軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

75、王宮とギルド

カースが疲れ果て、ゼマティス家へ帰っていった頃、王宮では。

「結局幹部どもは全員死亡か……」

「はっ、申し訳ございません」

近衛騎士団による執拗な捜索により、ついに生き残った幹部を発見するに至った。しかし、近衛騎士を目の前にした教団幹部は何を考えたのか突然笛を吹き始めた。『呪いの魔笛』など縁のない近衛騎士達である。気付くのが数秒遅れ、音色を止めるには至らなかった。直接笛を吹いていた幹部はその場で殺され、生き残っていた幹部も毒を塗ったナイフで襲ってきたため殺された。いかな近衛騎士とて、かすっただけで死ぬ猛毒を前には冷静に戦えるはずもない。今までの人生ではいくら毒をくらおうとも負けることなどなかったのだから。

その結果、残党である幹部五人を殺してしまう結果となった。その中には自らのナイフのかすり傷で死んだ者も含まれる。

「仕方あるまい。現状できる最善を尽くせ。総代教主とやらは生き残っているらしいが、とても近づけまい。」

「御意。失礼いたします」

近衛騎士が退出し、室内には国王と側近、そして宰相が残っている。

「それで宰相よ。お前はカースが王座を望むと困るか?」

「ご冗談を。あの者に野心がないことなど存じております。」

「ふっ、そうよな。野心どころか忠誠心もないがな。その割によく助けてくれるものよ。」

「宮廷魔導士からの報告によるとカース殿本人のみならず妹御も恐るべき魔力の持ち主のようです。サウジアス海を一面に渡り凍りつかせて王都を守り抜いたと。」

「それができる宮廷魔導士はいるか?」

「おりませんな。技量の問題ではありません。魔力量の問題です。」

「で、あろうな。カースがだめなら妹か。王家に欲しいものよ。」

「御意。あの魔女も東からの魔物を見事防いでくれました。マーティン家に恩賞が必要でしょうな。好色騎士アランも王都に舞い戻っているそうですし。」

「くっくっく、アランか。あの者がいなければクレナウッドとイザベルは結婚しておったやも知れんな。しかしそうするとカースは生まれず……本日、王都は壊滅しておったやも知れぬ。運命とは面白いものよ。」

「御意。当時から陛下の寛大さと先見の明には畏れ入るばかりです。」

「そう煽てるな。たまたまだ。クレナウッドとアラン、魔女を賭けて決闘させてもよかったのだがな。勝ち目が読めん上に、万が一にもフェルナンドやアッカーマンを敵に回すわけにはいかんからな。その点お前は孫娘をダイナストに嫁がせおって。うまくやったものよ。」

「恐縮でございます。ただの偶然ではございますが。それにしましても当時のご英断。さすがでございます。陛下のご慧眼がある限り、ローランド王国は安泰でしょう。」

「そうだとよいのだがな……」

たっぷりと間をとって、国王はつぶやいた。

それから事後対応の協議が始まった。被害は甚大。人員的にも財産的にもだ。どこから手を付けるべきか、頭が痛いことである。

明けて翌朝。結界魔法陣も解除されて、差し当たっての急務は死体の処理となった。季節は真夏。放っておけばすぐに腐るしアンデッドにもなる。未だ東西南北の魔物を警戒している宮廷魔導士は動けないため、近衛騎士団と生き残った王国騎士団が事に当たっている。広い王都に少ない人数、地獄の作業である。

そんな中、アステロイドとオディロンは王都のギルド、いやギルド跡に立ち寄っていた。

「知ってるかオディロン。こんな状態を『強者どもが 夢の痕』って言うらしいぜ?」

「初耳です。でもカースが好きそうな古い言葉ですね。」

焼け落ちた建物の隣にはテーブルと数人の職員、そして王都の冒険者達がいた。

「邪魔するぜ。俺はクタナツの五等星、アステロイドってモンだ。ちっと挨拶が遅れちまったがこんな時だ。できることがあったら言ってくれ。」

「同じくクタナツの七等星オディロン。いつまで王都に滞在するかは分かりませんが、力になりたいと思っています。」

「ご丁寧にありがとうございます。私、職員のベリンダ・マッケンロードと申します。もしや『アステロイドクラッシャー』の?」

「ほう、王都にまで知られてんのか? 光栄だ。いかにもそのアステロイドだ。」

「残念ながら知られてませんよ。私が個人的にクタナツのファンなんです。」

「くくっ、そりゃそうか。まあいい、何かあるか?」

「狂信者狩りなんていかがですか? 一人につき銀貨一枚、幹部なら金貨十枚。教団騎士なら金貨十五枚から三十枚です。死なせてしまったら半額ですが。」

「それはいいが、生き残りなんているのか?」

「分かりません。それを踏まえてこの値段なのです。」

「ふーむ、オディロンどう思う? 割はいいが王都に疎い俺らにはちょいと難しいな。」

「そうですね。逆に地元民が行かないような所に偶然立ち寄ることならあるかも知れませんね。」

「まあやってみるか。昼までだがな。」

「はい。では受注ということで。死体でもきっちり引き渡してくださいね。」

「ああ、分かった。」

職員の前を離れようとするアステロイド達にゾロゾロと数人ほどが近付いてきた。

「よお兄さん。クタナツの五等星だって? ちょいと聞きてーことがあんだけどよ?」

「ん? どうした? 言うだけ言ってみろ。」

「なーに、大したことじゃねー。クタナツの五等星と王都の五等星、どっちが強えーのか知りたくてよ?」

アステロイドもオディロンも呆れたような表情になった。

「お前……さすがにこの状況で決闘なんぞやってらんねーぞ? 正気か?」

「いやークタナツ者は強えー強えーって聞くけどよ? あんなド田舎じゃー確かめよーがねーワケよ?」

「オッさんもいい歳だろー? 若者に教えてくれよー」

「強えーとこ見してみ?」

次の瞬間、彼ら一団は悲鳴をあげて地べたに倒れこんだ。全員の左膝が砕けたようだ。オディロンの圧縮魔法だろう。

「君らがアステロイドさんに対等な口を利くのは八年ほど早いと思うよ。僕は名も無き七等星だけどね。」

「ねーちゃんよ。まさかこの中に五等星はいねーよな?」

「実は一人……」

「そうかよ。頭も実力も足りねーようだが、まあ気張れや。」

「クタナツ者と揉める時は気をつけるといいよ。お大事に。」

ぐうの音も出ない彼らだった。