軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

335、辺境伯家の夜

私達三人がソルダーヌちゃんの部屋に移動しようとしていたら、お兄さんが。

「待ちたまえ。いくら三人とは言えこの時間に男性を部屋に入れるのは好ましくない。君も遠慮したまえ。」

それもそうか。もっともだな。

あ、アレクが寂しそうな顔をしている。

「いいじゃない! この二人は明日には帰ってしまうのよ! カース君は私の部屋で寝るわけじゃないんだから!」

「まあまあ、当然のことだと思うよ。部屋は明日また見せてもらうよ。じゃあ僕はこのまま寝るね。おやすみ、また明日。」

「カース、早起きするのよ!」

以前アレク宅に泊まった時は暗いうちに起こされたんだよな。翌朝もそうなるのか?

再び客室に案内された。もちろん先ほどと同じ部屋だが、この屋敷は広過ぎて案内なしでは辿り着けないだろうな。同じような部屋もたくさんあるし。

もう眠いから丁度いいや。寝よう。

そう思っているとノックの音が……

ドアを開けるとまたまた同じメイドさんだった。

「大奥様がお呼びです。こちらへどうぞ」

何だ何だ? 何事だ?

「いいですけど何事ですか?」

「申し訳ありません。聞かされておりません」

仕方ないな。どうせ行くしかない。

案内されたのは……ここは応接間かな?

待っていたのはお兄さんだった。

「やあ、よく来てくれたね。」

「はぁ、大奥様がお呼びと伺いましたが……」

さすがにおばあ様と呼ぶのはまずいかな。

「そのうち来ると思うよ。それより君にお願いがあるんだ。今すぐ出て行ってくれないか?」

はあ!? 何言ってんだこいつ? わざわざ来てやったのに。

「理由によりますが?」

「おいおい勘違いするなよ。この僕が出て行けってお願いをしてるんだ。素直に聞けばいいだけだよ? それとも命令の方がいいかい?」

ふーん、こんなことを言うタイプか。

「いいですよ。それなら大人しく帰るとしましょう。そして二度と来なければいいんですね?」

「ほほう。意外と物分かりがいいんだね。ならば用件はそれだけだ。行きなさい。一人でね。」

何こいつ? まさかアレク狙い? 気持ち悪っ!

いくらアレクが可愛いからって十歳だぞ?

こいつは十四歳ぐらいか?

「コーちゃん。アレクの所に行ってくれる?」

「ピュイピュイ」

最近知ったのだが、コーちゃんは精霊なのでどこでも出入りできるようなのだ。私の自動防御すらすり抜けて入ってくる。

後はコーちゃんがアレクを連れてきてくれるだろう。

「その蛇を捕まえろ!」

バカ兄貴はメイドさんに命令を下したが、キアラですら捕まえられないのだ。メイドさんには無理だろう。私にも無理だが。

さて玄関はどっちだ? メイドさんがいなくなったから分からないぞ。

「やってくれるな。大人しく出て行けば見逃してやったものを。『風斬』可哀想だが……」

発動速度はまあまあ速い。威力もそこそこ。カマイタチ的な切れる魔法か。今度覚えてみよう。

「なっ、無傷だと?」 『風斬』『風弾』

連射の速度も悪くない。大会で見たソルダーヌちゃんより余程強いだろう。

「くそっ!どうなってる!?」『風斬』『風弾』

他の魔法はないのか。私はドア前に立っているのだが、壁がどんどん傷付いている。いいのか?

『風球』『風弾』『風斬』

風系しか使えないのか? そんな魔法では私の自動防御は突破できないぞ。

さすがにもういいだろう。『麻痺』

やはり無傷で鎮圧するにはこれだよな。覚えておいてよかった。少々魔力を多めに込める必要はあったが。

さて、アレクと合流して帰ろう。せっかくの家の話も御破算かな。少し残念だ。でも辺境伯の息子にロクな奴がいないと分かっただけでも収穫か。

さあ、玄関はどっちだ? 客室に荷物なんて置いてないし、このまま出よう。

おっ、別のメイドさん発見。

「すいません。玄関はどちらでしょうか?」

「お客様、どうされました? もうお休みかと思っておりましたが」

質問に答えてくれよ。

「出て行けと言われたから出て行くだけですよ。できればソルダーヌ様のお部屋に寄ってアレクサンドリーネを迎えに行きたいですがね。」

「お、お待ちください! きっと何かの間違いです! 行き違いか何かで……」

「残念ですが違います。ディミトリさんから直接言われたもので。アレクサンドリーネを手に入れるのに僕が邪魔だそうです。」

ここのメイドの命令系統がどうなってるのか知らないが、伝えておいて損はないだろう。そう考えると風呂の件はやはりハニートラップだったのか?

「そ、そんな……大奥様をお呼びいたしますので、何卒、何卒お待ちを……」

このメイドはこのメイドで何を必死に引き止めてるんだ? 私が帰ったからって困らないだろうに。

「ならソルダーヌ様の部屋に案内してください。アレクサンドリーネはそこにいるはずですから。大奥様は呼ばなくていいですよ。」

行き違いになりそうなのが心配なんだよな。コーちゃんが上手くやってくれるとは思うが。

五分ぐらい歩いてソルダーヌちゃんの部屋に案内された。メイドさんがノックをするが返事はない。行き違いか……いや、それとも……

「部屋の中を見せてもらっていいですか? ここは本当にソルダーヌ様の部屋なんですよね?」

「え、ええ、もちろんそうです。しかしお嬢様がご不在時に男性をお部屋に入れる訳には……」

「入りませんよ。中を見るだけです。ドアを開けるだけで結構です。それが駄目なら玄関に案内してください。」

歩きまわったから大体の構造は分かった。そこら辺の窓から出てもいいけど、玄関まで自力で行けそうではある。

私は返事を待たずにメイドを無視して歩き始めた。

後ろからメイドが「お待ちください」「何卒」などと言ってついて来る。

どうせ玄関でアレクを待つつもりだが。適当に歩いていたら食事をしたホールに着いた。ここまで来れば後は分かる!

「ピュイピュイ」

あっ、コーちゃんが帰ってきた。ならばアレクは……来た! これで安心だ。

「カースどうしたの!?」

「うん事情は後で話すよ。とりあえずここから出るよ。今すぐ着替えて。」

アレクは寝間着だった。『闇雲』

そして行動が早い。あれこれ言わずに即行動してくれる。

「ソルダーヌちゃんの部屋に荷物はある?」

「いや、ないわよ。」

「よし、じゃあ行くよ!」

少し歩いて玄関に到着した。頑丈そうなドアだが……『風球』ブチ開ける。

もう帰るんだから大きい音がしようが気にしない。

庭に出たら後はミスリルボードに乗って領都を脱出、と行きたい……が。私達は城門から領都に入ったので、城門から出ずにクタナツに帰ると領都の関所破りをしたことになってしまう。だからここは一旦宿にでも行ってみよう。

そして到着したのが『辺境の一番亭』前回泊まった宿だ。部屋が空いていればいいのだが。

空いていた! 助かった。前回と同じ部屋だ。

しっかり寝たいので朝ご飯は九時でお願いしておいた。さて、追っ手は来るかな?

朝には麻痺も解けるだろうし。