軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第一六一話 戦火を望む者

□■【皇玉座 エンペルスタンド】・玉座の間

皇都の中心に在る施設にして<イレギュラー>、【皇玉座 ドライフ・エンペルスタンド】。

今現在、その内に在る玉座の間では幾つものスクリーンが空中に投影されていた。

それは【皇玉座】の機能の一つであり、射程範囲にある情景を切り取って映し出すというものだ。

映し出されているものの多くは戦火に燃える皇都の映像……そこで戦う蘇った死者達。

しかし、それだけではない。彼方の王都の映像までもある。

これらの映像は、現在玉座に座る者が【皇玉座】に命じて映させたものだ。

さらに、スクリーンの一つではセットされたカウントダウンも進行している。

それは、王都に向けてこの【皇玉座】に搭載された兵器を撃ち込むまでの時間だ。

「一種のバグ……設計漏れだな」

玉座に座る者はその機能を…… 久方ぶりに使う(・・・・・・・) それを確認しながら、そう述べる。

「この玉座は新たな【機皇】となった者を自らの制御者として登録していく。しかし、前の人間を削除はしない。当然だ。【機皇】が移った時点で前任者は 死んでいる(・・・・・) のだから消す意味もない」

そして「ククッ」と短く笑い……。

「だからこそ、前任者が 蘇れば(・・・) このように使える人間が増えてしまう」

髪をかき上げ、偉大なる先人の設計漏れを笑う。

同時に、空中に投影されたコンソールを操作し、使用可能な人間から『クラウディア・L・ドライフ』を削除した。

「……、っ……」

その様子を、玉座に座る者を、ノブローム・ヴィゴマは腹部から血を流しながら見上げる。

「とはいえ、不思議なものだな。儂が登録したときよりもずっと 若い姿(・・・) だというのに、コイツは私が分かるらしい」

いま、玉座に座っているのは一人の青年だった。

癖一つない金の髪、シミ一つない麗しの肌。

まるで出来すぎた絵画や彫刻のように見る者の感情を揺さぶる美しさ。

されど目だけが違う。

あたかも地獄の淵を覗き込んでしまうかのように、見る者の恐怖を煽る。

その青年はどこかクラウディア……否、ラインハルトに似ていた。

(私が文官となったときよりも、なお若いが……この方は、間違いない)

その青年の正体が、かつて【死神】の下を離れてからの数十年を皇国に仕え続けたノブロームには理解できた。

「何をする御心算ですか―― ザナファルド(・・・・・・) 先代皇王陛下(・・・・・・) ?」

即ち、先代皇王にして先代【機皇】ザナファルド・ヴォルフガング・ドライフ。

既に老いと病によって死したはずの存在だ、と。

「その疑問はどちらについた? 儂が儂であることを問うならば不敬だぞ?」

ノブロームの問いかけに青年……ザナファルドは応える。

自分がザナファルドであるかどうかの誰何ならば当然すぎると鼻で笑う。

「……前者です」

「目的は二つだ。この【皇玉座】や<秘匿工廠>、それと動力炉といった設備の 回収(・・) 。王都への攻撃。ああ、そのついでに皇都の戦力を撫でることも儂が命じたので三つだな」

「なぜ……!?」

<秘匿工廠>などノブロームですら知らぬ単語もあったが、問題はそこではない。

先代皇王が、元特務兵が、何故蘇り、何故に自国を襲うのか、だ。

「なぜ皇都と王都を狙うかだと?」

ノブロームの血を吐くような……実際に血を吐きながら発せられた問いに、ザナファルドは目を細め……。

「 知らん(・・・) 」

あっさりと、そう述べた。

「…………は?」

「儂らもアレが何を考えているかは知らんさ。指示に従っているだけだ。ククッ、儂は唯の 現場指揮官(・・・・・) よ」

かつて一つの国を支配していた男は、何が面白いのか笑いながらそう言ってのけた。

その返答にノブロームは面食らうが……しかし同時に彼の頭脳は言葉の意味を思考する。

死んだはずの者達を蘇らせて、命令を下す存在がいる。

(【冥王】……ではない。思想的にも、能力の継続時間でも、彼ではない。ならば……)

「しかし、こんな指示が下された大方の予想はつくぞ」

「!」

ノブロームの思考を遮るように、ザナファルドは言う。

「【死神】、カルディナ議長、それと今の管理者」

彼は指を三つ折りながら、この世界に生きる者とは違う立ち位置にある者共の名を挙げる。

「超越者共が誰も彼もこの戦争に夢中だから、アレも自分が集めた駒で 遊びたくなった(・・・・・・・) のだろうよ。『そろそろ混ぜろ』とな」

「は?」

ザナファルドは、いったい何を言っているのか。

「超越者の視座は我々とは違うが、中でもアレの目的は 遊ぶこと(・・・・) と 眺めること(・・・・・) だ。理由などあってないようなものよ」

「遊びで……皇都と、王都を?」

「皇都に関してはもう ダメだから(・・・・・) 使えるものを回収に来させたのだろうさ。しかし、王都に関しては【死神】が理由だぞ、< 親指(・・) >」

「!」

ノブローム自身がかつて仕え、今回【邪神】の殺害を願った【死神】。

その名を出され、自らの素性を言い当てられ、ノブロームの心拍数が変わる。

それでも表情は変えないまま、ザナファルドと相対し続ける。

「アレの対たる【死神】が【邪神】を殺して止めようとした。だから逆に儂等を使って【邪神】を 促進(・・) しようとしている。そんなところだろうさ」

「……何、ですと?」

それではまるで、彼の願いが今の状況を招いたようではないか。

「ああ、話していて気づいたぞ」

ノブロームの動揺を他所に、ザナファルドは今思いついたことを口にする。

「遺失している【超重砲弾】の在処、王都だな?」

「!?」

僅かに、ノブロームの表情が変わる。

ほんの僅かに目を見開いてしまった極小の変化。

しかし、ザナファルドは「やはりな」と得心する。

「【邪神】を殺すために持ち出したな?」

「……御存知ないかもしれませんが、【邪神】に<UBM>やモンスターの力は……」

「通じんな。<エンブリオ>も通じん。知っているが、誤魔化せると思うな」

ザナファルドは、地獄の淵のような不気味な視線でノブロームを睨む。

「【皇玉座】は<UBM>の一種、これの砲で撃ち出せば邪神の力で通じんだろう。だが……」

ザナファルドが人差し指をクルリと回せば、その意を汲んだように【皇玉座】が空中に新たなスクリーンを投影する。

映っているのは【四禁砲弾】の記録写真だ。

「―― 砲弾のみ(・・・・) を持ち出し、起爆させれば話は違う」

――その写真を前に、ザナファルドは断言する。

「砲弾自体は先々期文明の素材で作られた消費アイテムに過ぎん。管理者の手が加わる前の代物、【邪神】に対しても通じるだろう」

「…………」

ノブロームは肯定も否定もできない。

だが、それは事実だ。それこそが戦争前にクラウディアが管理者に問いかけた『【邪神】の殺し方』なのだから。

砲弾はそれのみでも運用可能。【グローリア】との戦いでザナファルド自身がそうした使用の許可を下している。

そして、かつてゼクスがただの消費アイテムの眠り薬をテレジアに使用して有効だった前例から、『殺せる可能性が高い』と判断された手口でもある。

そのやりとりも含め、クラウディアがノブロームに渡した命令書の一枚目と二枚目に書いてあった。

「戦争に勝ったときに【邪神】をどこかに連れ出して砲弾を起爆させる? あるいは……戦争の裏で既に【邪神】の 塒の下(・・・) にでも設置していたか?」

戦争に勝てば【邪神】の処刑として【邪神】のみに使い、負けたとしても王都ごと【邪神】を滅ぼす。

それが命令書の一枚目と二枚目だ。

二枚目が実行されたならば……王都は【邪神】諸共に巨大な クレーター(・・・・・) と化すだろう。

アルティミアらを国境の隔離施設に誘導する取り決めは、王都での【超重砲弾】の起爆に巻き込まないためだ。

誓約を違える咎でクラウディア自身が死ぬことになろうとも【邪神】抹殺を実行する……それがクラウディアの最終解決法である。

「それが分かっているのならば、王都に【四禁砲弾】を撃ち込むなど中止していただきたい……!」

「そうだな。同じ砲弾でも【皇玉座】を使ってしまえば【邪神】は異物を弾く力で生き残り、王都のみ滅び、膨大な死者のリソースで【邪神】が覚醒するかもしれん」

ノブロームの言葉にザナファルドは頷き……。

「だが先も言ったようにアレの今回の目的の一つは【邪神】の促進だ。今の儂はそれを止める立場にはない。所詮は 小間使い(パシリ) よ。文句があるなら儂を駒とするアレに言え」

笑いながら首を振った。

「……!」

「しかし、このままいけば【邪神】を覚醒させたい連中は大喜びか。< 終幕(エンディング) >を迎えるための 説明書(・・・) が< 終焉(ゲームオーバー) >を望む時点で度し難いな」

何がおかしいのか、ザナファルドはクツクツと笑う。

「…………」

彼の語りを聞いていたノブロームの思考に、疑問が過ぎる。

この人物は、あまりにも知り過ぎてはいないか、と。

ノブロームは【邪神】やこの世界の事情……特殊超級職も含めたジョブが生まれた事情もある程度は知っている。

それは、自らの今の主たる皇王……クラウディアが残した命令書を読んだからだ。

ハイエンドたる彼女だから知るこの世界の情報も、すべきことも、伝えられた。

だが、そうではないはずのザナファルドが、あまりにもそれらの事情に詳しすぎる。

彼を蘇らせた存在から聞いたのか、そうでなければ……。

「しかしな、<親指>。最も度し難いのは クラウディア(今のハイエンド) だぞ」

またも、思考を遮るようにザナファルドは声を発する。

しかしその声にはこれまでと違う……明確な苛立ちが含まれていた。

「なぜ……?」

「何故と言うかよ。なら聞くが、地下に仕掛けたのは噂の講和会議に合わせた襲撃のタイミングだろう?」

ザナファルドの推測は正しい。

王都の水の異変を起こした装置と同様、講和会議に乗じた王都襲撃のときに地下水脈に溶け込んだゼタが【超重砲弾】を組み込んだ装置も地下に設定している。

それ以来、王都の地下には王都を消し飛ばすだけの兵器が眠っていたのだ。

「その時点では確証がないので置くだけに留めたのは分かる。だが、なぜ『やれる』と判断した後も実行しなかった?」

「……そんなことをすれば王都の民も犠牲になります」

その中には、クラウディアが護りたいアルティミアも含まれていただろう。

そうでなくとも、最速よりは最善を選び、ブレーキは掛けていた。

「戦争に勝てば、【邪神】のみを滅ぼせ……」

「手緩い。不意打ちでやれば確実に【邪神】をやれただろう」

だが、ザナファルドはそれを甘さと断ずる。

それも、一つの事実ではある。

クラウディアが戦争を待たずに実行していれば、今頃王都はクレーターとなり、【邪神】たるテレジアも死んでいた。

しかし、そうはなっていない。

「奴は甘い。ブレている。目先の全てに囚われる。【邪神】の排除、恋慕した相手の命、皇国の存続、全て、全て下らん」

吐き捨てるようにザナファルドは言う。

「あれもこれも手を付けて何も果たせず、挙句にハイエンドたる者の本分を投げ捨てている。敗北条件の回避と 勝利条件(・・・・) の達成を混同しているのではな。……全く、見下げ果てた奴だ。何より、そんな奴以外に委ねる相手がいなかった我が血が恨めしい。これではアレが儂等を回収に走らせても文句など言えんよ」

ザナファルドはハッキリとした嫌悪感をクラウディアに向けていた。

それは祖父が孫娘に向けるべきものではない。

二人の関係を考えれば、ザナファルドが酷に見える。

「…………」

だが、ノブロームの目にはどこか違うように見えた。

ザナファルドの言動は親族に向けるものではなく、どこか…… 不出来な後輩(・・・・・・) に向けるものに思えた。

「血で血を洗う内戦を経れば甘さも消えるかと思ったが……まるで消えていない。《 ロードマップ(【機皇】の奥義) 》の使い道も含めて……甘すぎる。 寿命を削って(・・・・・・) 作るモノがアレではな」

「……お言葉ですが、陛下は貴方よりも立派に皇王を務められました」

ザナファルドのクラウディアへの罵倒を、ノブロームは黙して聞き続けることはできなかった。

飢餓と貴族と内乱によって傾いたこの国を、辛うじて維持してきたのは自分の主君。

それを原因となった男に罵倒されることは、我慢ならなかった。

「戦力のみを溜め込み、他者を蔑ろにし、皇族や貴族の間の不和を煽り、この国を腐らせた貴方にだけは……陛下を悪し様に言われたくはありません」

先代皇王……否、侵略者と化したザナファルドに殺されるとしても、クラウディアの忠臣として言わねばならぬことはある。

その怒りの中には、ザナファルドの意向によって本当の親から離された同僚……ギフテッドのことも含まれていただろう。

皇国の諸問題の根源は、眼前のザナファルドなのだから。

「 それだ(・・・) 、<親指>」

だが、ザナファルドはノブロームを殺さず、ただ指をさす。

「それ?」

「<親指>、儂が何を考えて皇国を治めていたと思う?」

「…………」

皇国内部の不和と飢餓に有効な手を打たぬまま、特務兵などの特記戦力を集め、ここでの言動によれば<秘匿工廠>なるノブローム達も知らぬ研究開発機関も用意していた。

目先の軍事力だけを求めた……あまりにも不安定な軍国主義だ。

他国を侵略して攻め落とす戦力を集めて、後の支配を目論んでいたのだとしても、こんなに不安定なものは何をどうしてもいずれは内戦に発展していただろう。

まともな国家運営ではない。狂人の国家運営だ。

(……まさか)

しかし、ノブロームは、かつて“謀殺”と呼ばれた男は『まさか』と思いながらも辿り着く。

その 不安定さ(・・・・) こそが望みだったのではないかと

「<親指>。儂はな、【覇王】のようになりたかったのだ」

ノブロームに対し、ザナファルドはそう述べる。

それは、ノブロームの推測とはズレたものだった。

むしろ俗っぽく、一般的に思われるザナファルドという野心家のイメージに近い。

「かの伝説の超級職を得たかったと? それとも大陸半分の支配を?」

「少し違うな。個人武力では及ぶべくもない。儂はあれほど戦闘に特化はできん。ゆえに国の力を高め、総合力で皇国をかのアドラスターに並ばせようとした」

ザナファルドは笑いながらそう言って――不意に笑みを消した。

「そうして――この世界を戦乱で埋め尽くしたかったのよ」

「!?」

「なぁ、<親指>。人類がこれまでで最も<終幕>に近づいたのはいつだ?」

<終幕>。 人類(ティアン) 未踏の到達点。

この世界の……ティアンの生まれた理由。新たな無限職の誕生実験。

その座にティアンが最も近づいた時代、それは……。

「 三強時代(・・・・) だ。大陸を二分する戦乱が、この世界を生まれた意味に届かせかけた」

【覇王】と先々代【龍帝】。

ティアンの歴史上、最強の二人。

先々期文明の兵器よりも強かった人間達。

彼らこそ……否、【覇王】こそ無限職に最も近かったのだとザナファルドは言う。

「しかし、あの時代でも届かなかった。ならば、あの時代よりも更に戦火を大きくする必要があるだろう?」

「――――」

そこまで聞いてノブロームは理解し、先ほどの自分の推測が正しいと確信すると共に、背筋が冷たくなる。

ザナファルドの治世の目的。

それは、皇国という国そのものを…… 火種(・・) とすること。

この大陸の戦乱の切っ掛けとするために、不安定な政情で力を溜め続けた。

この国を始めとして、徐々に戦火が広がるように。

内戦も、侵略戦争も、起きるべくして起きた。

「皇国の内戦を世界の戦火の始まりとするつもりだった。優秀な者を集めたのも、国内に蠱毒を築いたのもそのためよ」

その結果、皇国が滅んでも構わないという風に。

「内戦で不安定化した国をまとめるために外敵を設定して攻めてもいい。不安定と見た他国に攻められてもいい。過去の所業が露見して関係が破綻してもいい。延焼のように国と国の関係が乱れ、戦乱が広がれば言うことはなかった。結果はいまだ この程度(・・・・) だがな」

この男が望んでいたのは自国の繁栄でもなければ敵対者の滅亡でもない。

戦争を、より大きな戦争を、この世界全てを焼く戦争そのものを望んでいた。

戦火の灰の中に、 無限職(ティアンの存在意義) が生まれると信じて。

その思想の現時点での結果が――今の王国と皇国の間の戦争だ。

かつての、そして今の戦争の全ては……この男の思想から始まった。

「しかし一つ問題があった。内戦は儂の死と遺言を引鉄に始まる。だが、それでは儂がその後の戦乱に関われない。無限職誕生の一助として働きたくとも叶わない。死を偽装することも難しい」

大陸を戦火に沈める準備を生涯続けてきた老人の、それゆえのジレンマ。

だが、それを解決する術はあった。

「ゆえに生前からアレと契約を交わしていたのよ。 死んだ後(・・・・) に関われるようにな」

「……!」

ノブロームには、<死神の親指>だった男にはそれが何なのか分かってしまった。

この世界で最も古き存在の一柱……【死神】の対たる<天国を騙る地獄>なるモノ。

生者を安らかなる死に送るのではなく、死者を現世に引き戻す存在。

永遠の生。天国の如き、奴隷の地獄。

しかし、ザナファルドは端から天国などと思ってはいないだろう。

この地獄のような目をした男は、相手が地獄と分かっていて契約したのだ。

アレ(・・) ……などと呼び続けるのは、むしろ敬意と感謝ゆえだろう。

ティアンや今の管理者がつけた俗称や仮称で呼ぶこと自体を避けている。

「儂は無限職を生む戦乱を巻き起こせるならば『駒』にでもなる。どうせ、アレの愉しみと儂の目的は似たようなものだからな」

「……正気、ですかな?」

「正気、正気か。【死神】の<親指>をやっていた奴には言われたくないな。とはいえ、別に 正気でなくて構わん(・・・・・・・・・) 」

それはある種の悟りだ。

自分の生前も死後の安寧も焚べて、一つの目的に邁進する。

其処に一切の迷いがない。

「それにしても、あの内戦は儂が集めた戦力も大勢死んだな。……蘇り、結果を知ったときは失望したとも」

失望。

それは自分の集めた特務兵が死んだことに対して、ではない。

「あの愚か者は想定以上に人望がなかった。まさか特務兵から下ったのが一人だけ。他も奴に懸想していたカーティスすら手駒にできていないとはな……ハァ」

心底呆れたように、ザナファルドは溜息を吐く。

内戦の中で優れた者同士を殺し合わせ、戦いの果てにより強力な者を生み出し、その後の戦乱も含めて無限職到達の可能性を上げる心算だった。

だが、結果は余りにも偏りが酷すぎた上に、望んだレベルも下回った。

「しかし、死んだ者にも意味はある。まだ未練がある連中や儂に忠義を抱く連中は儂同様に『駒』になった。<霊廟>での修練で生前より強くなった者も多い」

ノブロームは悟る。

今も皇都を襲い、そして無言で周囲に侍っている特務兵はそうした者達なのだ、と。

「『駒』の難点は器が複製品であることだな。 経験値(リソース) は入るので強くはなり、技術も磨けるが、恐らく無限職には至れまい。残念だが……まあいい」

周囲の、そしてスクリーンの中の特務兵達を見ながら、ザナファルドは言う。

「『駒』である儂等の起こす戦乱の中で芽吹く者が出ればそれでいい」

戦火の中で死んでいく自国民を見ながら、ザナファルドは言う。

「全人類戦争を以て一人の無限職を生み出し、世界の本懐を果たす」

遥かな世界と近き未来を見据えて、ザナファルドは言う。

「生前も今も、儂が願うはそれ一つ。

貴様らが願うべきもそれ一つ。

無限職を生み出せなければ…… 儂等(ティアン) に存在意義などないのだから」

その目には死してなお火勢衰えぬ炎が……この世界を焼き尽くさんばかりに燃えている。

To be continued