軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

143、通過するクラウディライトネリアドラゴン

結局アグニの日からも同じような行動だった。

朝からノワールフォレストの森を歩き、魔物を狩る。昼はアレクのお弁当を食べ、魔境だろうと辺り構わずアレクと楽しむ。魔物に見せつけるかのように。

夜も同様だ。夕食と心眼の稽古を終えて、風呂に入れば洗いっこが始まる。すると必然的に……

目と目が合う。手と手が触れる……もう、止まらない。

そして週末デメテの日。夏休みも終わりが見えてきてしまった。明後日ヴァルの日の夜には領都にアレクを送り届ける。その二日後、九月一日サラスヴァの日から学校なのだ。

思えば素晴らしい日々だった。本当にあっという間の二週間だった。誰もいない魔境で二人っきり、全てを捨てて生きたといっても過言ではない。

「今日は広い湖で泳いでみない?」

「あら、楽しそうね。昔、みんなで泳いだのを思い出すわ。」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

コーちゃんとカムイも喜んでいる。では行こう。砂漠のオアシス、スティクス湖へ。

「うわー、広いのね! ヘルデザ砂漠にこんな所があるなんて。昔カースが言ってた所ね。」

「そうそう。いつだったかノヅチと出会った場所だよ。湖の中心辺りから現れたんだ。スパラッシュさんが逃げろって言ってくれなかったら危なかったよ。」

「やっぱり魔境は怖いわね。それなのに私達ったらあんなことばっかり……//」

ふふふ、まさに傍若無人。いや、傍若無魔物か。大きい魔法さえ使わなければ、そうそう大物となんて出会わないもんだよな。

湖の中心部には、いつだったかカスカジーニ山で切って回収した木々を落としておく。少しは生態に変化が出るといいのだが。

私達は沿岸部で泳ごう。コーちゃんとカムイはもう飛び込んでる。行動が早いな。

「ねぇカース、今日はどの服を着て泳ぐの?」

「いや、服は着ないよ。裸で泳ごうよ。僕ら以外誰もいないんだから。」

「……もう、やっぱりカースは破廉恥なんだから……」

「アレクは先見の明があったんだね。さすがだね。」

それでもアレクは静々と服を脱ぐ。薄暗い森の木漏れ日の下で見るアレクの裸体は淫靡な魅力があったが、夏の太陽に照らされて輝く素肌も美しい。頭の先から爪先までじっくり見てしまう。

「もう! そんなに見ないで、カースも脱いでよ!」

「よし! 泳ごうね!」

今日は健康的に水泳を楽しむんだ! さっき上から見たところ、魔物もいなさそうだったことだし。

アレクは昔教えた泳ぎ方をしっかり覚えていたようで、全く危な気がない。カムイはコーちゃんに追いつこうと必死だが、やはり水中ではコーちゃんに分があるようだ。

普通に泳いだり、潜ったり、速さを競ったり。私達はそれはそれは楽しく泳いだ。

そろそろお昼にしようかという時に異変が起こった。コーちゃんが激しく「ギャワワッギャワワワッ!」と警告をくれたのだ。

上!? 西?

それは西の空を黒く染める巨大な雲だった。まるで闇雲の魔法が空を覆い尽くしているかのように。

「あ、あれは!」

「知ってるのアレク!?」

「たぶんクラウディライトネリアドラゴンよ! 統一王朝時代より以前から天空を周遊しているそうよ。ノヅチは魔王のペットだったけど、あれに手を出した者はいないとか……」

「ならこのまま大人しくしてれば過ぎ去ってくれるかな。」

ならば何故コーちゃんは警告をしてくれたんだ?

「ええ、そうだと思うわ……」

嵐を巻き起こしながら巨大な黒雲の塊が上空を通り過ぎていく。泳いで濡れるのはいいが、土砂降りで濡れるのは気分が悪いな。

どこから現れたのか、魔物達は狂ったように雲から遠ざかろうとしている。そりゃそうだ。魔物が強い魔力に惹かれるのだとしても、あのドラゴンの魔力は異常だ。ざっと私の二十倍はある。それも何気なく垂れ流している分だけで……本気になったらこんな大陸なんて簡単に沈められるのではないか? 異常過ぎる……

クラウディライトネリアドラゴンは私達の上空を二十分かけて通り過ぎ、一時間もすれば見えなくなった。そこには元通りの晴れた砂漠があるのみ……何て奴だ……

「凄かったわね。真っ黒な雲しか見えなかったけど、あれがドラゴンだなんて。誰か本体を見た人がいるのかしら?」

「そうだよね。知らなかったらただの黒い雲だよね。誰かが大規模な闇雲の魔法でも使ったのかって思うよね。」

「でも中心部に魔力を感じてしまうわね……カースの魔力でさえ私からすれば桁違いなのに、それよりも桁違いだなんて……」

「とんでもなかったね。たぶんあいつからしたら、僕だろうがアレクだろうが変わらないんだろうね。」

ノヅチ、エルダーエボニーエント、クラウディライトネリアドラゴン。上を見ると切りがないよな。やれやれ、恐ろしい世界だ。ただありがたいのは、こちらから近づかなければ無害ってことか。あんなのが襲ってきたら簡単に世界が滅亡してしまいそうだ。怖すぎるだろ。

「では、気を取り直してお昼にしようか。」

「そうね。今日もお弁当を作ってあるのよ!」

毎度お馴染み、滋養強壮弁当。砂漠のど真ん中なのに私達は元気だ。食後のデザートはアレクってか。

昼からはキアラを見習って楽しい魔法を使ってみた。水壁を曲げてウォータースライダー。さらに水鞭を太く中空にしてウォータースライダー・パイプラインだ!

高さも長さも自由自在。いくらでも楽しめてしまう。我ながらいいアイデアだ。アレクもコーちゃんも、もちろんカムイも大喜びだった。

「最高ね! こんなに楽しいの初めてよ!」

「ピュイピュイ!」

「ガウガウ!」

これならジェットコースターも再現できるかな? 気が向いたらやってみよう。

「じゃあ帰ろうか。帰る前にアレク、これを塗っておくよ。」

誰もいないのをいいことに昼からも私達は全裸で遊んでいたのだ。だから日焼けをしている。ポーションを肌に塗っておけばダメージは回復するってわけだ。

「ん、もう……どこに塗ってるのよ……」

もちろん全身くまなくだ。こんなことをしてると帰るどころではなくなってしまうが、強い意志で帰ることを決意した。

ただし続きはミスリルボードの上で行う。イチャイチャ。