軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08 最低評判令嬢始動

「あの事件の裏にアラベラがいたなんて驚きましたわ……ってちょっとマージョリー、笑い過ぎですわよ?」

「ふふふふふ…ご、ごめんなさいアラベラ。笑い事じゃないんだけど、その時の光景を想像したら、つい。

じゃあ、アラベラが植物魔法に造詣が深いのは、もしかして」

「はい、植物研究にかこつけて植物に集まる虫を観察するためです……クリストファー様には植物魔法なんて随分地味な魔法に興味を持つものだと呆れられましたけど、植物と虫は切っても切れない関係ですし、その繋がりを知ることが農業の発展や医薬品開発に役立ったりもするんです。

……あ、そうでした。私もうクリストファー様に何を言われるかなんて考えなくていいんでした……」

「その意気です!いいですね、そう考えると気が楽になりますわ」

「これで出揃いましたね。じゃあやってしまいましょうか、やりたかったこと、全部。

折角だから自分のじゃない『やりたいこと』も皆で一緒にやりませんか?

私、お話を聞いていて、現場に出ることやシックス石畳、虫にも俄然興味がわいてきましたもの。

そりゃ、やってみたら苦手だったり上手くできないこともあるかもしれませんけど、最初から無理だと決めつけてしまわずに、できることから4人で始めてみません?」

※※※※※※※

話に熱が入り、いつの間にか立ち上がっていた4人は、流石に喉が渇いてメイドにお茶を入れ直して貰った。

紅茶の香りで気を落ち着けていると、しばらくしてヘルガが考えを纏めるようにゆっくり口火を切った。

「一緒にやっていただけるのでしたら、是非助けていただきたいことがございますわ。

実は、この公爵領は今回の魔獣の被害が最も大きかった地域のひとつなんです。

聖女様の活躍で魔獣はいなくなりましたけど、荒らされた街や農地の復旧は各地の領主任せでしょう?

公爵家でも色々手を尽くしているんですけど、なかなか思うように進んでいないと父から聞いていまして……

ですから、『できることからやってみる』の第一歩として、領内の被害状況を自分の目で確認して、復興の手助けをできたらと考えたのですが…

…皆様、お力添えいただけるでしょうか?」

「勿論!手始めにはとてもいいと思いますわ。

図書室で無駄に培った私の知識がお役に立てるといいんですけど」

「復旧作業となると、体力も必要ですね。令嬢方でも無理なくできるグレイソン式体力づくりメニューをお教えしますから、並行して皆でやりましょう」

マージョリーとダイアナがすかさず答える。

「お二人ともありがとうございます。

それから、被害が一番大きかったのは養蜂が盛んな地域で…」

「えっ、養蜂!?本当ですか!!」

「ふふ、そちらはアラベラに助けて貰えそうですわね」

目の色が変わったアラベラを見て、ヘルガが笑顔になった。

※※※※※※※

数日後、ヘルガ達は魔獣の被害地域を訪れていた。

魔獣の被害は、話に聞くのと実際に自分の目で見るのとでは段違いだった。

踏み荒らされた農地や、橋が落ちて物流がままならない道路、親を失った子ども達の姿などを目の当たりにして、4人は言葉を失った。

だが、最低評判令嬢ともあろうものが、こんなことでいちいち尻込みするわけにはいかない。

あちこちを回って領民から聞き取った問題や要望を基に、ヘルガとマージョリーが中心になって徹夜で復興計画を練り上げ、王都にいる公爵に予算を申請する。

公爵家からは、令嬢考案の綿密な復興計画に感心する手紙とともに、ちょっぴり下方修正された予算案が返ってきた。

公爵のお墨付きを貰って動き始めた令嬢達の生活は一気に忙しくなった。

朝はダイアナ指導の下グレイソン式体力づくりに励み、昼は領内を回って時には自ら復旧作業に加わる。

夜は村で領民と一緒に食事をとりながら皆の意見を聞き、気のいいおばちゃん達と輪になって歌を歌う。

古い教会を臨時の孤児院にして、休みの日には子ども達から村に伝わる踊りを教えて貰い、養蜂場では養蜂家より饒舌なアラベラに励まされながらおっかなびっくり採蜜を手伝い………

最初はお嬢様方の気まぐれのお遊びと懐疑的だった村の人々も、令嬢達の周囲お構いなしの働きっぷりに次第に引き込まれ、徐々に彼女達に信頼を寄せるようになっていった。

もとより、ヘルガ達は悪評を覆したいわけではなく、ただただ自分がやりたいことを自由にやっているに過ぎない。

そのため彼女達は困難にぶつかっても実に楽しそうで、ワクワクしながら対案を話し合い、問題が解決すると手を取り合って喜んだ。

そのあまりにも開けっ放しな様子に、いつになったら元の暮らしが還ってくるのかと悩んでいた領民達も彼女達を見ているとつい笑顔になり、不安や不満もいつしか小さくなっていった。

そうして、3か月余りが経過した。