軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第一一五話 魂の咆哮 前編

■二〇四五年一月下旬・皇都某所

その日、皇都の工房街の一角……一人の準<超級>が根城とする廃工房にヘルダインは踏み込んだ。

そして工房の奥にて目的の人物が 螺旋衝角(ドリル) を整備している姿を見つけた。

「バルサミナ」

『……あぁ? なんだ、 軍人モドキ(ヘルダイン) か。相変わらず窮屈なツラァしてやがるな。バイザーで上半分見えなくても丸分かりだぜ』

そんな皮肉を返す準<超級>――【機甲王】バルサミナだが、その顔はフルフェイスの金属装甲でヘルダインよりも余程隠されている。

だが、ヘルダインは気に留めない。

そんなことよりも、問わねばならないことがあるからだ。

『で、何の用だ? 金を貸せとかいう話なら有り金はたいた後なんで無理だぜ?』

「毛頭頼むつもりもない。……だが、聞かせろ。お前の金は何に使った? 先の戦争での報奨金に加え、 例の件(・・・) でも大金を得たと聞いたが……」

『クク……それでここに来たのか 真面目野郎(ヘルダイン) 』

その応答で用件を察したのか、機械式甲冑は笑いつつも呆れたような仕草で首を振る。

だが、ヘルダインがバルサミナを訪ねた理由は笑い話ではない。

戦争が停戦とはいえ実質的には皇国の勝利に終わった直後に入った、一つの凶報。

それは皇国内での争い。先の戦争勝利の立役者であるフランクリンを……バルサミナが突如として PKした(・・・・) のである。

それも、決闘や果し合いですらない闇討ちだ。

「なぜ、あんな真似を?」

『依頼があったからに決まってんだろ。既得権益のシェアを持っていかれるのにビビったティアン連中の逆恨み……意味もねえ示威行為さ。ケケケ……、連中、まーだ<マスター>の 命の軽さ(・・・・) を分かってねえ。<マスター>がこっちで死ぬことなんざ、指一本分の脅しにもなりゃしねえってのによぉ!』

何がおかしかったのか、バルサミナは腹を抱えて笑い出す。

機械式甲冑のスピーカーを通された合成音声の笑いは、ひどく耳障りだ。

「……実行犯のお前がそれを言うのか?」

『金は貰ったからな。で? どーせお前のことだから「不和の種を作るな」なんてクソ説教に来たんだろう? この通り、聞く耳はねぇぞ』

カンカンと、機械式甲冑のツルリとした側頭部を叩きながらバルサミナが皮肉を述べる。

「……最初はそのつもりだったが、他にも聞き捨てならない話を聞いた。改めて聞くが、何に有り金を使った?」

『アァ。工房に予算青天井でパワードスーツを発注してやったのさ。まだ、前金だけなんで、出来上がる前にまた稼がねえとな。ケケケ……』

バルサミナはまたも不快な笑いを零す。

『『テメエらにできる最高の品を作りな』とは言ったが、<マスター>のいねえ旧式工房でどの程度のモンができるか……お楽しみだぜ』

お手並み拝見というよりは、『笑ってやろう』という意図が見て取れる。

だが、その発注自体がヘルダインには疑問だった。

「なぜ、そんなことを? お前は既に特典武具の機体を持っているだろう」

バルサミナはいま装着している 普段着(・・・) 以外に、戦闘の切り札たる特典武具の機械式甲冑も所有している。

わざわざ大金を掛けて新たな機体を注文する必要があるのか疑問だった。

『特典武具が絶対に生産品に勝るとは限らねえだろ? 煌玉馬や煌玉蟲、俺のコイツみたいな例もあるしよぉ』

ヘルダインが来るまで整備していた螺旋衝角を掲げて見せる。

バルサミナの愛用品であり、三代目フラグマンの作品の一つという触れ込みだった。

『……だがまぁ、そもそもこいつはただの 下調べ(・・・) だ』

「下調べ?」

『 この国(・・・) の最高級品がどの程度のモンかを調べるために、依頼したのさ』

その言葉に込められた意図。

ここに来る前に耳にした 噂(・) を思い、ヘルダインはバイザーの奥で目を細める。

「……その口振り」

『ああ、スカウトが 二口(・・) 来てんだよ。で、今回のオーダーはどっちに乗るかを見定める前の比較用だ』

バルサミナは事も無げに、『これから 皇国を裏切る(・・・・・・) 』と告げた。

『 条件(・・) が良いところと 技術(・・) が良いところがあってな。ひとまず皇国の最高品質を基準に考えることにしたのさ。誰が俺の ヘリオス(核融合炉) に最高値をつけられるのか、ってな』

そう言って、機械式甲冑の手指は胸に輝く<エンブリオ>を指した。

「この国を去るつもりなのだな」

ヘルダインの、声の温度が下がる。

皇国を護るために戦うヘルダインにとっては、挑発にも等しい発言だったからだ。

だが、バルサミナは気にも留めない。

『そうなるんじゃねえか? あの戦争でこの国が ダメ(・・) なのは十二分に分かったしよぉ』

「……皇国は勝利したぞ」

『あんなもん 国の勝ち(・・・・) じゃねえだろ 軍人モドキ(ヘルダイン) 』

バルサミナは、その視覚センサー越しの視線でヘルダインを睨みつける。

『第一次騎鋼戦争なんて格式ばった言い方されちゃいるが、<超級>頼りのゴリ押しだ。挙句、その戦争自体がカルディナに横槍かまされてんだぜ? これで勝利だなんてとてもとても……言えねえさ。……そもそも勝ったところで何が変わった? 多少領土を削ったくらいじゃねえか。死に掛けた国が息を吹き返す程でもねえ』

悲観的なのか、現実的なのか、バルサミナは冷たい評価を下す。

『皇国はあの戦争に勝利しておらず、戦った意味などない』、と。

『この国は既に致命傷食らった半死人。その出血と<超級>の暴力で他の国を汚すのが関の山。二度目の戦争もそうなるだろうよ』

「…………」

国自体を愚弄する発言に、ヘルダインがバイザーの奥で何かを堪えるように目を瞑る。

だが、否定の言葉は吐けなかった。

『先々期文明の継承者名乗ってるくせに、先々期文明を超えるもんは作れねえしな。 皇国最大の兵器(【エンペルスタンド】) だって先々期文明のお下がりだ。あの白衣が技術革新するまで何百年止まってんだよ? おまけにようやく出てきた技術革新の旗手に対し、技術者が出る杭を打つ始末だ。雇われた俺でも引くし、呆れたよ』

皇国の状況も太陽の如く俯瞰し、既に見切りをつけていた。

金のために仕事をしながら、しかしその仕事ゆえにこの国への評価を下げてもいる。

「……それで、行き先は カルディナ(・・・・・) か? それとも グランバロア(・・・・・・) か?」

ヘルダインはバルサミナの言葉から、彼をスカウトした相手に目星をつけていた。

カルディナは他国の技術が流入する国家であり、中には技術系の<マスター>も多い。

近年、ドライフの切り札たる【エンペルスタンド】に匹敵する移動要塞を建造したという噂もある第二の技術国家だ。

グランバロアは船舶に限った技術だが、皇国を上回っている。海洋という人類が生きるには厳しい世界での生存競争を勝ち抜くために協力して技術を磨き続けた国。

先のバルサミナの物言いからすれば、この二国が候補に挙がる。

『半分当たりだが、もう片方は 国(・) じゃねえ』

「何?」

『ま、そこはどうでもいい話だ』

バルサミナは『そんなことより……』と言葉を切る。

『お前の方こそ、 皇国(ここ) に見切りをつけねえのか?』

「…………」

『真面目な 軍人モドキ(お前) のことだ。内戦の時点で国に不信感持ってんだろ? 挙句に他国との戦争までおっ始まってんだしよ』

「…………」

『あのときはタイミング良く……悪く? 【 餓竜(トチ狂った蜥蜴) 】の騒動があったからそっちに忙殺されて関わりもしなかったが、ぶっちゃけお前だって引いたんじゃねえか?』

「……この国の政権には、思うところがある」

それは戦争に至った今代に限らず、貴族の力が強く……飢餓の国で民からの搾取を強めていた先代の時代でも同様だ。

権力闘争によって国を二分して争い始めたことも含め……不満はある。

(民への施しを考えれば、まだ今代の陛下の方がマシではあるが……)

しかし、その今代も外国との戦争に至った。

ヘルダインとしては、受け入れがたい部分も多い。

もしも今後、また何か民に苦渋を強いることがあれば……直談判も止む無しと考える。

それでも、今は従う。

なぜならば……。

「私が護るのは、この国の民だ」

『…………』

今の、そして未来の自分が何をすべきかを、ヘルダインは既に決めているからだ。

「私は、この国の『民』を守る。営みを、守っていく」

『王国や他の国にも似たような営みはあると思うがねぇ』

「……そうだろうとも」

そんなことは分かっている。

【餓竜】をはじめとしたモンスターとの戦いとは違うのだ。

正義の相手はまた別の正義などと使い古された言葉を使う気も起きない。

いっそ独り善がりとさえ言えるだろう。

だが……。

「だが……私の目に映ったのはこの国なんだ」

<Infinite Dendrogram>を世界と見做すメイデンの<マスター>として生き、触れ合ったのは皇国の民。

ゆえに、彼の天秤は皇国の民の安寧に傾いている。

「私は、リアルでは何の生き甲斐もなかった人間だ」

『…………』

「この世界に来て、たまたまクエストで人を助けたとき、向こうでは知らなかった心の動きが……達成感と生き甲斐ができた」

『つまり自己満足か?』

「……ああ、そうだ。結局は、自分がどう思うかでしかないのかもしれない」

バルサミナの皮肉に、しかしヘルダインは頷く。

結局は皇国の民を護るという名分と、自分の感情に従っていると認める。

それでも……。

「それでも私はこの国を選んで…… 選び続ける(・・・・・) 」

それでもヘルダインはその正しさを……『自分の中の正しさ』を貫く覚悟を決めている。

『ケケケ、そうかよ。イカレてやがるな』

ヘルダインの宣言を、バルサミナは機械式甲冑の覆われた顔で笑い……。

『選んだなら精々足掻きがやがれ、 軍人(ヘルダイン) 。その命が燃え尽きるまでな』

嘲笑うように……しかし自分と違う道を選んだ戦友に激励の言葉を贈った。

◇◆◇

□■カルチェラタン地方・山岳部

山中に、激しい激突音が響く。

その音の発生源は共に自らの姿をスーツで覆った男達。

片や東洋の、片や西洋の……別の文化圏の 英雄(ヒーロー) に酷似した姿で、男達はぶつかり合う。

西洋の英雄に似たヘルダインの機械式甲冑は東洋の英雄に似たライザーよりも一回り大きいが……しかし戦いでは押されている。

こちらの時間で半年ほど前とはいえ皇国の技師達の最高傑作とも言える機体だが、ライザー相手には防戦一方だ。

(私が機械式甲冑強化のスキルを持ち合わせていないとしても、厳しいか。クランに提供された 最新の量産機(【マーシャルⅢ】) よりは高いステータスを持つが……素のスペックで決闘ランカーに勝てるほどではない)

【魔砲王】としての潤沢なMPによって問題なく稼動はしている。

だが、逆に言えば その程度(・・・・) だ。

(発揮できる限界値の問題か。この機体はオーダーメイド、ヘリオスによる膨大なエネルギー供給を前提としていたはずだが……。結局、皇国の技師では奴の<エンブリオ>の余力を使い切るほどの力を持たせられなかったということか……)

皇国を見限り、しかし離れる前にフランクリンのリスポーンキルによって退場したバルサミナ。彼は<マスター>でも指折りの魔力供給特化<エンブリオ>の所有者だ。

しかし、この【カピタン・ドライフ】は、それを活かしきる性能を持ってはいない。

(だとしても……今はこれでいい!)

クロスレンジにおける、彼我の戦力差は歴然。

それでもヘルダインは膝を折らない。

自分の役割を果たすために、機械で鎧われた身で抗い続ける。

『……ッ!』

『…………!』

ライザーの拳がヘルダインの脇腹に叩きこまれ、装甲に罅を入れる。

だが、ライザーは注意深くヘルダインの、周囲の動きへの集中を切らさない。

(何を警戒している? ……いや、当然か。本来後方火力支援を担う私が、まさか一人でこんなところにいるとは考えていない訳だ)

実際、先の戦争では<フルメタルウルヴス>のメンバーを前衛の壁役として、レオニードのツィクロンと共に後衛に徹していた。

だが、既にクランのメンバーは彼を遺して壊滅している。

この地に攻め込んだのも、僅か三人。

皇国が<ターミナル・クラウド>に攻め込んだ際の戦力と比べてもあまりにも少なく、王国側が『まだ他の戦力がいる』と考えるのも当然だ。

(だが、ここにいるのは私達だけだ)

片手の指にも足りない三人だけの決死隊。

それでも、率いるヘルダインの覚悟は揺らがない。

(私達だけで……私達の全てを燃やし尽くしてでも……獲らせてもらう!)

敗北濃厚な相手に、ヘルダインは向き合い続ける。

ライザーから放たれた攻撃の、二発に一発は回避できずに被弾する。

拳を左腕の装甲で受ければ、装甲を通してすら内にあるヘルダインの骨が軋む。

鎧は砕かれ、 命(HP) は削れ、伝わる衝撃は心を擦り、それでも彼は己を曲げず。

ただ、鋼の内側で、耐え忍ぶ。

(反撃よりも防御を優先している……? 狙いは……何だ?)

相対するライザーもまた、ヘルダインの異様な気迫に勘付く。

何を狙っているのかを思案し、

(……この状況そのもの?)

一つの答えを導き出す。

(今の位置取り……俺はヘルダインをフェンリルの射線に置くことで、奴の砲撃を封じた。しかし逆に、俺もヘルダインを突破してフェンリルを攻撃できない)

無論、<マスター>であるヘルダインを倒せばフェンリルも落ちる。

ゆえに危険を冒してヘルダインという壁の向こうに出て、射線に身を晒す必要はない。

だが、それはヘルダインが耐えている間は、フェンリルに手出しできないということでもある。

(俺を倒すことではなく、少しでも長くフェンリルを維持することを優先しているのか? 既に俺以外の迎撃要員は墜とされたが、それでもまだ砲台を残す意味があると?)

防戦一方のヘルダインに、ライザーは一つの理由を見出す。

それは恐らく、間違いではないのだろう。

だとしても、ライザーの戦いは変わらない。

相手が何かを待ち、狙っているならば……その前にヘルダインを倒して目論見を崩す。

だが、相手の狙いが、 されたくないこと(・・・・・・・・) が読めたからこそ打てる手もある。

『ハァッ!!』

ライザーは踵を大きく蹴り上げ、それをヘルダインの脳天から蹴り落とす。

モーションの大きい隙だらけの攻撃をヘルダインはステップバックで回避する。

だが、動作の大きさに比例した威力を持つ踵落としは大地を蹴立て、土煙を上げる。

『―― 疾(シ) ッ!』

――直後、土煙の中から姿勢を低くしたライザーが駆け出した。

ヘルダインをスルーして、フェンリルへと突き進む。

『何……!?』

『バカなことをッ!』

ヘルダインが驚愕し、フェンリルは即座に自身の砲門を迫るライザーへと向ける。

多少の目くらましがあろうと見逃すはずがない。

直後、人体も装甲も容易く噛み砕く砲火がライザーを襲い、跡形もなく消滅させる。

まるで霞のように、ライザーの身体は塵となり……。

『――《ライザーキック》!』

――ヘルダインが叫んだ瞬間に、消えたはずのライザーの蹴撃がヘルダインを襲った。

『……!? デコイ(・・・) 、だと!?』

ライザーの特典武具、【双星輪 アルマ・カルマ】の《スクリーン》。

土煙の中に身を屈めながらライザーと同じ姿の幻をフェンリルに向かわせ、相手の視線と注意が逸れたタイミングで僅かに跳び、自らの 攻撃スキル(飛び蹴り) を発動させた。

それまでのスキルのない攻撃とは桁の違うダメージが、 機械(【カピタン) 式(・) 甲冑(ドライフ】) に……そしてヘルダインに重大な傷を刻む。

『…………ッ!』

『マスター!?』

蹴撃は僅かに身を逸らしたヘルダインの左足を捉え、装甲ごと彼の肉体を貫いた。

金属装甲に覆われた足が、千切れて宙を舞う。

これでもう、ヘルダインは動けない。

『オォッ!』

そこに、ライザーが畳みかける。

先ほどまでの攻防の中で、少なくともここにはヘルダインの仲間はいないと判断し、最早警戒し躊躇う必要はないと決断した。

トドメを刺さんと迫るライザー。

その動きに対し、ヘルダインは――。

『――第六形態、榴弾装填、即時発射』

――フェンリルに 砲撃(・・) を命じた。

『……ぅ! イエッサー……!』

『何ッ……!?』

第六形態列車砲へと変じたフェルがヘルダイン目掛けて放ったのは、着弾地点一帯を吹き飛ばす榴弾。

広範囲を巻き込む爆発は接近しようとしていたライザーを後方へと吹き飛ばす。

『グッ……!』

だが、 敵(ライザー) を上回る損傷を 味方(ヘルダイン) に与えていた。

パワードスーツは半分以上が脱落し、生身の顔が露わになっている。肉体そのものも大差ない損傷だ。

装甲の強度でライザーに勝っていても限界に近いダメージであり、命を削るどころか致命傷一歩手前の自傷に陥っている。

しかし、その選択によって……ヘルダインは絶命の危機を逃れた。

『何のつもりで……!』

吹き飛ばされたライザーが、体勢を立て直す。

再接近されれば、同じ手段での防御は不可能。

ほんの僅かな時間を稼いだに過ぎない。

だが、その時間に、足掻きに……ヘルダインは賭けた。

そして……。

――轟音と共に<遺跡>のある山の一角が崩落した。

ボロボロになったヘルダインの目にも、その巨大な地形変化は見て取れた。

格納庫の天井、 ヘルダインのいる(・・・・・・・・) 山に面した一角(・・・・・・・) が崩れる。

そうして、外部から内部へと視線が通り、<砦>を護る者達の姿が晒され、

「――見えた」

――扶桑月夜は【 魔砲王(ヘルダイン) 】の視界にロックオンされた。

『ここから<砦>を撃つつもりか!?』

ライザーも、その事実をすぐに理解する。

《魔弾の射手》のホーミング性能を、彼は先の戦争で身をもって知っているのだから。

ここからでも容易に格納庫内部を狙い撃てるだろう、と。

(だが、結界外からの砲撃は……!)

扶桑月夜の《絶死結界》に阻まれる。

あれは結界外部からの攻撃に対しては無敵に近いと、ライザーも知っていた。

(―― 知らないようだな(・・・・・・・・) )

しかし、ライザーはある情報を知らなかった。

それが勝敗の境だと、ヘルダインは知っている。

「マスクド……ライザー」

血を吐きながら、ヘルダインは言葉を発する。

「私は、 お前に勝つため(・・・・・・・) にこの機体を纏った訳じゃない……」

『……ッ!』

「この 瞬間(とき) まで、私とフェルの 命を延ばすため(・・・・・・・) に纏ったのだ……!」

そして彼は、自らの胸に右手を押し当て――、

「《魔弾の射手》照準――《 魂の咆哮(ソウル・キャノン) 》、装填!!」

【魔砲王】の―― 最終奥義(・・・・) を起動した。

To be continued