軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

356、アレクサンドリーネのドレス

男爵邸では何事もなくのんびりと過ごすことができた。

昼は軽く狩りをして、夜は男爵と杯を交わす。男爵の酒造りを手伝うことは一切なかった。思うに秘伝か何かがあるから部外者に見せるわけにはいかないのだろう。酒造りには少しの妥協もしない男爵らしいこだわりではないだろうか。

そしてケルニャの日の昼食。

「はぁ……もう帰ってしまわれるのですよね……」

そんなに悲しそうな顔をしないでくれよ。細い体がますます小さく見えるぞ。

「ええ、ケルニャの日ですからね。もちろんまた来ますとも。」

「絶対ですよ! 絶対来てくださいよ! 遅くとも春には来てください! 春に飲み頃の酒があるのですから!」

「それはいいですね。私の伴侶がこの春に魔法学校を卒業するのですが、それから二人で旅に出ることになってます。その前にぜひ立ち寄らせてください。」

「北に向かわれるのでしたね。エルフの酒造り……興味が尽きませんな。では、ぜひとも出発前にお立ち寄りくださいね!」

「ええ、必ず。」

ここまで言われると普通はキモいはずだが、少しも嫌な気がしない。むしろ楽しみだ。絶対来よう、アレクを連れて。

「そうそう、年末に王都に行かれるんでしたね。これをセンクウ親方にお渡しいただけないですか? 新酒ではありませんが、親方のご意見が気になりまして。」

「いいですよ。感想などを手紙にでも書いてもらいましょう。私が聞いても分からないと思いますので。」

「お手数をおかけしますな。これが親方の分、こちらがカース殿の分です。カース殿のご意見も楽しみにしておりますぞ。」

「おお、これはありがたい。ついでなのにありがとうございます。王都には母の実家がありますので、そこでも意見を聞いておきますね。私も飲むのが楽しみです。」

もうすっかり酒を我慢しなくなってしまったな。もう少しだけ背が伸びて欲しいんだがな。現在百七十三センチぐらいだからな。百八十は無理かも知れないが……

「マギトレントで仕込んだ酒が飲めるのは早くても数年先ですからな。カース殿が旅から帰って来られた時にちょうど良いかも知れませんな。私も楽しみですよ。」

「それはいいですね。十年も帰って来ないってことはないと思うんですよ。遅くとも五年ぐらいで帰って来る予定ではあります。では、春頃またお邪魔しますね。」

「お待ちしておりますぞ。カース殿、コーネリアス殿、カムイ殿。みなさんお元気で。」

「ええ。男爵もセリグロウさんもお元気で。」

春頃か。いつかこの周辺に別荘を作ってもいいかも知れないな。

さあ、領都に帰ろう。今週末はアレクの成人祝いだからな。アレクには何も伝えてないが、問題はない。先週はあんなことがあったからこそ盛大に盛り上げたいものだ。

領都に到着。まずは高級服飾店ベイツメントに行こう。アレクのドレスを出来てる分だけ受け取るのだ。

「いらっしゃいませマーティン様。いくつか仕上がってございます」

おお、話が早い。

「こんにちは。見せてもらえますか。」

「かしこまりました。まずはドレスが二着ほど、どちらもマギシルクを使用しております。こちらがルーブ・ル・ラングレーズでございます。それからこちらがルーブ・ラ・ポロネーズでございます。」

と言われてもさっぱり分からない。ただどちらも注文通り胸元は広く開いておりスリットも深めだ。貴族らしくないが気にすることはない。アレクが着ればそれがスタンダードになるのだから。ラングレーズの方が深い青、ポロネーズの方がピンクに近い赤だ。

残りはもう二着か。そっちも楽しみだな。

「いい感じですね。では次をお願いします。」

「ドレス以外ですと、こちらでございます」

おっ、こっちは全部できてるな。シルキーブラックモスのチューブトップにキャミソール。それからワイバーンのミニスカートだ。

「素晴らしい。いい仕事をしてますね。」

「恐縮でございます。これで以上でございます。下着の方はケイダスコットンの仕入れに手間取っておりますので、今しばらくお待ちいただくことになるかと存じます」

南の大陸産だもんな。それは仕方ないだろう。

「構いません。ではいただいていきます。」

自分用に注文したパンツ、靴下、Tシャツもまだってことだな。急ぐものではないからのんびりと待とうではないか。

「またのお越しをお待ちしております」

さて、アレクには明日どっちを着てもらおうかな。パーティー会場すら決まってないのだが。やはり我が家かな。辺境伯邸のダンスホールには及ばないがそれなりに広いからな。大勢来るかどうかも分からないし。まずはダミアンに相談だ。イベントならやはりダミアンだよな。宴会部長だな。

さて、ダミアンの奴はどこに居やがるのかな?

我が家……いない。リリスによると昼前にラグナと出かけたそうだ。

そうなると、ダミネイト一家の所だろうか? それとも自宅か……

よし、ダミネイト一家を訪ねてみよう。居なかったら放課後まで手本引きでもやってればいいや。