軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

189、伝令ヨルゴの受難と苦悩

捜査は遅々として進んでいないが、蟻の解体の方はひと段落しつつあった。

「蟻の素材の買取価格は相当低くなりそうだな」

「仕方ねぇよな。こんだけの数だからな」

「むしろ売るより防具に使った方いいかもな」

「せいぜい予備にしか使えねーがな」

蟻の素材はなまくらな剣では傷もつかない。逆に言えばなまくらでない剣なら傷はつくし斬れる。クタナツで活動するレベルの冒険者ならその程度の防具は揃えているし、蟻を斬り裂けるレベルの武器も持っている。

従って解体の手間と実入りを考えると割に合うとは言えない。しかしクタナツで生きる者として協力しないという選択肢はない。根っからのクタナツ男なのだろう。

オディロン達『リトルウィング』もそこそこ稼ぐことができた。一人あたり金貨二枚と少しだ。これは九等星としては破格の稼ぎと言える。

ちなみにウリエンの分は金貨一枚ほどだった。小遣いには丁度良いだろう。

そしてバランタウンでは蟻の素材が利用され、より堅固な城壁を築くに至った。

クタナツ並とは言えないが、小さくとも堅牢な街になることだろう。

そしてグリードグラス草原に建設中の石畳だが、まだ半分ぐらいだ。まだまだ草原を縦断していない。

またこの度急に建設された石垣はそのまま城壁へと生まれ変わることだろう。

そしてアランとヨルゴは。

「副長! あの子は何なんですか! 歴戦の魔法使いですか!? 伝説の大魔法使いですか!?」

「ふっふっふー。すごいだろー。うちのカースはすごいんだぜー。」

「いやいや! なんでここからバランタウンまで一瞬で着くんですか!? 気付いたら着いてましたよ!?」

実際には二十分ぐらいかかっていたのだが、ヨルゴには一瞬だったのだろう。

「ヘッヘッヘー。カースはすごいからな。それもこれも俺とイザベルの教育の賜物だぜ。よし、俺とイザベルの出会いからじっくり聞かせてやろう。お前の嫁選びの参考にするといい!」

ヨルゴは墓穴を掘ったのだ。

もう三十回ぐらい聞かされたイザベルとの出会い、そして結婚をまた聞かされそうなのだ。

「い、いやいや! それには及びません! 副長のお子さんならあれぐらい当然ですよね! ねっ?」

「ふぅーふふふぅー、分かってるじゃないか。うちはカースだけじゃなくて上の子もすごいんだぜー。聞きたいだろ?」

「聞きたいです! 聞きたいのは山々なんですが、あいにく任務がありまして。いやー残念ですがまた聞かせてください!」

ヨルゴは何とか逃げようとしている。

「残りの任務を詳しく言ってみろ。」

どうやら逃げられそうにない。

「なんだ、そんな任務か。明日にしろ。今日はお前はもう上がりだ。酒でも飲もうぜ。奢ってやるから付いてこい。」

ヨルゴは逃げられないことが確定したのだ。

せめて誰か道連れはいないか辺りを見回すのだが、同僚は迅速に逃げている。クタナツ騎士団は優秀なのだ。

建設途中の草原に居酒屋などない。商人が運んで来る酒を購入するのみだ。

そしてヨルゴは……アランとイザベルとの出会いから結婚に至る長い話を聞かされるのだ。

ちなみに三十数回に及ぶ話だが、毎回微妙に違ったりする。しかしそれを指摘すると、また話が長くなるので皆スルーしている。

今回は結婚で終わらず、長男誕生から数年前の二女誕生まで聞かされてしまった。

合間合間にアランの浮気話まで挟まれて、最早ヨルゴは『すごいですね』とだけ返事をする人形と化していた。可哀想に。

ヨルゴは誓った。二度とアランの家族を話題に出さないと。

アランに上手く誤魔化されたなどとはカケラも考えていない。