軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

102、イグドラシルの秘密

ならばスピードアップ!

気圧を考慮してゆっくり登っていたが、気にせず上昇してやる!

「ピュイピュイ」

え? 変化ない? どうしたこと?

「ピュイピュイ」

え? 帰った方がいい? それも真下に?

うーん、分かったよ。コーちゃんの忠告だもんね。

「アレク、帰るよ。どうやら無理みたい。」

「ええ。不思議なこともあるものね。登って登っても進んでないなんて。」

帰りはすぐだった。

そこに待っていたのはアーさん。寡黙な男だと思ったら少しニヤッとしている。

「どうだ? 天辺は見えたか?」

「途中から登れなくなりましたよ。どうなってるんですか?」

「ふっ、イグドラシルは神木、つまりここは神域だ。天辺に行きたければ己の身一つで登る他ない。」

神域だから身一つって意味が分からんが。

「魔法なしで登れってことですか?」

「そうだ。その装備も解除してエルフの聖衣のみを纏い登るのだ。やりたければ貸してやるぞ?」

「いえ、遠慮しておきます。」

これだけの大木を登れるわけないだろ。ロッククライミングより難しそうだ。百メイルだって登れる気がしない。

「ふっ、半年前に登った人間がいたがな。まだ降りてきておらん。とっくに死んでるやも知れんな。」

私達以外にここに来た人間がいるのか。酔狂な奴もいるもんだ。

「どんな人ですか?」

「人間の名など覚えておらん。村長なら覚えているかもな。かなり歓迎していたからな。」

へー。村長に歓迎されるレベルか。私は歓迎されてるんだろうか? 後で聞いてみよう。

「あ、そうだ。マリーの実家に寄りたいんですが、いいですか?」

「ああ、こっちだ。」

結局前回私はロクに話してないんだよな。顔ぐらいは見た気がするが。

それほど広くもない村なので、五分も歩けば到着だ。

「ここだ。私は帰る。後は好きにしろ。」

「どうも、ありがとうございました。僕らもすぐ帰ると思います。」

当然だが、表札など出されてはいない。

ノックしてもしもし。

「こんにちは。どなたかいらっしゃいますか?」

「はい? あ……あなたは確かマルガレータの……」

おっ、マリーのお母さん。私の顔を覚えててくれたのか。しっかし……若いな……何歳なんだよ。聞けないけど。

「カース・ド・マーティンと申します。」

「アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドルと申します。」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

「精霊様に狼殿まで、よくいらっしゃいました。どうぞ……」

応接間、と呼ぶには狭く質素な部屋に通された。でもソファーの座り心地はいい。

「遠いところをようこそ……マリーの母親、マルレッティーナベルタです。お好きにお呼びください……」

うーん、マリーママか、マルさんだな。

「ええ。では早速ですが、これをマリーから預かって参りました。もし返事を書かれるなら預かります。」

「そう……ありがとう……」

五分ほどの沈黙。私達はその間、出された飲み物をゆっくりと味わっていた。優しい甘さだ。木の実のジュースかな。

やがてマリーママが口を開く。

「そんなに酷いことが起こったのね……それなのにあなたも人間も、この村に報復をしない……」

「そりゃあしませんよ。国王の考えは知りませんけど、僕はお世話になったんですから。それにこの村と王都で暴れたエルフは関係ないでしょう?」

「関係ないとは言い切れない。そして、あなたは何も悪くない……それなのにあの子の心を汲もうとして……呪いを受け入れた……」

「マリーにも何回助けられたか分かりませんからね。そんな彼女に恨まれるのはキツいんです。」

マリーは手紙に何を書いたんだろう。

「そう……私の知る限り、この村を出奔したのは四人だけ。最初の一人はマルガレータ……後の三人は、あの子の影響で出奔したのかも知れない……それでもマルガレータとの関係は変わらない?」

「変わりませんね。さすがにマリーの責任ではないですからね。」

それはこじつけだよな。マリーが悪いはずがない。

「そう……ところで、ここにはいつまで滞在するの?」

「村長から書状を受け取ったら出発します。長居はしませんよ。以前のお礼を言いに来ただけですから。」

「よかったらウチに泊まっていかない? 夕方にはうちの人も帰ってくるし……マルガレータに手紙も書きたいし……」

あぁ、それは届けてあげるべきだな。私はアレクと目で相談し返答する。

「では一泊だけお世話になりますね。先に村長の家に行ってきます。」

「ええ、待ってるわ……」

マリーの実家を出て村長宅へ向かう。さっきは手紙だけでお土産を渡してなかったしな。

「ねぇカース。エルフの皆さんって私達とあまり変わらないのね。違うのは、せいぜい耳ぐらいかしら。」

「そうだよね。僕も前回見てびっくりしたよ。王都で暴れた三人はローブで顔ごと隠してたけど、マリーみたいに耳が無かったら気付かないよね。」

「本当ね。もしかしたら他の村からも王国に来ているエルフさんがいるのかしら。」

「いるかも知れないね。あ、ダークエルフの村があるらしいから行ってみようよ。金属細工が凄いんだって。」

「ダークエルフ? そんな方達もいるのね。それに山岳地帯ってノワールフォレストの森より広いのよね。広すぎて怖くなるわ。」

そもそもノワールフォレストの森だけでローランド王国より広いんだからな。頭がおかしくなりそうだよ。

さて、村長宅に到着。手紙を受け取ったらダークエルフの村へ行く方法でも聞いてみよう。