軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16、魔法学校の教官

アレクとコーちゃん、そして私はマーリンが作ってくれた夕食を楽しんでいる。

「お店の豪華な料理もいいけど、マーリンの料理は美味しいよね。お袋の味って言うらしいよ。」

「そうなのね。お袋って俗語で母親を意味する言葉よね。私達の母上ってあんまり料理しないからピンと来ないわよね。」

ちなみに貴族女性にとって料理が上手であることはステータスだ。普段から料理をすることは稀だが、賓客が来た際には自ら料理をすることで歓待することも多々ある。

「ピュイピュイ」

コーちゃんはマーリンの料理も母上の料理も大好きらしい。

場面は変わってお風呂。今日のアレクは私の首に手を回して抱きついてきている。

「ねぇカース。明日は楽しみね。カースは油断しないから大丈夫だと思うけど、兄様はなりふり構わず強い魔法使いを連れてくると思うわ。」

「あー、お兄さんは五年生かな? 学年首席とか連れてくるかな?」

「あり得るわ。後は護衛とか家庭教師の魔法使いとかかしら。」

なるほど。それは興味深いな。強い魔法使いって母上やマリーぐらいしか知らないもんな。

翌日、朝食を済ませた私達は街中をブラブラしている。昼まではまだまだ時間がある。ならば昨日の店にアレクを連れて行こう。

「この店知ってる? 例の仕立て券で服を頼んでるんだよ。」

「あら、ベイツメントじゃない。早速新しい服を作るのね。」

さすがアレク、やはり高級店は知ってるんだな。

「こんにちは。昨日の続きをお願いします。」

「いらっしゃいませマーティン様。お連れ様とはアレクサンドル様だったのですね」

おお、やはりアレクは有名なのか。

「お久しぶりね。どうせ面倒な注文されたんでしょ?」

「そうでもありません。では早速サイズを頂戴いたします」

「えっ? 私?」

「そうだよ。アレクとお揃いで二着ずつ作るんだよ。言ってなかったっけ?」

「聞いてないわよ。カースったら。」

そうは言いつつも嬉しそうな顔をしてる。かわいいなぁ。

五分後、採寸を終えたアレクが出てきた。

「ケイダスコットンで作るなんて、贅沢過ぎるわよ。どんな服なのよ。」

「ふふふー、内緒。一ヶ月半ぐらいかかるらしいから楽しみに待ってようよ。」

いやー服も楽しみだし、アレクの喜ぶ顔も楽しみだ。

「まだ時間はあるし、コーヒーでも飲みましょうか。私が払うわ。」

「いいね。またいい豆を選んでね。」

コーヒーを飲むにはやはりカファクライゼラ。今日も美味しい。昼からは頑張ろう。

約束の刻限。私達は魔法学校の校門前に来ている。中から兄ちゃんの取り巻きらしき学生が現れ、私達を訓練場へと案内する。

「よく来たな。その度胸だけは褒めてやろう」

「どーも。」

取り巻きの数がえらく多い。二十人ぐらいか。

「さて、勝負の方法だが昨日と同じでは芸がない。何でもありの対戦でどうだ? 降参するか気絶した方が負けだ。開始後は円からは出ても構わないぞ?」

「相手次第ですかね。どなたですか?」

「私がお相手つかまつる。ここ魔法学校の教官サリンジャ・ド・ナユートフと申す」

うわ、マジかよ。子供の対戦に教官なんか用意して……しかも貴族かよ。強そうだな。

「いいでしょう。ただし開始時の距離は昨日の倍でお願いします。また、横槍が入った場合はそちらの負けです。その条件なら受けましょう。」

「いいだろう。では今日はこちらで契約魔法をかける。これを読んでサインしたまえ。昨日と同じ内容だ。」

「ダメですね。これだけの相手です。同じ条件と言ったことは撤回します。白金貨二枚にしてください。」

「チッ、金の亡者が! 金貸しなんて下賤なことをするだけあるな! まあいいだろう。どうせ負けて領都からいなくなるのは変わらないんだからな。」

そして私と兄ちゃんの双方がサインをし、契約魔法がかかる。

私はコーちゃんが入っている鞄をアレクに渡して位置に着く。

「両者構え!」

「始め!」

何でもありだ。手加減なんかしていられない!

『榴弾』

パチンコ玉サイズの金属球を数百発ばら撒く。その上ホーミングだ。時間差で絶え間なく襲っていく。まともに当たればミンチだ。

「氷壁」

教官は防御を選んだようだが……

『火球』

『榴弾』

避けないならそのまま潰すまでだ。氷壁など私の火球の前には無いも同然!

『風操』

蒸気と土煙がひどいが油断はしない、風操で視界をクリアに保つ。

すると、終わっていた……

先生は虫の息で横たわり、辛うじて生き残っている。特に両手両足が無残なことになっている。可哀想に。相当高位の治癒魔法使いでないと治せないんじゃないか? うちの母上とか。

「降参しますか? 返事がないなら続行しますよ。」

兄ちゃんは忌々しそうにこちらを睨む。返事がないな。いくら相手が死にかけだからって油断したら負けるのはこっちだ。降参してくれない以上は可哀想だがとどめを刺すしかない。

「待て小僧! これを見ろ!」

取り巻き達がアレクにナイフを突き付けている。

「アレックスの命が惜しければお前が降参するんだ。十秒待ってやる。それを過ぎたらナイフを一本ずつ突き刺す。」

あーあ、やっちゃった。これは横槍にはあたらないのか? それにしてもこいつら系って本当ワンパターンだよな。しかも同じ学校にいてアレクの実力を知らないのか?

『氷壁』

ナイフを突き付けていた数人がたちまちアレクの氷壁に飲み込まれる。同じ魔法学校生なら氷壁ぐらいそのうち破るだろう。しかしそれまでのわずかな時間があれば余裕で間に合う。

『麻痺』

『微毒』

『落雷』

兄ちゃんを含む取り巻き全員を制圧完了。

「やっぱりアレクの氷壁は強いね。発動速度も一段と早くなってるし。」

「カースこそナユートフ先生に圧勝だったわね。カッコよかったわよ。」

そして祝福の口付けを頬にくれる。嬉しい!

コーちゃんも鞄から顔を出してピュイピュイと喜んでくれている。

「とりあえず騎士団でも呼ぶ? アレクにナイフを突き付けたんだから。それから先生を治せる魔法使いっていないかな? 早くしないと死んじゃうよ。」

「任せて。呼んでくるわ。ここは頼むわね。」

アレクに任せておけば大丈夫だろう。私に出来ることと言えば先生にむりやりポーションを飲ませることぐらいか。胴体は穴だらけ、両手足は原形をとどめてないほどグシャグシャになっている。少しやり過ぎたか……

兄ちゃん達は縛り上げておこう。魔法使いって縛ってもあんまり意味がないけど。その上で頭を出して水壁に閉じ込めておこう。

さて、ここからもいつも通りだ。兄ちゃんを殴って叩き起こす。

「おら、起きろ。」

起きない……

少しポーションをかけてやる。

そしてまた殴る。

「起きろ!」

耳を引っ張りながら大声で叫んだらようやく目を覚ました。

「ぐぅっ、私は……」

「やっと起きたか。アレクを人質に取ろうとは舐めた真似をしてくれたな。連綿と受け継がれる魂が呆れてるぜ。」

「か、下級貴族などに何が分かる……」

ムカついたのでまた殴る。

「まあいいや。昨日の分と合わせて白金貨三枚な。払え。」

「な、ない……」

「だろうな、貧乏貴族め。では約束だ。お前は俺に白金貨三枚の借金だ。利息はトイチの複利。十日ごとに利息だけでも入れろ。それがない場合は一日ごとに関節が二つずつ曲がらなくなる。全身の関節が固まってもまだ利息を払わない場合は、瞼も口も開かなくなる。分かったな?」

この場合利息は十日で金貨三百枚。地獄のような借金だ。一ヶ月滞納したらどうなることやら。

貸そうかな。まあ当てにするな、酷すぎる借金ってか。

「ま、待て……必ず払う……だから契約魔法だけは……」

またまた殴る。虎徹で手加減しながら殴るのは少し面倒だったりする。

「分かったな?」

「わ、わかったっごぉぼ」

やっと解決。後はアレクを待つばかりだ。先生が心配だが私にできることはもうない。

五分もしないうちにアレクが他の先生を連れて戻ってきた。後は任せよう。