい。私が欲しいのはマギトレントなのだから。イグドラシルを見た後では雲に届くか届かない程度の高さでは驚けないな。

「アレク、あの木知ってる? 気になる木だよね。」

「確か……オガタマノキだったかしら。死せるものの魂を招くとか、そんな意味があったような。」

「やっぱりアレクは詳しいね! なら近寄ることもないかな。」

「ガウガウ」

え? 今度はカムイか。寄って欲しいって? 珍しいな。構わんよ。

「カムイが寄り道したいんだって。降りてみるよ。」

昔ならこんな所に降りるなんて命がけだったろうな。私も成長したものだ。

降りてみてびっくり。巨大な黒い狼の群れがいるではないか。一体何匹いるんだ?

特にボスらしきやつ、結構傷だらけだけど眼光が鋭い。きっと牙も爪も鋭いんだろうな。

その中から二匹の狼が私めがけて襲いかかってきた。

「ガウガウ」

え? 攻撃するなって?

「カース!」

心配するアレクをよそに、二匹の狼は私を地面に押し倒して……顔を舐めてきた。まさか……

「クロちゃんネロちゃん!?」

「クァウ」

「クォウ」

うわー、私だって大きくなったはずなのに、それ以上に大きくなってる。全長二メイルのカムイより少し大きいぐらいか。そうか、ここはノワール狼の縄張りなんだな。

てことはあの大きな狼が母上の召喚獣『ロボ』か。まさに狼王だな。時に召喚される魔物なのに普段はこうして暮らしてるってのも変な感じだが、これが普通なんだろうな。面白いものだ。

よし、せっかくの出会いだ。さっきゲットした獲物を大放出しようかな。コーちゃんも食べたいだろうし。特にここらでは海の魔物は珍しいだろう。さあ、みんなで食べていいんだよ。

うん?

どーんと置いたのに誰も食いつかない。いや、コーちゃんはもう食べ始めてるけど。

「ガウガウ」

カムイの一言でロボが獲物を一口食べた。そして軽くカムイに頭を下げてから……

「グオォォォオオオーーーーン!」

吠えた。大声で。すると他の狼達は一斉に獲物に食らいついた。

なるほど。カムイの許可、次にボスの許可が必要だったのか。私にも感謝しろよな。

それにしてもやはりカムイは偉いんだな。ノワールフォレストの森ではアンタッチャブルな存在だって聞くし。

「もう、カースったら。びっくりしたじゃない。」

「僕もだよ。あんな大きい狼なんか見覚えなかったからね。僕が子供の時はあの仔達も子供だったし。」

「それにしてもカースもカースだけど、お義母様もお義母様よね。これだけの数のノワール狼を従えてるなんて……」

「一人一匹の召喚獣ルールなんて母上には関係ないんだね。」

「以前王都で読んだ本には勇者の召喚獣は三匹いたって書いてあったわ。やっぱり勇者も特別なのかしら?」

「何それ、初耳だよ。狐以外にいたの?」

「その本『召喚獣に見る勇者ムラサキの魔力傾向』によると、九尾の狐タマモと白銀の隼ファルコ、それから白金ペンギンのギンコですって。」

「へぇー。そんなことになってるんだね、ペンギンが初耳だったよ。きっと勇者の仲間の誰かの召喚獣なんだろうね。それが勇者のってことになってると見たよ。」

「そうなの? もしかしてエルフの村長から聞いたの?」

「そうなんだよ。勇者も仲間達とあの村に行ったらしくてさ。色々と聞いたよ。」

「私も聞いていればよかったわ。子供達の相手も楽しかったけど。」

「アレクは大人気だったもんね。やっぱり子供にはいい人かどうか分かるんだろうね。」

ん? その理論でいくと……私に近寄る子供はいなかったな……いや、きっと偶然だ。村長と話していたんだからな。きっとそうだ。

アレクと楽しくお喋りをしていたら、数百匹はいた魔物や魚が全て食べ尽くされていた。骨すらも……凄いな。しかも律儀に魔石だけは私の所に持ち寄ってくれる始末。かわいい奴らだな、よぉ〜しよしよし。うっ、臭い。野生だから仕方ないか。全員まとめて『洗浄』

野生動物には余計なことだけどね。いや、野生魔物? 魔物は全て野生に決まってるか。それに化学薬品なんかを使ったわけじゃないから問題なかろう。

よーし、じゃあ今度こそ帰ろうか。クロちゃんネロちゃんまたね。ボスもまたな。母上によろしく伝えておいてやろうな。

「グオオォウ」

野太い声だな。さすがボス。

「ガウガウ」

うおっ、カムイの一声でボス以外全ての狼が伏せをしたぞ。私までいい気分になるじゃないか。お土産を持ってまた来よう。

いやいや、忘れてはいけない。帰る前にマギトレントを伐採しなくては。どっちだろう。山岳地帯もこの森も広すぎるんだよな……

あっ、食べてみようと思っていたショウブルまであげてしまった……あんな魔物は珍しいってのに……

結局あちこちウロウロしてしまい楽園に帰ったのは夕方になってからだった。マギトレントの群生地を見つけるのと、ミスリルギロチンが使えないせいで時間がかかってしまったんだよな。仕方がないから『水鋸』の魔法で地道に切り倒したのだ。ミスリルボードも作り直さないとな。鉄ボードでも不自由はないが、やはりミスリルでないと速度も落ちる気がするし無駄な魔力を消費してしまうもんな。

そして楽園の私の屋敷。そこでマリーからの手紙を読んだのだが、驚くべき内容が書いてあった。