軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八十四話 空を生業とする意味

□■<ターミナル・クラウド>周辺空域

空母と艦載機のように次々とカロンからレックレスシリーズとスーサイドシリーズが飛び立ち、魚群の如き一塊となって<ターミナル・クラウド>へと接近する。

多くが均一の姿をした怪物達を見上げながら、フォールは「あれが<叡智の三角>の商品……フランクリンの改造モンスターですか」と呟いた。

「現状、敵は数だけならばこちらの現飛行戦力の二〇倍以上。何とも圧巻ですね」

周囲を見れば、呆れるほどの物量差に慄いているメンバーの姿もある。

それらのほとんどは、フォールと一緒にクエストを受けたことがない者達だった。

「さて、懸念点はあそこにフランクリン自身がいるかどうかですね」

『その心配はないかなー。十中八九あそこにはいないよ』

「オーナー」

フォールの言葉に応えるように、耳元にケイデンスの声が聞こえた。

しかし、付近にケイデンスの姿はない。

声……空気の振動だけをフォールの傍に送り込んでいる。ケイデンス自身は『空耳』などと嘯いている代物だ。

『空の上じゃ彼の<超級エンブリオ>は展開できないし、講和会議で確認されたデカブツは【ジュエル】に納まらないだろうから。まぁ、キャサリンのところのメイドみたいに人化してサイズダウンできるなら話は変わるけど、そういうものでもなさそう。それに【ジュエル】の破壊による強制解放で展開していたからね。本人がいるならもうちょっと違うやり方がありそうじゃない?』

『空耳』越しのケイデンスの説明に、フォールは「なるほど」と頷く。

「納得しました」

『あと予定通りフォールの必殺は初手でいいから。後続には僕とリーフで当たるから他はここに全力で』

「後続?」

『ねぇ、知ってる~? 皇国の<LotJ>には飛行戦闘得意な準<超級>がいるんだってー。そんで向こうの見えてる乗り物、全部 モンスター(・・・・・) だから』

「……承知しました」

フォール自身も頭の巡りは良い方なので、ケイデンスの言わんとすることは理解できた。

いずれにしろ指示の通り、フォール達は迫る二〇〇〇体オーバーの敵航空戦力への対処に全力を尽くすのみ。

「戦闘飛行士、総員離陸準備。戦闘乗務員、総員迎撃準備」

フォールはメンバーに指示を飛ばしながら、左手の紋章を掲げる。

「私のスキル発動と同時に拠点より発進。半径一〇〇〇メートル空域を防衛ラインとして交戦を開始してください」

『『『 了解(ラジャー) 』』』

フォールの指示にメンバーらが応答した直後、周囲に強い風が吹く。

ケイデンスの嵐が突破された影響か、それとも数千の翼が飛翔することで気流に乱れでも生じたのか。

<ターミナル・クラウド>にも轟という音と風が吹き抜けて……。

『―― 資格なり(ス) 》』

――それに紛れるようにフォールの必殺スキルが宣言された。

瞬間、<ターミナル・クラウド>周辺の空気は眩い光に包まれる。

◇◆

敵拠点目掛けて飛行していた皇国の特別攻撃隊。

彼らの目を潰すように、拠点から強い光が発せられていた。

「閃光弾……いや、違う!」

風防を兼ねたゴーグルの遮光性能により、特別攻撃隊を率いるツィクロンの目は無事だった。

いや、彼のように光を阻む物を身に着けていなくとも、視界はすぐに回復するだろう。

彼らの目の眩みは、晴れた日に空を見上げるのと大差なかったからだ。

「 太陽(・・) ……!」

ツィクロンの言葉通り、<ターミナル・クラウド>の上に小さな太陽が浮かんでいた。

伝わる熱量は日差し程度であり、目を焼く光も同程度。

だが、高度二〇〇〇メテルという低空に存在するソレは本物の太陽ではありえず、まず間違いなく……何者かの<エンブリオ>である。

「デバフの兆候は!」

『ない! 状態異常は表示されていない! ステータス変動もない! 身体的不調も感じない、俺達の乗ってる従魔もだ!』

ツィクロンの呼びかけに、仲間達も応じる。

それは既知の例を想定した上では当然のやりとりだった。

陽光(昼) や 月光(夜) といった形をとる<エンブリオ>は何例か確認されている。

最も有名なものは扶桑月夜のカグヤであり、一部ではジュバのダジボーグも知られている。

それらは、空間全体にバフやデバフといった効果を作用させる性質がある。

<エンブリオ>の齎す昼や夜に身を置いた時点で、<エンブリオ>のスキルの対象になりえる。

今しがた展開されたこの太陽の空間も同様の代物だと、ツィクロン達は察した。

しかし、目に見えた影響がない。

そのことが逆に、疑心や躊躇いの源となる。

『どうする、ツィクロン!』

「作戦通り一気に距離を詰める!」

仲間からの呼びかけに、ツィクロンは突撃の継続を即断する。

元々、この作戦で最も警戒すべき存在は広域殲滅型の準<超級>として皇国でも名が知られたケイデンスだ。

彼に対し、数で攻める戦術は無謀とも言える。

だが、攻める場所が彼のクランの拠点であり、周囲に<ウェルキン・アライアンス>がいる状況が活路となる。

(ホールハイム女史のお陰で、五キロ程度の距離まで迫ることができた!)

まず光学迷彩やステルスを付与したカロンで可能な限り近づいた。

ケイデンスがとった防御手段が全周型の嵐であったことから、カロンの接近自体はそれまで察知されていなかったと判断できる。察知できていたならば、ピンポイントに最大火力を叩きつけているはずだからだ。

無論、ケイデンスという脅威は今もある。彼らだけ離れた距離で固まっていれば、ケイデンスの広域殲滅で一掃される。

相手は後衛の魔法超級職。時間を掛ければかけるほどに、魔法の威力も規模も精度も増していく。

ゆえに、そうされる前に敵陣までの距離を詰め、広域殲滅を行えば王国戦力を巻き込む状況に追い込み、使用を封じる。

味方を巻き込むリスク、加えて敵拠点に<宝>があるならばそれを破壊する恐れのある自爆同然の広域殲滅などできるわけがない。

(味方や拠点ごとこちらを殲滅する腹積もりなら、それでも構わない。戦力を大きく削ることはできる)

元より、スーサイドシリーズとレックレスシリーズ、そしてツィクロン達は相手を損耗させるための捨て駒。 本命(・・) で勝利するための布石に過ぎない。

ゆえに、あの太陽の<エンブリオ>がどれほど怪しくとも、近づく以外に選択肢はない。

(怪しい<エンブリオ>だ。しかし、俺達よりも王国勢があの太陽に近い。デバフではなく攻撃的な能力だとしたら、より被害を受けるのは王国勢のはずだ)

そうした判断材料からあの太陽はデバフや攻撃ではなく、味方へのバフ能力の類であるとツィクロンは推察している。

敵味方識別可能な広範囲攻撃だとしても、そこまでコントローラブルな能力であれば威力も察しがつく。<エンブリオ>のスキルは無差別無制御の方が強く、逆も然りだ。

『敵拠点への距離、あと二〇〇〇! 敵航空戦力との距離、一五〇〇!』

「ぶちかますぞ!」

仲間に指示を送りながら、ツィクロン自身も必殺スキルの発動準備に入る。

彼の装着したゴーグル――TYPE:アームズの<エンブリオ>が作動。

ゴーグルを通した視界の先にいる敵戦力、それらの全てにマルチロックオンのカーソルが重ねられる。

ツィクロンは同時に自らの所持するアイテムボックスを破壊し、無数の剣と槍をばら撒く。

本来は風と重力で散らばり落ちるはずのソレらは、ツィクロンの周囲に滞空し続ける。

それはあたかも発射の瞬間を待つ 噴進爆弾(ミサイル) のようで――。

「――《 喰らい尽くせ(レオ) 、 牙持つ流星(ニード) 》ォッ!!」

――正しくそのように射出された。

獅子座流星群(レオニード) の名を冠した<エンブリオ>によって速度と誘導性能を付与された武器群が、<ウェルキン・アライアンス>の航空戦力へと獣の如く殺到する。

「ッ!?」

先手を打つ 複数目標同時(マルチプル) 攻撃高速誘導弾(・ミサイル) 。

旋回性能で劣って着弾し、動きが鈍ったところを他の特別攻撃隊に仕留められた者がいる。

ドッグファイトの如く急上昇急旋回で回避しながらも、その逃げた先を狙い撃たれた者もいる。

それでも、<ウェルキン・アライアンス>の航空戦力の九割はその初手をクリアした。

直後には反撃の長距離攻撃が飛来し、スーサイドシリーズが五十体は削れる。

それはお手本のような中長距離空中戦。

視界の開ける空中戦の鉄則は、ファーストルック・ファーストキル。

ゆえに、空中戦を得手とする者の多くは長射程こそを武器とする。

だが、大軍での空中戦はそれだけでは決さない。

長射程戦闘だけでは戦力を削り切れず、距離が縮まれば攻撃の手は増える。

怪鳥の姿をしたスーサイドシリーズも自らの有効射程に達した時点で大きく口を開き、火球を敵軍と敵拠点に吐き出し始める。

戦闘に参加可能な戦力が増えるほど、ランチェスターの二次法則が適用されて数の優位が力となる。

ゆえに、スーサイドシリーズが刷り込まれた戦闘プログラムのままに<ターミナル・クラウド>へと近づくほど、両軍の損害の差は明確になるだろう。

そうして特別攻撃隊が拠点まで一〇〇〇と少しまで近づき、彼我戦力差が決定的となるタイミングがやってくる。

変化は、その直前に。

『――『ジャッジ』』

――空域に、特別攻撃隊が知らない男の声が流れる。

その声を警戒するよりも先に、特別攻撃隊を異常が襲う。

彼らがこの作戦で我が身を預けた急造の相棒。

空を翔けるレックレスシリーズと、僚機であるスーサイドシリーズ。

それらは一斉に――――大地への墜落を始めた。

◇◆

数秒前。迫る特別攻撃隊を見据えながら、<ターミナル・クラウド>に立つ 航空戦闘管制官(フォール) は自らの<エンブリオ>を見上げていた。

そして迫る敵軍へと右手を伸ばし、その手をサムズアップに変えて、

「――『ジャッジ』」

親指を下に向けて、宣言する。

彼のワンアクションをきっかけに、――墜落は始まった。

<ターミナル・クラウド>に迫る特別攻撃隊のほぼ全てが地上へと墜ちていく。

まるで、フォールの『地獄に落ちろ』というジェスチャーに従うかのように。

それこそが、彼の必殺スキルであるがゆえに。

【天空審判 イカロス】。

イカロスは蝋の翼で飛翔した人間の名であり、太陽に近づいた彼が地上へと失墜する物語の銘。

そしてフォールの<エンブリオ>は個人ではなく、物語こそをモチーフとしたものだ。

小さな太陽の姿をとるイカロスは世に知られた前例達同様、その光の及ぶ空間がスキルの対象。

具体的に言えば、イカロスを中心とした半径三〇〇〇メテルの球形範囲である。

固有スキルは範囲内の飛翔物体へのAGIバフとAGIデバフ。

通常はバフである《祝福の翼》とデバフである《失墜の翼》のどちらかを選択して発動するが、どちらにしても 無差別(・・・) だ。敵さえも強化し、味方だろうと弱体化させる。

それは必殺スキルも同様だ。

――《 翼は飛翔の(イ) 資格に非ず(カ) 、 天への畏敬(ロ) が資格なり(ス) 》。

このスキルはバフとデバフを無差別に、そしてより苛烈に付与する。

ただし、手順と効果が一つずつ、追加されている。

必殺スキルの宣言と共に、イカロスは範囲内の全飛行生物の 初期位置(・・・・) を記憶する。

そして必殺スキル宣言後、<マスター>であるフォールが『ジャッジ』の宣言を重ねて行うことで必殺スキルが完了する。

『ジャッジ』宣言時、初期位置から見てイカロスから 離れた者(・・・・) にはバフを与える。

一メテル離れるごとに、AGIに一のボーナスが一時間付与される。

最大で三〇〇〇近い上昇となるため、上級クラスでは強力なバフだ。

当然、近づく者にはその逆の結末が待つ。

初期位置から一メテル近づくごとに一のAGI低下。

最大でAGIが三〇〇〇低下。これも上級クラスの戦闘では無視できない。

しかし、空は純竜クラスの世界。

仮にAGIが三〇〇〇低下しても、まだ致命的と言えない生物は多数いる。

この空では絶対ではなく――ゆえにこのスキルの真の恐怖はステータス低下にはない。

この必殺スキルは、 ある条件(・・・・) を満たした者にのみ適用される付随効果が存在する。

対象は、必殺スキルの発動開始時から『ジャッジ』までの間に、一五〇〇メテル以上 近づいてしまった者(・・・・・・・・・) 。

彼らには、ある特殊状態異常が課される。

それは――【 飛行禁止(・・・・) 】。

翼が力を失い、飛行のためのスキルも、飛行の補助スキルも一切が機能しなくなる。

それでも地上ならば生きていけるかもしれない。

だが、此処は空。天空の戦場で翼を失ったならば。

墜ちるのみ。

◇◆

「!?」

ツィクロンは自らの乗騎であるレックレスシリーズの異常をすぐに察知した。

翼竜型は滑空するように翼を広げ、自ら風属性魔法を発生させて飛ぶ生物だった。

しかし、その揚力が消えている。

自らを浮かせるはずの空気と魔法が自らを避け、苦し紛れに翼を羽ばたかせてもいるが、翼が空気を捉える感触は無いようだった。

そして同様の異常は、特別攻撃隊の九割以上の個体で発生している。

最後尾の者達は速度が遅くなっただけで落ちてはいないが、それは少数だ。

「……!」

ツィクロンは咄嗟に乗っていた翼竜型を【ジュエル】に仕舞い、預けられていた【ジュエル】から予備のレックレスシリーズを出して乗り換える。

他の者達も彼同様に騎乗していたレックレスシリーズを【ジュエル】に仕舞うか、あるいは乗り捨て、乗り換えていた。

隙を突かれて討たれた者もいるが、<マスター>の被害は軽い。彼ら自身が飛翔していたわけではないためデバフの対象にもなっていない。

だが、<マスター>なき スーサイドシリーズ(飛行生物) は違う。

一心不乱に<ターミナル・クラウド>を目指していたスーサイドシリーズは、イカロスの必殺スキルの影響を最も顕著に受けていた。

ステータスは著しく低下し、【飛行禁止】を受け……なす術もなく地上へと落下していく。

二〇〇〇近くを数えた空戦用のスーサイドシリーズ。

その全てが空での生存を許されずに墜落死した。

この時点で、数だけを見れば九割以上の戦力損失である。

「クソっ!」

生き残った者達は半ばまで落とした高度を取り戻そうと、空を目指す。

空中戦において高度とは優位そのもの。

空から物を落とすだけでも、眼下の生物を殺傷しうる。

加えて、真下から敵拠点を破壊できるような火力の持ち主もここにはいない。

ツィクロン達は突撃と空中戦、揚陸を目的とした戦力なのだから。

「上がれェ!!」

レックレスシリーズは航空兵器として優秀であり、呼び出したばかりであっても乗り手のリクエストに応え、高度を上げていく。

降ってくるレックレスシリーズや敵の攻撃を回避しながらの急上昇。

それを果たしたツィクロンを含めた残存戦力の半数は元の高度へと帰還し、

「――《 雨樋は天地の狭間に(ガルグイユ) 》」

――もう半分は、 下(・) に取り残された。

「!?」

一瞬だった。

ただの一瞬で、<ターミナル・クラウド>の高度を境に 水面(・・) が生じている。

上から見ても、下から見ても、<ターミナル・クラウド>がまるで海上の孤島のように見える奇妙な光景。

特別攻撃隊は空中の水中という奇天烈な空間によって、上下に分断された。

突然の環境変化を回避できなかったのか、五、六体のレックレスシリーズが水面に呑まれてしまっている。

空に適応した純竜クラスの怪物達が、水の中で醜く藻掻いている。

「分断完了っすよー」

風景の変化に戸惑う者達と空中で水に溺れる者達、混乱する特別攻撃隊に気の抜けた声が降りかかる。

声の発生源は水面の数メテル上に浮上する一体の竜、その背に座る者だ。

「うちのガルグイユの滞空水域は粘性高いっすからねー。突き破るのも脱出するの手間取るっすよー」

声の主は<ウェルキン・アライアンス>の中核メンバー、スライド。

彼の跨るガーディアンの銘は、【一異帯水 ガルグイユ】。

雨樋の怪物像(ガーゴイル) のモデルになったとも伝う、水を吐く竜がモチーフである。

「ちなみにこの水、 通電性(・・・) もめっちゃイイんすわ」

にへらと笑って――【 金雷術師(ボルトマンサー) 】の掌に雷光が宿る。

「待っ……」

阻止する間も、あればこそ。

放られた電速の雷球は瞬時に水面を伝い、そこに囚われた生物を感電死させた。

「雷属性魔法って威力も速さもすげーんすけど、ターゲット絞るのがめっちゃ難しいっすよねー。狙ったところに当たらないとか味方に当たるとか。でもガルグイユの水で誘導すればよゆーのヒットっすね」

「てめえ!」

へらへらと笑いながら仲間を惨殺されたことに怒った<マスター>が、スライドへと迫る。

ツィクロン達のような長距離型ではなく、近接戦闘に秀でていた<マスター>は馬上槍の<エンブリオ>を構えながらスライドへと突撃し、

「――マヌケか?」

――空中で爆散した。

突撃した<マスター>の駆るレックレスシリーズ。その腹に矢が一本刺さった瞬間、その矢が爆裂して乗っていた<マスター>ごとレックレスシリーズを消し飛ばしたのである。

純竜クラスの強度を誇るはずのレックレスシリーズが、一撃で木っ端微塵。

「空中で直線軌道なんざ、褒められたものじゃねえ」

弓矢を放った者が立つのは、<ターミナル・クラウド>の上。

フォールの隣で弓矢を構え、さらに別の弓を背負った鷹のような目つきの男。

<ウェルキン・アライアンス>中核メンバー、【 疾風弓手(ゲイル・アーチャー) 】 七眼(ナナメ) 。

手にした弓はTYPE:アームズ、【上射下奪 アメノカゴユミ】。

日本神話において天の遣いを射殺した弓。

とあるリスクと引き換えに、『飛行生物に対してダメージ五十倍』の特攻を誇る対空の<エンブリオ>。

その照準は、既に次の獲物に定められていた。

◇◆

失墜、水面、対空射撃。

三種いずれも、空に適応した生物を殺すための仕組み。

そしてそれこそが……<ウェルキン・アライアンス>の 本質(・・) だ。

<ウェルキン・アライアンス>は空輸を生業とするクラン。

だが、飛ぶだけなら天竜でも従魔にすれば誰でもできる。

しかし彼ら以前に空輸で成功した者はいない。

空という世界はそれほどの魔境、強大な飛行生物の世界だからだ。

では、なぜ彼らは成功したのか。

そも、空輸とは人とモノを、空という路で無事に運ぶこと。

この空でそれを成し遂げるのに、生息するモンスターが危険だというのならば。

危害を加えられる前に、 殺せばいい(・・・・・) 。

ファーストルック・ファーストキル。それが空中戦の鉄則。

ゆえに彼らは――飛行生物の殺害に特化している。

彼らは空を 飛べるから(・・・・・) 成功したのではない。

空にいるモノを 殺戮できるから(・・・・・・・) 成功した。

それが<ウェルキン・アライアンス>というクランの正体である。

そんな彼らの巣喰う空中拠点を攻略することは、猟場に迷い出るに等しい。

<ウェルキン・アライアンス>の常套戦術に嵌り、戦力のほとんどを喪失したツィクロン達には<ターミナル・クラウド>を攻略する力はない。

――ツィクロン達には。

To be continued