軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

239、マリー、エリザベス、そしてコーネリアス

村に戻ったマリーは早速蟠桃の実を絞ってみる。まずは半分だけを使用して。

それをほんの少し、一、二滴だけカースの口に含ませてみる。するとどうだろう。カースの喉が動いたではないか。これなら上手く行くのではないか、そんな希望が生まれた。

マリーは残り半個も絞って少しずつカースに飲ませていく。動く、やはりカースの喉が動いている。マリーの判断は正しかったのだ。

ちなみに果汁の絞りカスはカムイとコーネリアスが喜んで食べている。

やがて実一個分の蟠桃の果汁を全て飲みきったカース。ほんの少しだけ顔色がよくなった気がするのはマリーの勘違いではないはずだ。

残りの蟠桃は三個。それまでにカースは目覚めるのだろうか。マリーは一日一個ほど飲ませるつもりだが、それでも目覚めなかったら……再び行くしかない。怒れる魔猿が待ち受ける地獄の淵へ……

そのままカースは目覚めることなく二日が過ぎ、そして明日には最後の蟠桃を使わざるを得ない……そんな夜遅くのことだった。

ドムン、と何かがぶつかるような音がイグドラシルの方から聞こえてきた。

静かな夜でなければ聞き逃したかも知れない程度の音だった。

カースの世話で起きていたマリーは胸騒ぎを覚え、音がした方へと向かってみる。

すると、そこに横たわっていたのはエリザベスだった。

「お嬢様!? お嬢様! しっかりしてください!」

「おいおいマルガレータ。怪我でもしてるんじゃないか? 手当てしてやったらどうだ?」

「そうそう。人間はバカだからな。こんな夜に飛ぶからこうなるのさ」

「しかしこいつはツイてるんじゃないか? もしぶつからなかったらどこまで行ったんだろうな?」

このタイミングで村へ舞い戻ったエリザベス。果たしていいタイミングだったのか、そうでもなかったのか。

エリザベスは酷い怪我をしていた。イグドラシルにぶつかっただけではない、きっといくつもの魔物に襲われたのだろう。それでも方向を見失うことなく、フェアウェル村を目指して飛び続けたのだろう。

しかし普通の怪我ならいくら酷くてもマリーの手持ちのポーションと治癒魔法、回復魔法で治すことができる。

そして翌日の昼、エリザベスは目を覚ました。

「お嬢様。お加減はいかがですか?」

「マリー……? ここは……私……やっと戻って来れたのね……」

「ええ、よくお戻りいただきました。ですが坊ちゃんはまだ……」

「そう……これを試してみて……母上や母上の実家から秘蔵のポーションを貰ってきたの……」

「なるほど……これはいい物ですね。幸い坊ちゃんは無意識ですが飲み物を飲める状態になりました。これなら上手くいくかも知れませんね。」

マリーは最後の蟠桃の半分を絞り、そこに同じ量のポーションを注ぐ。少しだけ飲んでみたが、やはり蟠桃の甘みは強烈だ。これならカースも吐き出すことなく飲んでくれるのではないだろうか。

一滴ずつ、カースの口内にポーションカクテルを注ぐ。カースの喉が動く。問題なく飲んでいる!

残り半分はまだだ。ポーションと混ぜているため一気に飲ませるわけにはいかない。様子を見ながら時間を置いて飲ませる必要があるのだ。

「ねえマリー。こっちの魔力ポーションは使わなくていいの?」

しっかりと目を覚ましたエリザベスが問いかける。

「ええ。どういうわけか今の坊ちゃんからは魔力が感じられません。ですから魔力に影響を与えるポーションを飲ませるべきではないかと。」

「そうね。妙な状態だけど、顔色は良くなってるわね。」

そして同日深夜。

「これが最後の蟠桃です。これを使っても目覚めないようであればお嬢様、私と二人で採りにいきますよ。」

「ええ、マリーとなら怖いものなしよ。」

そして昼間と同じようにポーションカクテルを作り、カースに飲ませようとした。

その時……

「ピュイピュイ」

なんとコーネリアスが容器に首を突っ込み全部飲んでしまったではないか。

「コーちゃん……何てことを……」

「このクソ蛇、何やってんのよ!」

絶望的な表情を浮かべるマリー、怒りを露わにするエリザベス。しかしコーネリアスはどこ吹く風といった表情のまま、頭をカースの口に突っ込んだ。

そのままスルスルと奥に入り込む。

「え、コーちゃん? 何を?」

「カースに何するのよ!」

五十センチも体が入っただろうか。静止すること十数秒。それからコーネリアスは体を引き戻した。

「ピュイピュイ」

どことなく満足そうな顔をしてマリーを見つめるコーネリアス。一体何をしたのだろうか?

「これで坊ちゃんは助かるのですね?」

「嘘!? ホントに!?」

「ピュイピュイ」

もはやドヤ顔と言っていいかも知れない。そんな表情で鎌首を縦に振ったコーネリアス。それからカースの体の上でトグロを巻き、眠ってしまった。

その隣にはカムイも横になっている。

「お嬢様はもう休まれてください。後は私が見ておきますので。」

「そう、悪いわね。じゃあ休ませてもらうわ。おやすみ。」

コーネリアスは一体何をしたのだろうか。

カースの命運はいかに。