軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

373、サヌミチアニの酒場

サヌミチアニの街は……ほうほう。生意気なことにクタナツより都会じゃないか。でも現在クタナツは好景気真っ最中だからな。すぐに追い抜くさ。くそう。

「こっちだよ。」

さすがに副組合長は詳しいようだ。

歩くこと二十分。路地裏に入り込んだ。ここにはスラムがまだあるのか。まさか闇ギルドが生き残ってたりしないよな?

「着いたよ。」

「こ、ここっすか!?」

「ええー副長ぉー、こんな所にお店があるんですかぁー?」

「ちょっと怖いよね。まあ副長がいれば大丈夫ですよね。」

見た目は汚い店だが……領都でもギルド近くの焼肉屋の例もあるからな。まあいいだろう。

内装は、何だここ……どう見ても場末の酒場じゃないか。

「おおー? 見かけん奴らが来たぜぇ?」

「若ぇなぁ? 二十歳ぐれぇか?」

「けっけっけぇ旨そうな女もいるぜぇ」

「げへへへぇ、ここがどんな店か分かってんのかぁ?」

うわぁ……汚い奴らの吹き溜りかよ。まあいいや。酒でも飲むか。

「よう店長。ディノ・スペチアーレあるか?」

「ねーよ!」

ないのかよ。品揃え悪いな。

「じゃあ自慢の酒は何があるんだ?」

「うるせぇな! エールでも飲んでろ!」

うーん態度の悪い店長ってのは場末の酒場あるあるかな?

「ぎゃーっはっはっは! このガキ! 頭おかしいぜ!」

「ひぃーっひっひっ! スペチアーレだってよ! そんなもんここにあるわけねぇだろ!」

「お坊ちゃんか! お坊ちゃんなんかぁ!?」

「そんな酒飲んでみてぇぜぇ!」

うわぁマジで場末かよ。飲んだことないのか。可哀想に。だからって分けてやらんけどね。

「じゃあエールでいいや。全員に出してくれや。飲み放題でな。ほれ、そこの汚いお前らも。俺の奢りだからよ。好きに飲めや!」

「お、おい魔王! いいのかよ! こんな店でよ!」

インダルが心配してくれているのか。こいつって面倒見いいのかな。

「いいさ。お前も飲めよ。あっ! 副組合長! 領都のギルドの副組合長様もぜひ! 飲んでくださいよ!」

こいつは何のつもりでこんな店に連れてきたのかは知らんがね。チンピラの対応ぐらいお前がやれって話だぞ。まあいいや、私も飲もうかな。

「いただくよ。店長、僕はラガーがいい。」

「私も飲むから! 副長かんぱーい!」

「じゃあウチも飲むね。」

結局店中の人間が飲み始めた。なぜこんな店に連れて来やがったんだ? てっきりベイルリパースのようなクソ高い店に行くと思ったのに。

「おうガキぃ! おめぇいい金持ってんのかぁ!?」

「おおよぉ! あぶく銭掴んだんかぁ? 若けぇうちぁぱあっと使っちまえや!」

「んん? このガキいい服着てやがんぜぇ?」

「身ぐるみ剥いじまおうぜ!」

このオッさんども、酔い過ぎて調子に乗ってんな。『麻痺』そこで痺れてやがれ。せっかく奢ってやったのに。

「なあ副組合長。なんでこの店を選んだんだ? 客層は悪い、エールはどうにか二級品、まあツマミは悪くないがな。」

「別に。大した意味はないさ。ちょっと君と膝を交えて話してみたいと思っただけさ。」

「嘘つくなよ。それなら個室のあるもっといい店があるだろうが。本音を言えよ。」

どこまでも食えない奴だよな。さっき死にかけたくせにもう元気になってるし。

「別に。奢りだって言うから安く済ませてあげようと思っただけだよ。若いうちから浪費はよくないよ。」

「心にもないことをよく言えるな。おおかた荒くれ者への対処を教えるとか慣れさせるとか、そっち系だろ。」

「分かってるなら聞かなくていいのに。あの手のバカはどこにでもいるからね。叩きのめせばいいってものでもない。かといって下手に出ればいいってわけでもない。バランスが大事なんだよ。」

ふーん。言ってることは間違ってない。

「副長飲んでますか!」

「副長私と飲みましょうよ!」

「魔王さんはウチと飲むよね!」

えらくにんじんちゃんが親しげだな。悪い気はしないが。

「にんじんちゃんは何飲んでんの?」

「え? ウチのこと? ウチはスカーラだよ?」

いかん、つい心の声がもれてしまったか。

「いや、間違えた。スカーラだったな。飲んでるか?」

「うん。魔王さんは気前がいいね。しかも用は済んでるのに気を使って奢ってくれるなんて。優しいんだね。」

そう言われると嬉しくなるな。

「ほれほれ、もっと飲んでいいぞ。料理も食べな。」

副組合長はインダルやトマトちゃんと楽しく飲んでいるようだ。真っ昼間からいい気なもんだぜ。私も飲むけどさ。

「ねーえ魔王さん。ウチと氷の女神さん、どっちがきれいかね?」

「そりゃ、もちろんアレクだよ。そんな当たり前のこと聞かれても困るぞ。」

「魔王さんってつまんないねー。こんな時は嘘でもウチって言うもんだよねー。」

「嘘がつけないタチなんでな。まあ同期なんだ。困ったことがあったら言ってくれ。聞くだけ聞いてやらんこともない。」

こいつらの冒険者歴は私より長いのだろうか。私はもう五年を超える中堅だぞ。相変わらず解体は上手くないけどね。フェルナンド先生に叱られてしまうな。

「そうそうカース君。ちょうどいいから話しておくよ。僕と君の関係についてね。」

「はあ? 俺らの関係?」

何言ってんだこいつ?