軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

82、論功行賞

さて、そろそろ王城の門に到着する。面倒だが私が先触れに行っておくか。

そして門の前で待つこと五分。母上達を乗せた馬車が見えてきた。アステロイドさん達は徒歩でその周りを取り囲んでいる。なんて頼もしい。

正門をフリーパス。門番さんの駆け足にベレンガリアさんが馬車を追従させる。

馬車が止まったのは、いつか来た場所。王宮内へと続く入口だ。周囲には騎士が勢ぞろいしている。緊張するな。

それなのに母上は平然と父上の手を取り馬車から降りてきた。女王かよ。

「高名なる聖女イザベル様に拝謁でき恐悦至極。第二騎士団副長キャトラス・コミャーマと申す。謁見の間までご案内仕ります。」

「ご苦労様。頼みますわ。」

久々に見るな、母上の上級貴族モード。私達はその後ろをゾロゾロと歩いて付いていく。ここからが長いんだよな。ここでもアステロイドさん達は母上の周りを固めている。さすがだ。反面父上は気楽な顔をしている。さっきまでの意気消沈ぶりはどうした。さすがだよな。

兄上は慣れたものだろうし、姉上もそうだよな。オディ兄はさすがに緊張を隠せないか。マリーは見た感じ平然としている。逆にキアラはテンション上がりまくりかよ。周りをキョロキョロと見回しては目を輝かせている。かわいい奴め。

ちなみにサンドラちゃんは途中で見つけたメイドさんに声をかけて書庫へと向かっていった。

ようやく着いた。そのまま扉が開かれ中に通される。広い部屋の両サイドには重臣ぽいのから近衛騎士っぽいのまでずらりと並んでいる。いつものパターンだ。母上に向けられる眼差しは好奇五割に憧憬三割。そして敵意が二割ってところだろうか。

「国王陛下の御成りである! 一同控えよ!」

広間中の人間が一斉に臣下の礼をとる。

そして現れる国王。今日は進行がスムーズだな。

「皆の者、面を上げよ。」

国王、少し痩せた気もするが、まあ元気だろう。

「本日集まってもらったのは他でもない。王都防衛の功労者たる勇士達を讃えるためだ。カース・ド・マーティン、こちらへ。」

いきなり私かよ。しかも国王自らご指名とは。

「はっ!」

「カース・ド・マーティン。そなたの功績は絶大である。ここに逐一記入してあるが、読むまでもない。よって『勲一等 紫金剛(しこんごう) 褒章』を授ける。そなたの忠誠と功労を余は生涯忘れぬであろう。」

「謹んで拝領すると共に今後も鎮護国家の礎となるべく精進して参ります。」

このセリフは母上から教わっていた。こういった式典でのセリフは短いのが定番らしい。助かった。

「キアラ・ド・マーティン。こちらへ。」

「はいっ!」

おっ、次はキアラか。海から押し寄せる魔物相手に見事王都を守り抜いたもんな。鼻が高いぞ。

「キアラ・ド・マーティン。そなたは無数に押し寄せる魔物から国家の要衝たるポルトホーン港を守り抜いた。兄カースに次ぐ大功である。よって『勲一等 緋翠玉(ひすいぎょく) 褒章』を授ける。その歳で素晴らしい魔力だ。今後も期待しているぞ。」

「つつしんで、はいりょうすると、ともに! ちんごこっかの、いしずえと! しょうじんします!」

偉い! よくやったキアラ! すごいぞキアラ! よく覚えられたな! 母上を敵意の視線で見つめていた者ですらニッコリしているぞ!

国王自ら呼び出したのはここまでだった。これ以降は側近が名を呼び様々な勲章を国王が渡していた。

ところでこの勲章、年金は付くのだろうか?

「さて皆の者。此度の反乱とでも呼べばよいのか判断に困る事件。失ったものは多く、取り返しがつかないものも多い。しかし我らはこうして生きている。我らが勝ったのだ! 十六名の救国の勇士を讃えよ! ローランド王国万歳!」

「万歳!」

「万歳!」

「万歳!」

「万歳!」

…………

…………

側近や重臣には泣いている者もいた。こんな下らない事件で身内を亡くしたら……やりきれないよな。

やがて怒号のような万歳コールは鎮まり、再び国王が口を開く。

「さあ今からは祝勝会だ! 飲め! 歌え! 踊れ!」

すると広間に続々と料理や飲み物が運び入れられるではないか。別室ではなくこの場でやるのか。ここって謁見の間だろ? 大胆なことをするもんだな。

無礼講スタイルで祝勝会が始まった。人数もいつの間か増えている。よく見れば王妃も姿を現している。挨拶に行かなければ。

「王妃様! ご無事で何よりです!」

「カースちゃんにアレックスちゃん。この度は本当にありがとうね。カースちゃんは魔王なんて呼ばれているけど、本当は勇者だったのね。コーちゃんもよく来てくれたわね。」

王妃……痩せてやがる……一日一食だったらしいもんな。王族なのに……

「王国民として当然のことです。それより王妃様がご無事で何より嬉しいです。」

「私もカースと同じ意見です。それこそが私達貴族の務めかと存じます。」

「ピュイピュイ」

「本当にありがとう。私もカースちゃん達が無事で嬉しいわ。」

王妃なのに、みんなが見ているのに構わず私とアレクを抱きしめた。暖かいな。やっぱこのおばさん好きだわぁ。本当に無事でよかった。

「王妃殿下。長らくご無沙汰を致しております。イザベルでございます。」

おっ、母上もやって来た。父上も一緒だ。

「まあ! イザベルちゃんにアランちゃん! 懐かしいわぁ!」

「お久しぶりでございます。アランにございます。」

父上が珍しく神妙な顔をしているな。ちなみにここでもアステロイドさん達は母上の後ろに付き従っている。

「あなたの子はみんなすごいわね。アランちゃんと結婚したのは正解だったようね。」

「もちろんですわ。」

「恐悦至極に存じます。」

うーむ、難しい話が始まりそうだな。よし、私達は離脱しよ。食事に突撃しよう。

「アレク、たくさん食べようね!」

「ええ。美味しそうだものね!」

「ピュイピュイ!」

分かってるよ。コーちゃんはお酒だよね。好きなだけ飲んでいいんだよ。

おっ、キアラも食べ物を口いっぱいに頬張ってモキュモキュ動かしているな。リスかよ。かわいいなぁもう。その周りを重臣達の子供らしき奴らが近付きたそうにしている。キアラは優しい子だからな、気にせず話しかけるといい。

「カース。この度は見事だった。すごい男だ。」

「フランツウッド王子。ご無事で何よりです。」

王太子の長男がブランチウッド、目の前の二男がフランツウッドだったな。うーん、ややこしい。

「フランツウッド王子のご無事をお喜び申し上げます。」

「ピュイピュイ」

アレクもコーちゃんも挨拶をしている。

「私は外出を禁じられていたのでな。無傷なのも当然というものだ。兄上は勇敢にもそなた達を呼びに城下へ出たというのに。」

あれ? この王子ってこんな話し方だったっけ? きっとこっちが本性かな。アレクを目の前にしても顔色を変えてないし。

「そうでしたか。危険な猛毒が蔓延しておりましたので、それもやむを得ないことかと。」

「何はともあれ、カース達のおかげで陛下のお命だけでなく王都も救われた。感謝をしてもしきれない。ありがとう。」

「できることをやっただけです。それもこれも母上や皆さんが一丸となって事に当たったからだと思います。」

本当にそう思う。母上達がいなかったらゼマティス家は壊滅させられていたかも知れない。

「王子。横から失礼いたします。私もカース君にお礼を申し上げたく。」

「おおマルセルか、久しいな。そなたも無事で何よりだ。」

アジャーニ家のマルセル。知ってる人間が無事なのは嬉しいものだ。

それからアレクとコーちゃんも交えて飲み食いしながら立ち話。楽しいひと時だ。やはり平和って素晴らしいことだよな。