軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十話 嫁入り話の裏側

□【煌騎兵】レイ・スターリング

ギデオンに帰還した翌朝。

久方ぶりにギデオンの宿屋の寝床にいた俺は、朝から打ち上げられている花火によって目を覚ました。

寝ぼけ頭で「今日は祭りか運動会でもあっただろうか?」と考え、「そういえば愛闘祭があったのだった」と思い出した。

それから、昨日のことと今日やらなければならないことを思い出し……。

「……行くか」

ベッドから起き上がり、身支度を整えて宿の部屋を出た。

宿を出て歩くこと数十分、訪れたのはギデオン伯爵邸……正確にはそれに併設された迎賓館だ。

伯爵邸にはこれまでにも何度か来たことがある。フランクリンの事件での褒賞を受け取っているし、何より併設されている騎士団の詰め所で手続きを何度かしている。

だが、この迎賓館にはまだ入ったことがなかった。

「来てはみたものの入れるのだろうか」と思いながら入り口に近づくと、案の定と言うべきか衛兵に槍を突き付けられた。

「な、何と恐ろしい風体……曲者!?」

「いや待つでござる! どう見ても悪漢だがこれは“不屈”のレイ殿でござる! 拙者の《看破》は最大レベルだから間違いないでござる!」

「おお、顔を良く見れば確かにレイ殿。申し訳ありません。殿下からも通行許可が出ています。どうぞお通りください」

そんな衛兵&忍者のやり取りを経て、俺は迎賓館の中に通された。館の中にいた近衛騎士が「殿下のお部屋にご案内します」と言って先導してくれる。

……しかし、今日はマスク着けてないしフードも被ってないのにこの対応か。

「許可ということは、アズ……殿下は今日俺が来ることが分かっていたみたいですね」

「はい。昨晩、エリザベート殿下が迎賓館を飛び出された後、グランドリア卿とギデオン忍軍からの報告でエリザベート殿下がレイ殿とお仲間の下に向かわれたと聞いたとき、きっと貴方が会いに来ると申されておりました」

……なるほど。もう把握されているわけだ。

そのまま三分ほど歩き、迎賓館の奥にある扉の前まで案内される。

「殿下! レイ殿がご到着です」

『入室を許可します』

アズライトの許可が下りると近衛騎士が扉を開き、俺に入室を促した。

促されるままに入室すると、そこには王都で見たように文机で仕事をするアズライトの姿があった。

「おはよう、アズライト」

「ええ。おはよう、レイ。……そう、もう朝だったのね」

そう言うアズライトの目元には、かすかに隈があった。

「寝ずに仕事していたのか?」

「やることは山積みだもの。王都を離れてはいるけれど、緊急の案件や早い方が良い案件は進めないといけないわ」

「そうか……」

あるいは昨晩眠れず、仕事に没頭するしかなかったのかもしれない。

「アナタの用件は、妹のことでしょう?」

「ああ」

「厳しく命じたから、泣いて逃げたのよ」

「らしいな」

昨晩、俺達のところに飛び込んできたエリザベートは泣いていた。

アズライトから、黄河への輿入れを命じられ、突き放すような態度で接せられた、と。

泣きながら家出したのも、それが理由だ。

今はマリーと一緒に<DIN>に泊まっている。

お目付け……というかお守りとして迅羽、それと呼ばれてきたリリアーナが一緒だ。

リリアーナは連れて戻ろうとしたが、エリザベートの意思が固いことからその場に残って見守ることにしたらしい。

なお、そこでどうするかについて相談した結果、俺は日が昇ったら……つまりは今こうしてアズライトに直談判することになった。

一番古くからの付き合いであるリリアーナが適していると思ったのだが、リリアーナは王家に仕える騎士でどうしてもそこに縛られると本人が言っていた。

それで縛りから自由で、アズライトの友人でもある俺の方が良いと判断された。

ちなみに、最初はマリーがアズライトの「説得」に向かおうとしたが、あまりに物騒な気配だったのでその場にいた面々によって取り押さえられた。

切り札の《消ノ術》まで使われたときは危なかった。

「それで、今日は私を糾弾しに来たの? 『妹を外国に嫁に出すひどい姉だ』、と」

「……まぁ、先にちょっと質問をしてからだな」

「質問?」

「王国と黄河。両国の王女と皇子の婚姻と、それに伴う同盟の締結について。そもそも、なぜそれを行うのか、ってな」

エリザベートが家出してきた後、マリーやネメシス、それとなぜかバビは怒っていた。

しかし俺を含めた他の面子は、アズライト……引いては王国と黄河がどうしてこのような選択をしたのか、ということがまず疑問だった。

なお、ネメシスは昨日遅くまでエリザベートの慰め会をしていたせいか、まだ紋章の中で寝ている。

「兄貴達とも話したが、今の時点で分かってることは黄河側の理由くらいなもんだ」

「そう。それで、その理由は何かしら? 一応合っているか聞いておきたいのだけれど」

「ああ。それは、『黄河がアルター王家の血筋……【元始聖剣 アルター】の使用権を欲している』、ってことだ」

これは兄とルークが導き出した推理だが、迅羽からも「まぁ、そんなところだろうナ」と肯定されている。

迅羽は両国の間で交わされる条件などについては知らなかったが、「黄河は成り立ちからして特殊超級職を神聖視してるからナ。それが増えるなら条件としては十二分だろうヨ」と述べていた。

「先々期文明の崩壊から二千年。残っている歴史の中で【聖剣王】、あるいは【聖剣姫】となって【アルター】を振るうことができたのは初代アズライトの子孫、それも一握りだけだ。逆を言えば、初代アズライトの血統であるならば、いずれは適性のある者が生まれるかもしれない。エリザベートが黄河に嫁ぎ、将来的に適性のある子供が生まれれば……黄河は【龍帝】と【聖剣王】という二つの強力な特殊超級職を獲得できる」

今でこそ、<マスター>……そして<超級>というバランスブレイカーが数多くいる。

しかし、<マスター>の増加……<Infinite Dendrogram>の開始前、歴史上でのバランスブレイカーは特殊超級職だった。

六百年前の【覇王】と先々代【龍帝】や、【聖剣王】による西方中央の統一など、この大陸の歴史は特殊超級職が動かしてきたと言っても過言じゃない。

黄河がそれを求めるのは自然なことだと兄達は言っていた。

「……そうね、合っているわ。黄河の意図はそんなところよ。付け加えれば、『王国に【聖剣王】不在の時期には、黄河の血統から【聖剣王】に適性があるかを試させてほしい。また、適性があればその時代の【聖剣王】の座を譲っていただきたい』とも条件にはあったわ。気の長い話ね」

となると、少なくとも黄河は今この時点で王国が滅びることは望んでいないってことか。

あるいは表面上は滅びないことを願いながら、滅んだ場合は【アルター】の獲得に動くのかもしれない。

「……逆に、今生きているアズライトをどうにかしようとする恐れはないか?」

「それはないわ。禁止事項にしているし、国家元首用の【誓約書】で契約を交わすもの」

アズライト曰く、国家間でそうした取り決めを交わすときは国家元首用の【誓約書】を使用するらしい。

国家元首同士が使用する【誓約書】は個人ではなく、国に対して罰則を科すものだ。

かつて西方中央が乱世だったころ、小国の王の中に破った者がいたらしい。そのときは大飢饉や疫病がその国の国土を襲い、それは当時の王と一族が反乱によって国を追われ、別の者が王として立つまで数年間も続いたらしい。

なるほど、契約破りのリスクが大きすぎる。

「……それ、皇国とは交わしてなかったのか?」

元々は同盟国だったはずだが。

「王の代替わりと同時に更新するものだから、戦争を始めたときの王国と皇国の間には同盟関係は存在しなかったわ。それに元々、西方三国間の同盟は外敵に対する連携や要人暗殺の防止などはあっても、同盟内の領土や交易に関する問題にまでは言及していなかったから。仮に侵攻されても罰則はないわ」

「……普通、それが一番大事なんじゃないか?」

「仕方なかったそうよ。最初はあったらしいけれど、罰則を避けるために両国の間に多くの手続きが必要になっていたの。だから、『交流を簡易化するために同盟内での制限については多くを撤廃しましょう』って先生……亡くなった【大賢者】が百年以上前に提言して実施したそうよ。それに当時は……ほんの一年前までは両国間で戦争が起きるなんて思えないほど関係は良好だったもの」

そもそも争い合うこと自体が想定外だった、か。

「皇国とのことは置いておくとして。今回の黄河との同盟はキチンとした形で行われる、ってことでいいんだよな」

「ええ」

「そうか。で……そんな風に黄河の方の理由は推測できたんだが、今回の婚姻に始まる同盟で王国が黄河から何を得るかについて俺達は分からなかった」

それについては迅羽さえ何も知らなかったし、兄とルークも現時点の推理材料じゃ確定できないと言っていた。

「戦争に際して、黄河の援軍が来るわけじゃないんだろ?」

「ええ。軍勢はカルディナの大砂漠を超えられないし、海路にしてもグランバロアが他国の軍勢の進出を許していないから」

それは兄と迅羽も言っていた。黄河から王国に来るには<カルディナ大砂漠>か<厳冬山脈>を越えなければならない。

しかし、どちらも極めて困難な進軍になる。

前者は広大な砂漠で消耗する上にカルディナが通行を許可しないため、まずカルディナとの戦争になる。

後者は<厳冬山脈>に住まう地竜や怪鳥を刺激し、最悪【地竜王 マザードラグランド】や【彗星神鳥 ツングースカ】といった、神話級以上とも言われている<UBM>との戦闘に突入する恐れがある。

いずれにしろ、今回の戦争に黄河の軍勢は出てこられない。

ならば、王国との同盟を結ぶに際して黄河は何をするのか。

「黄河が提示した協力の一つは、<超級>……【尸解仙】迅羽の派遣よ。こちらに向かわせるから、あとは王国側で交渉してほしい、というね」

「……なるほど」

これについて兄達もそうではないかと考えていたが、迅羽自身が特に何も命じられていなかったので確定ではなかった。

強いて言えば、『王国でも自由にクエストを受けても大丈夫ですよ』というお墨付きだけ貰っていたそうだ。だからあとは王国側の打診次第ということだったらしい。

もっとも、当時のアズライトは<マスター>に頼る気がなかったので、この協力内容については乗り気でもなかったようだが。

「アズライトが迅羽を重視していなかったのなら、他にも何かあるのか?」

「ええ。二つ目の協力内容は装備よ」

「装備?」

「特典武具を、合計で十」

「はぁ!? いやいや、特典武具は受け渡しできないだろ!」

特典武具は<UBM>を倒したMVPにアジャストし、譲渡不可能の専用装備だ。

それが譲れてしまったら色々と前提が崩れる。

「そうね。だから<UBM>という形で提供されるわ。封印されているけれど、ね」

「封印?」

アズライトによると、黄河の先々代【龍帝】は<UBM>を生きたまま封じ込めて活用する術を開発したらしい。

「そうして封じ込められた<UBM>が十体。ツァンロン皇子と共にこの国に持ち込まれているわ」

「……取扱注意にも程があるな」

「ええ。けれど、長年の封印で弱っているから、往年の力は発揮できないらしいわ。準備を整えれば倒すのは難しくないそうよ」

「で、その特典武具はどうする気だ?」

「最初は私、それと信頼のおけるティアンで使用するつもりだったわ。けれど、今は幾つかを交渉道具にして<超級>に協力を仰ごうとも考えている」

「なるほど……」

特典武具を狙って取れる機会なんてそうはない。あの【魔将軍】だって、手持ちの特典武具が貴重だから土壇場まで切り札を切れなかったくらいだ。

<マスター>にとっては喉から手が出るほど欲しい代物。それは皇国側が提示できないであろう条件だ。

前回参戦しなかった王国の<超級>に打診してもいいし、黄河から来ている迅羽や……あるいはフリーの<超級>を招いてもいい。

……まぁ、王国の<超級>って特典武具報酬がなくても参加する人か、あっても参加しない人だろうけど。兄やフィガロさんの所有数は<超級>の基準から言ってもおかしいらしいし。

「レイも、一ついる?」

「いや、俺はなくてもやるから、他の交渉に回してくれ」

「……迷いもしなかったわね」

だって俺がアズライトに協力することはもう彼女を前に誓っている。

なら、他のことに回すべきだろう。

「しかし所有者が決まる前の特典武具が十個か。……盗まれたりしたら怖いな」

「そうね。【アルター】と同じでアイテムボックスにも入れられないそうだから、保管には気を使わないと。引き渡し自体はエリザベートが輿入れして黄河に逃れてからだけれど」

「そうか。……?」

今、アズライトは……。

「レイ?」

「……いや、何でもない。それより三つ目の協力もあるのか?」

「あるわ。そちらは……戦争のための協力とは言えないけれど」

「?」

「三つ目の協力は、敗戦後に亡命希望者を貴族、平民問わず、黄河で受け入れてくれることよ」

「…………」

「負けたときの準備よ。この国が亡びたとき、生き辛くなる人々もいるだろうから」

「でも、大砂漠は渡れないんじゃ……」

「そちらはグランバロアに話を通しているわ。あそこは軍勢でなければ、適正な運賃で黄河まで運んでくれるもの。一定レベル以上の者はジョブリセットが条件だけれど」

さっきも少し言っていたが、『軍勢でなければ』……か。

なるほど、ツァンロンの場合は迅羽の存在と、同時に運んでいた<UBM>が問題になってグランバロアの船が使えなかったってことか。(そもそも、<UBM>を運んでいることを明かすわけにもいかなかったのかも知れないし、発覚するのも避けたかったのだろう)

兎に角、迅羽の派遣、十個の特典武具、敗戦後の受け入れ……黄河がアルター王家の血筋を得る代わりに王国に提供するものについては分かった。

「以上がエリザベートの輿入れで成る同盟の対価よ。……軽蔑してくれていいわよ、レイ。妹を売って、戦力や民の安全を買うようなものだもの」

アズライトはそう言って、自嘲するように笑っている。

それは一見すると冷徹なように見えるが……、

「違うだろ」

俺はそれを否定する。

「いいえ、何も違わな……」

「だって、王国が……アズライトが得ているのはその三つだけじゃない。王国が得るものは四つある」

「…………何を」

「アズライトは……エリザベートに黄河で生きていてほしいから、嫁に出すんだろ?」

さっき、アズライトは「引き渡しはエリザベートが輿入れして黄河に逃れてから」と言っていた。

その言葉は、エリザベートを戦争の渦中にある王国から逃したいという本音が、漏れ出たものだろう。

「…………」

俺の言葉に、アズライトは無言だった。

ただ、彼女の表情から、俺の言葉が彼女の本心そのものだったと分かる。

彼女が、なぜエリザベートを逃がそうとしたのかも……状況を考えれば予想は出来る。

「王国と皇国の戦争で、またギデオンやカルチェラタンのように街が襲われ、エリザベートも巻き込まれるかもしれない。それに、皇国だって【聖剣王】の血筋を欲しているかもしれない。そんな状況で王国が敗れれば……」

どんな後味の悪いことになるかは、簡単に分かってしまう。

「……そうね。私が父のように戦場で敗れて死ねば、残された血筋は二人の妹だけ。下の妹のテレジアは……病弱で王城の結界でしか生きられない。寿命も長くはないだろうと、言われているわ……」

「…………」

アズライトとエリザベート以外の、三人目の王女。

会ったことはないし、話にも上らなかったが……そうした事情があったのか。

「だから、危ういのはエリザベートよ。最後の王族になるだろうあの子が、皇国に囚われれば、【聖剣王】の血統のために粗略に扱われるかもしれない。そうなるくらいなら」

「先に、皇子の妻として黄河に輿入れした方が幸せ……ってことか」

「……そうよ」

それから、暫しの沈黙が室内に満ちた。

アズライトの考えていることは、俺には理解できたし、納得もした。

要は、アズライトはまず妹の幸せを願ったのだ。

たとえ王国が存続と滅亡のどちらの道に進んでも、妹が健やかに、幸せに生きていけるようにと願って……今回の黄河との婚礼による同盟を望んだ。

すると、これまでのことにも別の側面が見えてくる。

まず、エリザベートをこのギデオンに置いたままだったこと。

エリザベートがギデオンに来た理由である公務も、元々は皇国から最も遠く、かつ戦力の整った街であるギデオンにエリザベートを避難させるためだったはずだ。その安全な地域でツァンロンとの見合いを行い、そのまま黄河に輿入れ……避難させるつもりだったのだろう。

しかし、ギデオンでフランクリンが事件を起こし、あわやエリザベートが誘拐されそうになった。

恐らくはあの時、アズライトはエリザベートを王都に戻すべきか考えただろう。

しかし、既に一度仕掛けが発動し、警戒態勢をとっているギデオンよりも、未だ見えない何かが仕込まれているかもしれない王都の方が危険と考えて……そのままギデオンに滞在させていた。

また、フランクリンの事件の後、アズライトは様々な事件や仕事に忙殺され、ツァンロンと共にギデオンに来るのが遅れた。

逆を言えば、それらが一段落してすぐにこのギデオンに赴いている。

それも、一刻も早く妹の安全を図るためだ。

加えて、今回のギデオンまでの旅。あれは先輩を通して遊戯派の<マスター>を知るためでもあったが、同時に……ツァンロンが妹を託せる男かを見定めていたのだろう。

昨晩、アズライトがエリザベートに輿入れの話を伝えたのは、ツァンロンが彼女の目に適う男と認めたから。

見合いをすっ飛ばして結婚と嫁入りを決めたのは、これまでの出来事で時期が遅れたから「一刻も早く逃がさなければ」という意思からだ。

ああ、全く。

振り返ってみれば……彼女が妹をどれだけ大切にしているかが見えてくる。

少し不器用だが、これも彼女の愛の形なのだろう。

「……私は、レイと……<マスター>と一緒に戦うと決めた。けれど、もしもの時のためにあの子を逃がすことは、その決意の前後で変わるものではないわ」

「……そっか」

アズライトの意志は固い。

それは、彼女が誰よりも妹の身を案じ、愛しているからだろう。

「なら、俺は何も言えねえよ」

「……意外ね。アナタなら、また何か言ってくれると思ったけれど」

「お前が本当に妹のことが好きで、妹のためを思ってしようとしてることなんだろ? だったら、俺が善し悪しを論じるような話じゃないさ。それは、家族の話だからな」

「…………」

あとは二人で……あるいはテレジアという妹も交えて三人で決めればいい。

俺が口や手を出すような話じゃない。

俺がするのは、アズライトのために俺が手伝えることだ。

「だけど、一つだけ言わせてもらっていいか?」

「……ええ」

アズライトの表情はむしろ、俺の意見を待っていたようだった。

「あの子から聞いたお前の態度は、多分……あの子がお前に愛想を尽かして出て行きやすくしようとしてるんだろうけどさ」

エリザベートも冷たい態度だったと言っていた。

あるいは、嫁に行けと言われたことよりも、そのことがあの子には辛かったのかもしれない。

心に仮面をつけて、そうした態度を取ったアズライトも……辛かったのだろうが。

「それはもうやめて、謝っておけ。異国の地に移り住むかもしれないのに、最後に持っていく家族の思い出が冷たいそれじゃ、……想像するだけで後味が悪い」

「……そう、ね」

アズライトが後悔するように目を伏せる。

やはり、彼女も辛かったのだろう。

「真正面から向かい合って、話して、姉妹で答えを出すしかないさ。それに」

それに、これは経験則だけど……。

「弟妹ってのは、兄姉が真っ直ぐ向けてくれた言葉は、キチンと理解するもんだぜ」

子供だった俺が、兄の話してくれた『可能性』を……ずっと心に持ち続けているように、な。

To becontinued