軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

写真映えしか勝たん

気がつくと、VRゲームをする際によく見る真っ白な空間に立っていた。

オープニングムービーとかタイトル表示とかは特にないらしい。2回目からはあるのだろうか。それとも毎回直接ゲーム内に降り立つのだろうか?

そんな疑問を抱きつつ目の前に表示されたウィンドウを眺める。

『あなた様の活動する姿をお見せください』

おっ、天の声さん。女性の声だ。涼やかで優しい感じの声優さんの声だけど、辺りを見回しても姿は見えない。さぞ綺麗なお姉さんなんだろうと思ったけど、どうやらキャラクターに導かれながらアバターを作るわけではないらしい。

目の前のウィンドウに改めて視線を移し、いろいろいじり始める。ウィンドウの中に素体のアバターが表示されているから、それがあとから自分に反映されるのだと思う。

さてさてどんな感じかな〜。

アバター作りを始めて数秒。私は驚いた。

「MMOでよくある職業選択もスキル選択もない……本当に見た目と服だけなんだ」

変更できるのは体型やら肌の色、髪型、目、そして服装のみ。普通のVRMMOならここで職業を決めたりできるが、そういったものは一切存在していなかった。

確かに宣伝だとプレイヤーはガーデンテイマーとなって〜って言っていたから、そこは固定なのかもしれない。それにしたって、普通ならスキルを膨大な数の中から選んでいく作業とかがあるはずなんだけど、それすらもない。つまりプレイヤーはみんな最初は全く同じ条件でスタートするってことになるのだろうか?

戦闘システムも一応あるみたいだったけど、どうなるんだろう。あと、本当にこのゲームがオンラインである意味が分からない。なぜオフラインゲームにしなかったのか、謎である。

「うーん、尖ってる……」

服装選択を見てそう思った。

なんせ服装が可愛らしいけどツナギだけなのだ。ガーデニングをするからなのだろうが、色が春夏秋冬の4種類あるくらいでデザインはそこまで変わらず、RPGみたいなゲームらしい格好はひとつもない。ますます珍しいなと思った。

私としては考えることが少なくて助かるけど、装備とかのオシャレを頑張る人にはツナギが受け入れられない場合もあるだろう。よくよく考えなくとも、庭いじりをするのにスカートだったり鎧着てたりするほうが違和感があるからこれで正解なんだろう。

私はいろいろ見てから、スイスイと自分のアバターの見た目を決定した。

見た目は女子高生くらいの背の低めの女の子。

髪は夕焼けのようなオレンジで、髪型は一本のゆるい三つ編み。目は気の強いつり目で、優しい若草色。お顔は可愛らしく、そして愛嬌のあるそばかすを散らして、服装のツナギは秋色の落ち着いたヘーゼルカラーだ。

私は社会人であるものの、ゲーム内では少女のアバターで楽しむスタイルだ。スクリーンショットを撮る際に可愛い女の子のほうが映えるからね。決して高身長コンプレックスのせいではない。ないったらない。

現実は170も後半だが、アバターは基本150センチ台。VRだと現実と違いすぎるアバターは慣れるのに時間がかかるって言うけど、私はいろんなゲームでこういうアバター作りをしているので手足の長さが違うのも慣れっこだ。

決定決定っと。

『あなた様のお名前を教えてください』

再び天の声が聞こえてくる。

名前か。MMOだと名前被りできたりできなかったりまちまちだが、このゲームはどうだろう?私がいつも使う名前はありふれてるので弾かれることも結構多いんだけども。

「【ユウ】」

ゲームのエンディングに流れがちな【and you】のユウだ。

『承認しました。ガーデンテイマーの着任手続きをこれにて終了いたします。お疲れ様でした。お近くのワープゲートからガーデンへとお越しください』

よしよし、今回は弾かれなかったぞ。ちゃんとユウで遊べるようだ。

視界がパッと光ると、バサリと肩にほんの少しの重みが発生する。見ればしっかりオレンジ色の三つ編みがそこにあった。ウィンドウに表示されていたアバターが反映されたようだ。

そして同時に、四角く切り取られた光の扉みたいなものが目の前に現れている。中がどうなっているのかはここからじゃ分からない。本当にワープポイントってだけの見た目だ。

「行こう」

扉を通る。

その瞬間、私の視界が開けてぬるい風が頬を撫でていった。硬い地面を踏み締める感触。どんよりとした空気……あれ、おかしいな。庭づくりゲームだよね?

その場所を見て、私は思わず唖然としてしまった。

地面はひび割れ、瓦礫があちこちに積まれていて土はところどころ黒ずんで変な色をしている。草なんて一片も生えておらず、生き物の気配がない。ゲームだから臭気のリアルさまで再現されていないが、空気も見るからに澱んでいる。RPGでよく見る瘴気のある場所みたいに紫色の霧みたいなものが辺りに漂っているのだ。

まさに『死んだ土地』というレベルの荒れ模様。

え、本当にここで庭づくりするんですか?ってワクワクしていた笑顔が一瞬で引き攣る有様だった。

「あなた様の着任をお喜び申し上げます、管理人……いえ、ガーデンテイマー【ユウ】様」

背後から声が聞こえて振り返る。

この声はさっきの天の声さんでは!?

そこには、とんでもない美人さんが降臨していた。