軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

92、フランティア領都にて

父上とベレンガリアさんをクタナツの南の城門付近で降ろして、私達は領都へ向かう。

「やっぱりカース君ってめちゃくちゃね。王都からクタナツまで一時間って。四年前の春、クタナツから王都まで行くのに一ヶ月近くかかったのよ?」

「今思えばあの時王都まで送ってあげてもよかったんだよね。でも少し自信がなかったんだ。」

「少し……ね。ホント昔からぶっ飛んでたのよね。文字通り。」

さすがサンドラちゃん。うまいこと言うな。

「それはともかく領都ではうちに好きに泊まっていいからね。メイドはいたりいなかったりだから食事はサンドラちゃんにお任せになるけど。」

「ええ、ありがとう。話には聞いてるけど豪邸らしいわね。もうすっかり大貴族オヤジになったわね。」

「褒め言葉と受け取っておくよ。セルジュ君やスティード君も自由に泊まらせればいいよ。」

「ねぇカース。せっかくだから今日か明日ぐらいは五人で過ごしましょうよ。スティード君達の都合次第だけど。」

さすがアレク。いいアイデアだな。五人が集まるのは二年前の夏以来か。

「ピュイピュイ」

おっと、コーちゃんを入れて六人だね。

「それいいね。そうしよう。じゃあアレクとサンドラちゃんで二人を呼びに行ってよ。僕はマイコレイジ商会に用があるから。」

「ええ、いいわよ。サンドラちゃんと領都を歩くのも楽しそうだわ。」

「女二人ってのも面白そうね。よろしくね、アレックスちゃん。」

こんな話をしてたらもう到着。一体どれだけスピード出したんだろ?

北の城門では、いつもの事務的な騎士さんにも挨拶をしてと。ここから別行動だ。

「じゃあアレク、サンドラちゃん。また後でね。帰ったらお昼にしようよ。」

「ええ。セルジュ君の驚く顔が楽しみだわ。」

「カース君の豪邸を楽しみにしてるわね。」

ちなみにコーちゃんは私と一緒だ。

しばらく歩いてマイコレイジ商会へ到着。

「こんにちは。マーティンです。会長か番頭さんはいらっしゃいますか?」

「はい! お待ちくださいませ!」

おお、新人さんかな? キビキビしていて気持ちがいいな。

「お待たせいたしました! こちらへどうぞ!」

三十秒も待ってない。

案内されたのは会長室か。

「マーティン様。ようこそお越しくださいました。お待ち申しておりました。」

「遅くなってしまってごめんなさい。実は王都で……」

簡単に王都での出来事を説明しておく。まだ領都では知られてないだろうからな。

「それは……そのような大事件が……」

「あ、それからこれは会長にお土産です。似合うかと思いまして。」

「まあ! このような物を。ありがとうございます。まあ! 一流店と名高いクロスキームのスカーフですか。マーティン様はセンスまでよろしいのですね。」

「店員さんに会長のイメージを伝えて見繕ってもらっただけですよ。それで、何か分かりましたか?」

約束から一週間も遅れたんだからお土産ぐらい渡さないとな。それにしても王都はあれだけ荒らされたのに服屋や問屋は意外に無事って。狂信者の考えることは分からないな。

「ええ。モーガン様によりますと浄化槽のスライムが変質した可能性があるそうです。ただ、魔境では珍しくないそうですが浄化槽内のスライムが変質したのは例がないそうです。しかし結果から考察するに、それしか考えられないと。」

「へぇー、そんなことがあるものなんですね。変質の原因については何か言われてましたか?」

「いえ。ただ……『あの小僧の魔力を考えたら何が起こってもおかしくない』と……」

ん? それってまさか、セプティクさんと楽園に浄化槽を設置に行った時のあれか? 私が軽く魔力を通したから? あれで中のスライムが変質してしまったのか? それにしてはタイミングが遅いし、死んでないのもおかしい。やはり分からん。

「ちなみに、浄化槽スライムは餌なしでどれぐらい生きていられるものですか?」

「およそ半年、長くても一年ですね。あっ、モーガン様はこうもおっしゃってました! 『案外アンデッドにでもなっておったのかも知れんぞ?』と。」

アンデッド? スライムが? スライムゾンビ? 何だそれ? しかし何かが引っかかる。虫歯ドラゴンもゾンビになった……あいつと今回のスライムに共通することは……私の魔力!?

あの虫歯ドラゴンは私の魔力入りの餌をたっぷり食べた……そして恐らくは寿命で死んだ。スライムは私が魔力を少しだけ与えた。そして餓死……これか!

「会長、分かりました。たぶんモーガン様が正解です。スライムがアンデッド化したんだと思います。よって今回新しく浄化槽を設置すれば解決です。ありがとうございました。」

「え、そ、そうなのですか? ま、まあマーティン様がそうおっしゃるのであれば……それでは、いつ設置するのがよろしいですか?」

「明後日の朝、領都を出発でいかがでしょうか?」

「ええ、大丈夫です。それからこれは無理なら無理で構わないのですが……私も同行することは可能でしょうか?」

「会長がですか? それはもちろん可能ですが。」

「では図々しくも、よろしくお願いします。では明後日の開門時に北の城門にてお待ちしております。」

「大丈夫です。よろしくお願いします。」

楽園に着いたらゾンビ化の実験でもしてみるかな。魔物の死体だって放っておけばゾンビになるのは当然なのだが。そこに私の魔力が加わると一体どうなるのか、興味深いもんな。

ちなみにトイレの仕組みとしてスライムの逆流が不可能な理由は浄化槽スライムに効く結界魔法が掛けてあるからだ。上から排泄物は流れ落ちるがスライムは浄化槽から脱出できない。だからこそ、そこから脱出したってことはスライムが変質したと考えるのが自然なのだろう。しかも魔法学校の制服をたちまち溶かすほどに強力なスライムとなればアンデッドである可能性が高くなるってわけか。さすがはモーガン様、年の功だな。

ちなみに排水管やトイレ周りには『防汚』の魔法がかけてあるためいつも清潔だし、詰まることもない。魔法ってすごい。

まあ何にしてもこれで安心して楽園で過ごすことができる。ひと安心だな。さーて帰って昼ご飯だな。マーリンがいるといいのだが。