軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

359、卒業

本日はついに卒業式だ。長かったようであっという間の五年間だったな……

私はギチギチの礼服に身を包み馬車に乗り込む。父上と母上、そしてキアラとコーちゃんは後から来るようだ。

「カース坊ちゃん。ご卒業おめでとうございます。本日までよくぞ生きてこられたと思います。どうか長生きしてくださいね。」

「ありがとうマリー。命を大事に生きていくよ。また魔法教えてね。」

そして到着。私が馬車から降りると、ちょうどアレクサンドル家の馬車も来た。

「おはよう。カースがそんな礼服を着てるなんて新鮮ね。」

「おはよ。アレクはそのドレスよく似合ってるね。普段よりかなり豪華なのにそれが普通に見えるよ。」

「ありがとう。嬉しいわ。」

顔を赤らめて微笑むアレク。やっぱよく似合ってるよなぁ。

教室にて、ウネフォレト先生の挨拶が始まった。

「皆さん、ついにこの日が来ましたね。五年前に出会ったのが昨日のようです。皆さんはこれからそれぞれの道を歩み出すことになります。たくさん伝えたい……言いたいことはありますが、私から贈る言葉は一つです。『また会いましょう』

これだけです。生きていればまた会えます。忘れないでください。死なないでください……以上です!」

ウネフォレト先生の暖かい挨拶に私達は拍手で返す。

五年間か、お世話になったなぁ。人生の半分をここで過ごしたわけか。決闘したり遠足したり殺し屋に狙われたり。色々あったな。

そして校庭に移動し、卒業式が始まる。

校長先生の挨拶からだ。

「卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。本日四十二名の卒業生を送り出すことができて嬉しく思います。さて、この学校には凄腕の先生が揃っております。もし人生に悩むことがありましたら何なりと相談に来てください。どうにもならないかも知れません。はたまた命が助かるかも知れません。どうか私達がここにいることを忘れないでください。」

簡潔だが心に響くな。さすが校長先生。

「卒業生挨拶、サンドラ・ムリスさん」

やはり進行はナウム先生だ。卒業式といえば送辞と答辞だが、ここで行わない。卒業生代表の挨拶のみだ。サンドラちゃんは文句なしの成績トップだもんな。

「私が本日この場に立てたのは、ただの運でした。小さい頃から学問に興味を持ち、新しい事を覚えるのが好きで。算数の奥深さを知り、どこまでも果てがなく難しいことも知りました。何回か死にかけては、その度に助けられて。最高の仲間と出会えた学校生活は私にとって宝でした。王都には一人で行きます。きっと苦労するでしょう。でも私は負けません。クタナツの民としての気概を忘れず邁進して参ります!

先生、ありがとうございました! みんな、ありがとうございました! ありがとう……クタナツ……」

わずか十歳でなんて挨拶をするんだ。サンドラちゃんはやはりすごいな。拍手が鳴りやまない。

「来賓挨拶、クタナツ代官ド・アジャーニ子爵レオポルドン殿」

代官まで出席するのか。クタナツ唯一の初等学校だから当然なのか。

「諸君、本日は卒業おめでとう。昔の自分を見るようで複雑な気分でもある。代官として諸君に期待すること、それは能力だ。先ほどのムリス嬢のようにクタナツにとって有益な人間になって欲しい。しかし先日急死した冒険者、英雄スパラッシュのように命を賭してまでクタナツの役に立てと言う気はない。各々ができる範囲で能力向上に励んで欲しい。諸君の輝かしい未来にパイローナ神の祝福があらんことを。」

うーん、代官らしい挨拶だな。スパラッシュさんを英雄と言ってくれて泣きそうになってしまった。かなり嬉しいな。

「卒業証書授与、代表アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドルさん」

アレクが代表して校長先生から卒業証書を受け取る。他のみんなは名前を呼ばれたら返事をして立ち上がる。これで卒業式も終わりだ。後は教室に帰りそこで全員に卒業証書が手渡される流れか。

終わったんだな。明日からは別々の道を……

この後はアレク宅でパーティーだ。いつもの五人、そしてその家族が集まる予定だ。

私はすでにいつもの服装、ウエストコートにトラウザーズスタイルに着替えている。これが楽でいい。

「みんな、よく来てくれたわね。たくさん食べてね!」

私以外の三人はアレク宅に来るのは初めてだろう。思えばあの時、私が一人で来てから運命が動き出したのだろうか。

今日は冬の終わりにしては暖かく、外は気持ちがいい。よって料理は全て庭に並べられている。かなり大量だ。どれもこれもマトレシアさんの力作なのだろう。

大人達はアレクパパとママに挨拶をしている。弟妹たちは歳が近いもの同士で何組かグループに分かれてはいるが、食事に夢中だ。コーちゃんは私の首に巻きついている。かわいいぜ。

さあ、私達も食べよう。

「みんなはいつクタナツを出発するの?」

「私は明後日よ。王都なんて気が遠くなる距離よね。」

「僕は一週間後かな。今月中旬には領都に着いておきたいからね。」

「僕もスティード君と同じ馬車に乗る予定だよ。今月の後半で領都の地理に慣れておかないとね。」

「私は……まだ分からないわ。カース次第だわ。」

「僕はいつでも行けるからアレクが好きに決めていいよ。」

サンドラちゃんが『熱くて見てらんない』って顔をしているな。

食べ始めたのは昼だったのに、他愛のない話をしていたらもう夕方になっていた。大人達はみんな酔いが回っているようだ。弟妹達は遊び疲れて寝ている者もいる。

そろそろお開きかな。コーちゃんとキアラを連れて帰るとしよう。

「じゃあサンドラちゃん、出発の時は見送りに行くからね。スティード君とセルジュ君も。」

「ありがとう。何もかもカース君のおかげよ。本当にありがとう。」

「領都でもまた一緒に稽古しよう。」

「またいつかみんなで狼ごっこしたいよね。」

「ピュイピュイ」

キアラを肩車して、コーちゃんはキアラの首に巻きついている。のんびり歩いて帰ろう。

明日はきっと晴れるからアレクと二人で出かけようか。二人で手を繋いで……