軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54、元首席アイリーン ※

ダミアンはそのまま我が家で風呂に押し入り適当な部屋で寝た。セバスティアーノさんは食事後に帰っていった。マーリンとは楽しくお喋りをしていたようだった。

私達も風呂に入り寝ることにした。私達より先に風呂に入るとはダミアンの奴め!

翌日、パイロの日。

どうせダミアンは起きないだろうからアレクと二人で領都をブラブラとデートしようと思っていたら。

「おう、今日はどこに遊びに行くんだ? 俺も連れてけよ!」

いい大人が子供のデートを邪魔するんじゃない! あ、こいつは悪い大人か。

「今日のお昼にお茶会があるらしいですわ。ダミアン様も参加されますか?」

「うげ、お茶会か……やっぱ帰るわ……またなカース。」

「おうまたな! 例の件、楽しみにしてるぜ!」

さすがアレク! あの厚顔なダミアンをあっさり追い払ってしまった!

「お茶会は本当にあるの?」

「あるわよ。私達が参加するかどうかは分からないけどね?」

「あははは! やるねー! お見事! 確かにお茶会は参加したくないね。あー面白い!」

これが口先で丸め込むってやつか……いつもながらすごいな。

中心部から郊外にかけてブラブラと歩いていたら前から女の子が歩いてきた。灰色の髪はボサボサ、顔は埃まみれ、服はボロボロで濡れているようだ。汗か?

「アイリーン! またそんな格好で出歩いて!」

アレクの友達か?

「アレックスか。どうせまた汚れるんだ、私は気にしてない。」

「もう! 女の子がそんなことじゃだめよ! カース、やってあげて!」

「えっ? あ、ああ。いくよ!」

洗濯魔法と乾燥魔法で全身きれいにしてあげる。上から下まで、服もだ。

「こ、これは……」

「女の子はきれいにしてないとだめよ?」

ほお、汚れを落としたら少し美人になった。もちろんアレクには及びもつかないが。灰色の短い髪が銀色に輝いて見える。気が強そうな眼差しだ。

「さっぱりした。すまない、ありがとう。私はアイリーン・ド・アイシャブレ。名を伺ってもいいだろうか。」

「カース・ド・マーティンです。」

「アイリーン、カースはエリザベスさんの弟、クタナツ最強の魔法使いよ。」

アレクはたまにこんなことを言うよな。それよりこの子は姉上を知ってるのか?

「エリザベスさんの……クタナツ最強……」

まさか真に受けたのか?

次の瞬間彼女は槍で突いてきた。危ないな。もちろん私の自動防御は破れないが。

「ちょっとアイリーン! 何するのよ!」

「すまない、稽古をつけてもらえないだろうか。」

先に言えばいいのに。

「カース、この子は先日まで首席だったの。スランプみたいで、よかったら助けてあげてくれない?」

なるほど。そうなのか。アレクの頼みだ、何でも聞くさ。

「もちろんいいよ。でも稽古って何するの?」

「私も分からない……立ち会ってもらえればありがたい。」

「いいよ。アレクの頼みだから何でもオッケーだよ。」

私達は魔法学校に移動した。

「じゃあまずは魔法なしでやってみる?」

私は虎徹を構える。

「いざ!」

彼女は槍か。一文字槍って言うのかな?

槍とのまともな対戦なんて初めてだ。昔、授業や放課後にスティード君とやった以来か。間合いは遠いし回転が早いもので全然近寄れない、どうしよう……

だが、私だって無尽流の剣士だ。槍に遅れをとっては先生に怒られる。

彼女の槍にタイミングを合わせ虎徹で強く弾く。それだけで槍は大きくブレて彼女の目の前はガラ空きになる! すかさず間合いを詰めて突き! 身を捻って左に躱された……が、そのまま横薙ぎ。彼女の腹部を浅く切り裂いた……勝ったと思ったら左の回し蹴りを脇腹にくらった。装備のせいでダメージはないが、引き分けか。

「やるね! 勝ったと思ったよ。あの体勢から回し蹴りとはね。」

「あなたこそ……近寄れないから槍を攻撃したのか……ただの魔法使いじゃない。もう一回お願いしていいだろうか?」

それからしばらくは魔法なしの稽古となった。彼女の腕前は二年前のスティード君ぐらいか。対戦成績は八勝五敗六引き分け。いい勝負だ。

「次は魔法ありで頼みたい。」

「いいよ。少し離れようか。」

「待って! それなら私も参加するわ! こっちは二人でカースの相手をするわ!」

なるほど、アレクも退屈だよな。私にもいい練習になりそうだ。

「アイリーン! 少しの油断もしてはだめよ! 全力でやりなさい!」

「分かった……」

『水球』

『水球』

『水球』

水球三連発。これなら衝撃はあっても大怪我はしないだろう。手加減する気はないが怪我をして欲しくもないからな。

「避けたからって油断しちゃだめだよ。」

私の水球はホーミングだからな。

アレクは氷弾、アイリーンちゃんは風斬で攻撃をしてくる。

「アレク、氷弾が味方に当たるかも知れないことに気を付けて。」

アレクが外した氷弾を少し軌道を変えてアイリーンちゃんに向かわせる。風斬は見えなくて避けにくいので、『闇雲』こうすれば軌道がハッキリ見える。

『風操』

見物している人間はいないので、アレクのスカートをめくってみる。太ももが眩しいぜ。最近はミニスカートを穿いたり穿かなかったりだもんな。

「なっ、なんて……」

アイリーンちゃんに隙ができた。もちろんそのためのスカートめくりだ。

『水球』が直撃し、弾き飛ばされる。

アレクは盛大にスカートをめくられても怯まず氷弾を撃ってきたのに。

「よし、ここまでかな。アレク、よかったよ! いい感じだね!」

「もうカースは破廉恥なんだから! 見たいならお風呂で見せてあげるのに!」

「ふふっ、青空の下で見たかったんだよ。見事な氷弾だったよ。」

アレクはアイリーンちゃんを介抱している。

「これを飲ませてあげたら? あちこちに傷が付いてるし。」

私はアレクにポーションを差し出す。

「ありがとう。アイリーン! 起きなさい! 起きて飲みなさい!」

アレクがアイリーンちゃんの頬をパチパチ叩いて起こしている。

「うう……ん……」

目を覚ましたようだ。

「アイリーン! あんなことで隙を見せたらダメよ! これを飲んだらもう一回よ!」

「あ、ああ……」

汚い格好も気にせず歩いているのに、妙なところで女の子らしさを発揮する子だな。

ちなみに彼女の服装はどこかの道着のようだ。スカートめくりはできない。

それから昼までに何度も同様の対戦をしたのだが、私にとっても有意義な時間だった。

「お昼にしましょうか。アイリーン、奢りなさいよ?」

「ああ、もちろん……」

ちなみに昼から焼肉に行った。あの店はオークだけなら安いんだよな。