軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

104、剣鬼フェルナンドと勇者ムラサキ

改めてマリーの実家へ到着。

「ただいま帰りました。」

おや? 数名の来客があるようだ。

「貴様が! ボニィを!」

「おのれ! うちのギャビィをよくも!」

「人間のくせに!」

そこにはマリーママ以外に三人ほどエルフの女性がいた。私に文句を言っても意味がないだろうに。自分達の子供がやらかしたことに対する謝罪はないのか?

「文句あんのか? あるならかかってこい。テメーらのガキのせいで何万人死んだと思ってんだ?」

『葉斬』

『葉斬』

『葉斬』

さすがエルフ。問答無用で魔法を使ってきやがった。人ん家の中なのに。まあ効かないけど。ではこちらも。

『風弾』

『水弾』

『拘禁束縛』

ちょちょいっと母上に習っておいたのさ。それなりのダメージを与えてから使うと……ふふ、動けないだろう。体だけでなく魔力すら使えなくする魔法だからな。さてと……

「こいつら僕達を殺そうとしましたよね? 間違いないですよね?」

「ええ……そうね……」

「さーてお前ら。親切にもわざわざ遺体を届けた俺にケンカ売ってんだよな? では死ね。」

「待って!」

マリーママだ。そりゃ止めるよな。

「何ですか? いくらマルさんの頼みでも……」

「違うわよ。ここで殺されると困るわ。誰が掃除すると思ってるのよ。」

掃除なら私の得意分野だが、確かにマリーママの言う通りだ。

「そうですね。外に行きます。」

「イグドラシルの根元がいいわ……死んだエルフは皆あの木に帰るの……」

「なるほど、分かりました。移動します。」

エルフママ三人を鉄ボードに乗せてイグドラシルまで。市中曳き回しの上、磔、獄門かよ。

私達、そしてマリーママもイグドラシルまで歩く。時々村民とすれ違うが、文句を言ってくる者はいない。この三人が嫌われてるのか、それとも道理をわきまえているのか。

イグドラシルに到着したら村長がいた。さてはマリーママめ『 伝言(つてごと) 』を使ったな?

「待っておったぞ。坊ちゃんよ、お主に手を汚す覚悟があるならそやつらの命を奪うがいい。」

手を汚すだと?

無辜の民を手にかければ汚れもしようが、自分の命を狙った相手を殺して汚れるはずがない。何言ってんだ?

『拘禁束縛』解除。

「一言謝れば許してやるが?」

「うるさい! 死ね!」『 爆裂球(ばくれつだま) 』

「人間風情が!」『 豪炎斬(ごうえんざん) 』

「テーゲンの仇!」『 魔裂破(まれっぱ) 』

派手な魔法だがもちろん私には効かない。自動防御サイコー。そして『白弾』

この三人の頭をまとめて貫いた。自在反射を使ったのかも知れないが、それごとブチ抜く威力だ。

地面に崩れ落ちるママ三人。

そこで妙なことが起こった。今死んだ三人が大地に飲み込まれていったのだ。これは一体……

「さて、坊ちゃんよ。事の顛末は先ほどの書状に書いてある。これが儂らからの詫びの気持ちだ。王国を訪れる気はないがな。」

「村長……」

どこまで事態をコントロールしてんだ? わざと暴走させて私に殺させたとでも言うのか? さすがエルフ、怖い方達だ。

「儂らとてエルフの面汚しを苦々しく思う気持ちはある。死んだ人間を悼む気持ちもな。確かに儂らは人間を虫のような存在だと認識しておるが、だからとて徒らに弄んでよいはずがない。」

これはアレか。人間が動物愛護を謳う気持ちに近いのか? 釈然としないな。

「まあ、僕は書状を届けるだけですから気にしませんけどね。それにしたって大恩あるエルフの方を殺したくはありませんでしたよ。」

まあ手加減する気もなかったけど。謝ったら許したのに。

「ふふ、お主達のようにこの村まで来れる強者は歓迎する。それだけのことよ。」

「はあ、どうも。」

「さあ! 宴だ! 死んだ五名の鎮魂と賓客の歓迎だ!」

いきなりかよ。さっきから展開が目まぐるしいぞ。

おっ、エルフさん達がゾロゾロと現れたな。歓迎されてるのなら悪い気分じゃない。楽しもう。

「ほれ、坊ちゃん飲めるか?」

「お酒ですか? いただきます。」

「ピュイピュイ!」

「精霊様もどうぞ。」

酒と言えばコーちゃん。今日はお薬はないよー。「ピュイー」

「私は遠慮しておきますわ。まだ子供ですから。」

お、アレクは偉い。私も成長が気になるからなるべく飲まないようにしようとは思うのだが、昨夜つい飲んでしまった酒が旨かったんだよな。この酒はどうかな?

「乾ぱーい!」

あちこちで盃が交わされる。そして旨い!

エルフは酒造りも上手なのか。これはウイスキーに近いな。しっかり寝かせたシングルモルトって雰囲気だ。最高!

「かなり美味しいお酒ですね! なんて名前ですか?」

「ほう、坊ちゃんは酒の味が分かるか。」

「分かりませんよ。今日が人生二回目の飲酒ですから。でも美味しいですね。」

「そうかそうか。これはな『ブッシュミルトン』と言う。原酒を寝かせ、日々少しずつ魔力を注ぎ熟成させていくのよ。これはだいだい十二年だな。」

「毎日ですか!?」

この世界では酒造りにも魔法を使うって話だったもんな。魔力を注ぐのか……

「そうだ。毎日よ。多くても少なくてもいかん、繊細な作業よ。それだけに味の決め手となるものなのだ。」

「いくつかエルフの村があると聞きましたけど、他の村でも酒を作ってたりするんですか?」

「ああ、全ての村と言うわけではないがな。他に二つほど酒を作っておる村がある。歩けば軽く一年はかかるほど離れておるがな。」

「山岳地帯ってかなり広いですもんね。ダークエルフの村にはどうやって行ったらいいですか? 方角とか。」

「ああ、あの村はな……ふーむ。坊ちゃんよ、来月来ると言っておったな? ならばその時にアーダルプレヒトを乗せて行け。あ奴も用があるからちょうどよい。」

「それは助かりますね。古い言葉でウィンウィーンって言うんでしたね。」

「ふふ、これはまた懐かしい言葉を知っておるものよ。」

今夜は村長がやけに話してくれるな。前回とは全然違う。

コーちゃんにはエルフの皆さんが競うようにして酌をしてるし、カムイの周りにも集まっている。カムイは酒は飲まないけど。

アレクの周りには子供達が集まっている。見た目は歳下だけど、実際にはどうなんだろう?

よし、聞いてみよう。

「村長、あの子達って何歳ぐらいなんですか?」

「ん? あぁ、十歳前後だな。エルフの歳のとり方はの、若いうちは人間と然程変わらぬ。変わるのは二十歳を過ぎてからだな。」

「へぇ、そうなんですか。ちなみに村長は何歳なんですか?」

やっと聞けるな。この村長、見た目は六十ってとこだが……

「儂か。儂は来年六百五十になるぞ。記念の宴を開くことになっている。よかったらお主も来るがいい。」

「は……はあ。ぜひ……」

なんて微妙な数字なんだよ。中途半端か!? せめて千は超えてくれよな。これではあるあるにならないだろ。

「どうした? 何かおかしいか?」

「い、いえ。マリーが二百を超えてるって聞きましたので、すごいなぁーと思いまして。」

「ふふ、今宵は気分が良いから話してやろう。儂はすでにエルフではない。イグドラシルの試練を乗り越えたエルフはの、ハイエルフとして新たな生を授かるのだ。通常エルフの寿命は五百年ほどだが、ハイエルフの寿命は千年をゆうに超える。フェルナンドだったか? あの者がもし、イグドラシルの試練を乗り越えたらどのような存在になるのであろうな?」

なんだそれ?

意味が分からん。でもエルフがいるならハイエルフもいるのがファンタジーあるあるだよな? この村長って想像以上にヤバい存在だったりするのか?

「ハイヒューマンとかになるんですかね。でもフェルナンド先生はもうすでに人外だからあまり変わらないようにも思えますね。」

「はっはっは! 確かにの! あの御仁は 人間(ひと) ではないの。剣の腕など勇者を凌駕しておるしの。」

なに!?

「その話詳しく! 勇者ムラサキの剣の腕ってどうだったんですか!?」

「ふむ、聞きたいか。ならば話してやろう。あれは何年前のことだったか……」

勇者の話を生で聞けるとは!

やはりエルフの村に来てよかった!