軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

プレゼントをしよう!

図書館でたっくさんの本を読んでホクホクな気持ちになった私は帰り道も機嫌が良かった。

どんなことだとしても、シーちゃんのことについて知られるのは嬉しかったからね。

ついてきている本人も特に気にしている素振りはなかったし、私たちに知られても問題にならないということなのだろう。あれは不利益な情報ではない。あるいは、別に隠しているわけじゃない、とか。

道中に食材ガチャをやって空中都市からガーデンに戻ると、いつもの風景が迎えてくれた。

すっかり整えられた桜の見える素敵な庭だ。のどかな雰囲気で、テーマは春といったところ。まだまだアイテム類でごちゃついている部分もあるけど、そのうちそういうのも綺麗に整頓する工夫をしてみようと思う。

「ただいま〜」

そう声をかけると、すぐに反応したのはワルフルたちである。

駆け寄ってきて、わふわふと尻尾を振りながら足元にまとわりついてきた。可愛い。あまりにも可愛い。

「はいはい、みんなにお土産があるよ〜」

私はさっそく買ってきたアクセサリーを取り出して見せてあげた。

実は一匹一匹につけてあげなくても、アイテム欄のアクセサリーの項目から選んで一気につけてあげることもできるんだけど……やっぱりそこは自分の手でつけてあげたいからね。

おいでおいでと手招いて真っ先にお鼻を私の手にくっつけてきたリーダーワルフルの頭をわしゃわしゃと撫でる。

「わふ~!」

気持ちよさそうに目を細めてぺろぺろとなにもないところを舐める姿はめちゃかわである。

リーダーのワルフルには赤色の大きなリボン。他の子たちにはそれぞれ色違いのリボンだ。

「ほら、じっとしててね」

しゃがんで覗き込むと、前に垂れた私のオレンジの髪が鼻先をくすぐったらしい。くしゃん! と可愛らしいくしゃみをする姿に思わず天を仰いだ。ごめんね、くすぐったかったね……でも可愛いねえ。

「はい、できた!」

リボンを首元に結んでやると、ワルフルは一瞬きょとんとしたあと、ぶん、と大きく尻尾を振った。千切れんばかりに高速で振られる尻尾に思わず笑ってしまう。

「わふ!」

「ふふ、気に入った?」

返事みたいに彼がもう一度鳴いてみせる。ウインクつきだ。

そのまま他の子たちもリボンを結んで行ってあげると、みんな互いに見せびらかすようにくるくる回り始めた。

あまりにも癒される光景に思わずスクリーンショットを撮る。あとで見返してこれもスケッチするのだ。

「お次はジャガイヌたち~」

ジャガイヌたちも呼んであげると、彼らはワルフルに起きたことを見て理解しているのかどこかそわそわしているようだった。可愛いやつらめ!

彼らにもネクタイをつけてやると、こっちはこっちで妙に誇らしげに胸を張って見せびらかす。いや、首だけど。

「おしゃれだね〜」

満足そうな様子に、私も満たされるような心地になった。

やっぱりプレゼントしてみてよかった! これだけ喜んでくれるなら贈った甲斐があるというものだよ。

「さて」

ひと息ついて、視線をガーデンの外……草原のほうへ向ける。

時間は有限。この癒しの時間をたっぷり浴びたことだし、ゲームの攻略も進めないとね。みんながいればきっとすぐだ! 第二ガーデンで実験をするのもいいけれど、いったん今は解放された『奥』に行かないとね。

「今日は、深層を見に行こうかな」

「現在の進行状況であれば、深層へ訪れても問題はないでしょう」

「そうだよね、良かった。深層に行くにはレベルが足りないとかだったら困るからさあ」

「アプリコッティガーの鎮圧に成功している以上、問題は起こりません。そのような危惧は必要ありませんよ」

「そっかぁ~」

たまに、低レベルでクリアしたあとのダンジョンが高難易度になっていたりする事例がある。それを危惧していたけれども、どうやら心配ないらしい。さすがだ。比較的親切なシステムになっているらしい。

その代わり、もっともっと探索地が解放されていったら最終的にどれだけモンスターが強くなってしまうのか恐ろしいけれど。

……このゲーム、レベルがないからその辺本当怖いんだよなあ。

それはともかくして、深層行きは決定だ。さっそく私はリボンをもらって誇らしげに他のモンスターたちに見せびらかしに行っているワルフルや、加入したばかりのアプリコッティガーなどを呼び寄せて探索の同行を頼んだ。

あとは安定のオリウルとバタベア。移動要員を早く他にも見つけてあげないとなあ。休みを入れて交代交代で探索に出してあげたいもんね。

シーちゃんの言葉に頷いて、私は再び探索に向かった。

枯れ果てた草原に訪れるのはこれで何度目だろうか。アプリコッティガーを倒したので、街の跡地らしき場所から外に出ることができる。地下にも深層はあるのだろうが、まずは枯れ果てた草原と地続きになっている街の外から見ていくのが順当だろう。

はじめてここに来たとき、奥地にキリンのような姿を見た。実際、シーちゃんによるとあれは深層のモンスターだったというのだから、会えるのが楽しみだ。

深層に向かいつつ、表層のモンスターたちにも目を向ける。

見慣れたモンスターばかりだが、その中にもまだ住民化が成功していない子もいる。そんなモンスターを見つけたら、観察しながらゆっくりと歩いた。

「あれ」

視界の端に、豚さんの姿があった。

これまでも何度か見かけていたモンスターだ。

ずっと条件を探っているけれど、いまだ分からないんだよね。食べ物関係だとは思うんだけど……複数種類食べさせてあげるとかなのかなあ。

ちょうどいい機会だし、また様子を見ることにした。

「……なに食べてるの?」

豚さんが顔を突っ込んでいるのは、黒ずんだ何か。

近づいてよく見てみると、それは腐った食材だった。

放置されたままの、変色した残骸。まったく迷いなくむしゃむしゃと食べている。

そういえば前もこんな感じだった気がするけど……うん?

もしかして、むしろ半分腐りかけみたいなものしか食べてない……?

「……腐ってるほうしか食べない?」

「可能性としては高いですね。腐敗物の処理に特化した個体であると推測されます」

「なるほど……」

つまり、掃除屋ポジションってことか。

見た目は普通の豚っぽいのに、役割はだいぶ特殊だなあ。

ということは、好物っぽいものをさらに腐らせたものをあげれば条件を満たせる可能性があるのかな?

でも意図的に腐らせるのって難しくないか?

「スコップで叩くと腐食段階が進行いたします」

「そうなの!?」

そんな食材がもったいないこと、する発想すらなかった……!

ガーデンに帰ったらちゃんと試してみよう。

ま、それはそれとして、今日は深層行きだ。表層で観察するのはほどほどにしておかないと。

そうして深層手前の大壁の近くまで来たときだった。

「え……?」

オレンジ色の体躯。緑色の濃いタテガミ。

目の前を駆けて行ったのは、ニンジンの葉っぱがタテガミとしてわっさわっさと揺れる大きな馬だった。