軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

245、帰還 ソルサリエ

大変な道のりだった。

道中の私はお荷物以外の何物でもなかった……

何もできない。

座っているだけ。

魔力を振り絞って板を飛ばす姉上を、ただ見ているだけ。

襲ってくる魔物を迎撃するマリーを見ているだけ。

夜営の際も料理された食事を食べるだけ。

働けずに食う飯は……うまいんだが、ちょっと辛いな。

そんな幾多の苦難を経て、私達はようやくソルサリエまでたどり着いた。

姉上によると、ここに両親がいるらしい。植物の魔物に制圧されそうな街を奪回することをペナルティとして与えられたとか。母上なら楽勝だろ。

外から見るだけで草ぼうぼう。まさに草生える状態。ここに立ち寄るのは何年ぶりだろうか。前に来たのは蟻事件の時だったか。そう言えばあの時にキアラ用のプールを置いて帰ったんだったな。

なかなか堅牢な城壁を越えて中心部へ。街の中も草が生えまくっている。この状態をプラントバーストと名付けようか。確か普通のグリードグラス草原は焼き払っても二、三日すれば元通りになるぐらい草が生えるんだよな。石畳が敷いてあるのに、その僅かな隙間から元気に生えてやがる。

城壁だって組まれた岩の間をツタのような植物が這っているようだ。何という生命力。

騎士団詰所で聞いたところ、両親は現在は西側の城壁の外にいるらしい。およそ一ヶ月ぶりの再会か。

「母上!」

「母上!」

いた。城壁の外の土を掘り返して何か調べているようだ。

「カース! エリザベス!」

母上は駆け寄ってきて私と姉上を抱き締めた。

「よく生きて帰ってくれたわね。本当に、本当によかった……」

「母上……ただいま。」

「母上……おかげで生きてるわ……」

母上は泣きながら私達を抱き締め続ける。私まで泣けてくる。

そこに父上まで。

「カース、エリザベス、よく帰ってきた。本当によかった……」

母上ごと私達を抱き締める。

「母上……髪が……」

「いいのよエリ。髪なんてすぐ伸びるわ。」

「母上……ごめんなさい……私が弱かったばかりに……」

「いいのよ。強くなりなさい。」

それからその場で食事となった。

マリーと母上の料理。かなり長い間食べてなかったような懐かしさを感じる。

そしてマリーは両親へフェアウェル村での出来事を説明する。二人とも口々にマリーへの感謝を言っている。私と姉上も言わずにはおれない。全てマリーのおかげなんだ。

「それで、カースは魔力を感じなくなってしまったのね……」

私も自分の状況を隠しておくわけにはいかない。

「うん……まるで器ごとなくなったみたいで……」

「そうね……何も感じないわ……」

母上は私の額と臍に手を当ててそう言った。

「魔力ポーションの飲み過ぎでよくあるのは、そのまま依存症になってしまうことなのよね。ポーションのことしか考えられなくて一日中ポーションを飲み続けるケースね。」

「そうなんだ。それよりマシかな。」

「他には幻覚が見えたり、幻聴が聞こえたりとまともな精神状態でなくなることもあるわね。いずれにしてもその先に待つのは死あるのみね。」

「坊ちゃんは三十本近く飲んでおります。命が助かっただけでも奇跡かと。」

「そうね。完全に致死量を超えてるわ。よく生きていてくれたわ。ありがとうカース。」

「うん。助かってよかったよ。」

「カースはこのまま王都に連れて行こうと思うの。私が面倒を見るわ。」

姉上……泣けることを言ってくれるじゃないか……

「エリ……そうね。王都なら何か新しい治療法があるかも知れないし。父上だって力になってくれるわ。私達はとうぶん身動きが取れないから……」

「母上……カースのことは私に任せて。心配はいらないから。」

「王都には行くけど、なるべく早くクタナツに、フランティアに戻るつもりだよ。ずっと王都にいる気はないよ。」

だからって姉上の脛をかじるつもりはない。

「カース、アンタそれでどうするつもりなの……?」

「普通に暮らすよ。魔力がないなりにね。その前に王都で関所破りをしてしまったから戻らないとね……」

そうなのだ。やってしまったのだ。クタナツでの罪は母上に被せてしまったが、王都での罪は消えない……無視しておいてもいいが、おじいちゃんに出頭するって言ってしまったからな。もしおじいちゃんが罪に問われたりしたら大変だ。戻るしかない。

「そんなのきっとおじいちゃんが何とかしてくれるわよ!」

「そうかもね。まあ行けば分かるよ。」

「カース、エリもだが、お前達は好きに生きていいんだ。もっと気楽にダラダラ生きていいんだぞ?」

父上……言ってることは親らしくないが、温かい。関所破りの罪なんかバックれてしまえって言いたいんだよな。

「うん。前にも父上に言われた通り、好きに生きるよ。だから王都に行ってから帰ってくるね。」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

ちなみにカムイは首輪がなくても城壁の中へ入れた。ただの特例だ。クタナツでは無理だろうが、今のソルサリエなら両親のコネが使えたのだ。

ただ問題はクタナツにも領都にも連れて行けないことだ。首輪を付けたくないし、その金もない。いや、金はギルドへの相談次第か……どうしよう……

しばらく楽園には行けそうにないし、その間ずっと番をさせるのは可哀想すぎる。

楽園と言えばラグナだ。すっかり忘れてたけど、あれからずっとゼマティス家でメイドをやってるのかな? もう一人いたような気もするが……まあ真人間になっているならそれでいいか。人の心配なんかしている状況じゃないし。

それから今夜はソルサリエで一泊し、明日クタナツを目指すことになった。

その夜、私は母上の『経絡魔体循環』を受けたのだが……痛くも痒くもなかった。修行し直すこともできないのか……

母上によると、まるでそこら辺の石に魔力を流しているみたいに何の反応もないとか。

こんな時に使えるファンタジーあるあると言えば……

・自分、もしくは恋人のピンチで覚醒する。

・激しい怒りで眠っていた力が爆発する。

・限界を超えた修行で力を取り戻す。

・神や仙人みたいな存在から怪しい薬をもらう。

こんな所だろうか?

一体どうしたらいいんだ……