軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9、カースの旅立ち

五人のジジイ達が一触即発という場面。いきなり雷が落ちた。普通に『落雷』の魔法だな。

王妃、おばあちゃん、そして母上の仕業か。

「明日は朝早くから出発なんですよ。体力と魔力の無駄遣いはやめて欲しいわ。暑苦しいんだから。」

悪いことをした子供の頭に水球を落とすのは定番の罰だが、文字通り雷を落とすとはね。誰も避雷を使っていないらしく直撃している。しかしほぼ全員無傷かよ。宰相だけが膝をついているぐらいか。

「くっくっく、ほんの座興、戯れよ。まあ許せ。男とはいくつになってもハメを外したいものよ。そうだろうアントンよ?」

「御意。酔いに任せて暴れる夜があってもようございます。宰相殿もそうお思いですな?」

「さて? 私はもう宰相ではありませんゆえ。ですが、陛下が職務を忘れ友と戯れるお姿を拝見できたことは、良き冥土の土産ですな。」

「ぎゃははははぁ! なんだオメー! 王妃様に頭が上がんねーのかよ!」

「これドノバン。よそのご家庭の事情に口出しは禁物ですよ。王妃様、祝福の落雷をありがとうございます。何よりの誉れでございます。」

校長は何を言ってんだ? 祝福の落雷って。

「まあジャックさんったら。紳士なのね。ダンディだわぁ。北での生活が楽しみねぇ?」

「お、おいアンナ! お前まさかジャックに!」

ぷっ、国王が慌ててる。面白いオッさんだわー。王妃が浮気なんかするかよ! そもそも浮気をするような余裕のある生活にはなりそうにないしな。みんな死なないで欲しいなぁ。

そんな騒ぎがあった翌朝。国王達は船に乗り込もうとしている。昨夜は早々と寝込んでしまった代官も朝からビシッとしている。

「陛下! 我々クタナツの民は陛下の一大事業の成功をお祈りしております! そして、それ以上に皆さまの身の安全を祈っております! どうかこの港を有効活用していただけるよう、ご無事でご到着ください!」

「レオ、そなたらの忠誠確かに受け取った! 必ずやこちらと北の街で貿易をし、互いに発展しようではないか! 皆の者! 大儀であった! これより我々は北に向かう! そなたらの尽力、余は終生忘れぬぞ!」

考えてみれば北の街が発展しなければこの港は無駄になってしまうもんな。漁に使うのもありだろうけど。それを代官たらよくもまあここまで推し進めたもんだ。普通なら北の街ができて、ある程度発展の予兆が見えてないと作れないだろうに。それをこの段階で作ってしまうとは、やはり代官は只者じゃないな。

そして、次々に浮身を使い船へと乗り込んでいく。校長と組合長は浮身が使えないのだろう、おじいちゃんが一緒に連れていってる。

『出発!』

国王の号令が聴こえた。船は帆にいっぱいの風を受け、北の地へと向かっていった。進路は北西だが。

陸側の私達は船影が見えなくなるまで手を振っていた。

「ねえアラン。そのうち私達も行ってみる?」

母上が父上に話しかけている。

「へっ、お義母さんが心配だからな。別にジジイはどうでもいいけどよ。キアラが卒業したら行ってみるのもいいかもな。」

「うふっ、それもいいわね。遊びに行くだけで済めばいいけれど?」

私ももうすぐ北に行くことだし、少し遠くから様子見ぐらいしてみようかな。道中だしね。

「カースも旅立ちか。無事に帰ってこいよ?」

「もちろんだよ。お土産持って帰るからね。父上も元気でね。」

「そうだわカース。これをエリに渡しておいてくれるかしら。マリーが用意してくれた物なのよ。」

母上も大変だな。両親や父上だけでなく姉上の心配まで。私も心配かけてそうだしなぁ。

「分かった。王都に行った後は直接山岳地帯に行くからさ。みんな元気でね。」

「うん。カースも元気でな。次に会う時は二度手間で悪いが山岳地帯に連れてってもらうよ。」

「オディ兄はフェアウェル村に行くんだよね。マリーの両親に会いに。いいよ。連れて行くね。」

フェアウェル村とクタナツを往復することなど大した手間ではない。オディ兄が望むなら喜んでやるとも。

「よろしくお願いします。坊ちゃんにはお世話になりっぱなしですね。」

「いやいや、マリーには僕の方こそ世話になってるじゃん。ね、アレク?」

「そうよね。マリーさんのためでしたら私だって尽力したいわ。」

「坊ちゃん、お嬢様、ありがとうございます。」

さてと……名残は尽きないが出発するか。でもその前にもう一組、挨拶をしておかないとな。

その相手は代官と一緒にいた。昨夜も代官の近くで静かに飲んでいるのを見た。

「お義父さん、お義母さん。アレクをいただいていきます。」

「父上、母上……私はカースとともに往きます。」

「カースよ。まさかこんなことになるとはな。あの時、我が家の風呂で金貸しをやると言ったお前がなぁ……あの時はアレックスとの将来は認められんと言った。それが今ではどうだ! お前以外の婿など考えられぬ! アレックス! よくやった! よくぞこれ程の男を捕まえた! お前は最高の娘だ!」

「父上……ありがとう……」

「ふふ、あの時から判断を曲げなかった私は正しかったようね。いい男になったものだわ。アレックスはすでにあなたのものよ。言ったわよね? あなたが守りなさいと。」

「押忍、お義母さん。忘れたことはありません。」

「母上……そんなにもカースのことを……」

「結婚式を楽しみにしておるぞ。必ずクタナツで挙げるんだぞ!?」

「待っているからね。孫の顔だって楽しみだわ!」

孫か……こんなタイミングで思い出してしまった……

前世では両親より先に死んだ親不孝な私……孫の顔を見せてやることもできなかった……

だからせめて……今生では……

「旅の予定次第ですが、まずは山岳地帯。次に東のヒイズルに行きます。もしかしたらそこから東に行くかも知れません。東の大国メリケイン連合国に。そして南の大陸ですね。西の大国には行かない気がします。合間合間に時々帰ってくる予定ではあります。」

「カースは気紛れだから。行ってくるわね。」

「行ってこい! 元気でな!」

「行ってらっしゃい。無事に帰ってくるのよ!」

さあ、まずは王都だ。

アレク、コーちゃん。行こうか!