軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

枯れ果てた草原と謎の痕跡

広い草原にぬるい風が吹く。

どこまでも続いていく枯れた草地を踏み締めて私は慎重に歩みを進めた。

ときどき枯れ木も見かけるが、そのどれもがカラカラに乾いていて水分の気配は感じられない。

まだガーデンからそれほど離れていないからか、腐食モンスターも見当たらなそうだ。

キョロキョロと辺りを見回しながら歩く。

草原は見晴らしがいいのでなにかがあるとすぐ分かるのだが、ところどころに瓦礫っぽいものが落ちているときがある。

木の板とか、石材らしきものとか、明らかに人工物っぽい荷車の車輪とか。そういうのを見かけつつ、シーちゃんに話しかけるとこれまた探索時特有の要素が出てきた。

「このような痕跡を発見した際、一度は調べておくことを推奨いたします。探索には【探索率】というものがございますから」

「探索率かあ。もしかして、そのうちモンスターの条件に探索率も関わってきたりする?」

「そのような場合もございます。また、ガーデンを十分に再生し、探索地の記録も十分に取ることで新たな探索地へと赴くことができるようになります。ですので、このようなポイントや、採取ポイントなどを記録し、マップを完成させていくと良いでしょう」

「分かった」

そうだよね。ワルフルだって知らない場所が生息地になっているみたいだし、もっともっといろんなところがこの世界には広がっているんだろう。

きっと他の探索地も、この枯れ果てた草原のようにひどい環境になっていると思う。でも、それでも私は見たい。

この世界のいろんな場所を、モンスターたちを。そして、記録をたくさんして図鑑をいっぱいにして、いつまでも眺めていても飽きないくらいのデータを読んでいたい。

知りたい、知りたい。この世界のことを! どんどん湧いてくる好奇心に胸踊らせながら痕跡を調べていく。

そうして調べていくうちに【木の柵の痕跡】とか【車輪の痕跡】とか、【家屋の痕跡】とか、明らかに人工物だろうものが多いことに気がついてしまった。

なにかを掘り返したあととかはモンスターかもしれないけど、さすがにこういうのは人工物だろう。

「……なにか、フレーバーテキストみたいなのが出てくるわけじゃないんだね?」

「痕跡の収集が足りていません。考察として記録をまとめるためにも、多くの痕跡を探しましょう。また、何度か調べる必要がある場合もございます」

「……あるんだね! 分かった!」

シーちゃんの言葉は「フレーバーテキストはありますよ」と言っているようなものだった。そうだというなら、気合を入れて探索するしかないだろう!

ただ、まあ、今はチュートリアル中でインスタンスエリアになっているだろうから、じっくり調べるのは2回目以降とかになるのかな。

好き勝手に、チュートリアルだけでマップを全て埋めようとしたら止められたりするだろうか……試してみるか。

そうして痕跡を探しながら歩き回っていたからだろうか。

足元の土の下に、なにか土じゃない色が見えた気がして立ち止まる。枯れ草が張り付いていたりしてよく見えないが、ちょっと硬い地面だ。

「こういうのは……」

スコップを取り出して土を掘ってみよう!

そう思ってスコップを垂直に突き立てる。

しかし、すぐにガツンと引っかかる。なにか石に当たったときのようにわずかな反動が返ってきてしまった。いや、むしろこれは地面を掘るのに硬いところに当たったというよりも。

スコップでカツカツと表面の土を浅く掘り、しゃがんで土を払う。

そこには明らかに人工的なレンガのタイルが並んでいた。

すぐさま後ろを振り返る。そして、草原を広く見渡した。

「ここって草原のど真ん中かな」

「おおよそは」

「……」

だってこれはどうみてもレンガでできた道だ。

西洋の、それかファンタジーで見るようなレンガでできた可愛いカントリーな道路。車輪や木材などの痕跡といい、どうにも人工物がよくある気がする。

このレンガの道も調べると痕跡ゲットの表示が出た。うーん、今考えてもいいけど……夜にじっくりでもいいなあ。

悩んで、悩んで、とりあえず先に探索を済ませることに集中することにした。痕跡はなるべく見落とさないようにいろいろ見るつもりだけどね。

そして顔をあげる。

下ばかり見て歩いていたから、空を眺めたかった。

そうして視線を高くすることで気がつく。

かなり遠くのほうになにやら首の長い生き物が見える。

「キリン!?」

この世界のモンスターには、まだ小さいサイズの子達ばかり会っていてキリンサイズははじめて見る。一番大きいのでクマだったし、こんなに遠くから首が伸びて見えるくらいなんだから、あれは相当大きいと思うけど。

でも、普通のキリンにしては見た目がちょっと違う。頭の周りにヘルメットのようなシルエットのものが見えるのだ。いや、ヘルメットというよりも犬猫が病院でつけてくるエリザベスカラーみたいな……?

頑張って目を凝らしてみる。

いや、お花? うーん、そうじゃないな。お花にしてはデカすぎるし。でもばさっと開いたような感じの……あ! もしかしてキャベツかレタス? もしくは葉牡丹だろうか。でも、この世界観だとキャベツかレタスのほうだろう。首の先端。顔の下に、ライオンのタテガミのように葉物野菜がふわっと花開くようにしてわさわさと生えている。

でも、あのキリンは相当遠いところにいる感じがする。

視線を下に向ける。目を凝らすと、遠くに大きな壁のようなものがあった。砦……とかだろうか。それとも崖? 明らかにその境目からこっち側と、キリンのいるほうで分かれていそうだ。

「エリアが違うのかな」

「はい、正確には、枯れ果てた草原の深層に生息するモンスターですね」

「土壌の浄化率みたいに表層、中層、深層で分かれてるの?」

「いいえ、探索地は表層と深層にのみ分かれています。深層にはより強力なモンスターたちが生息しており、表層から深層へと繋がる境、また深層の奥地などにはエリアを支配しているモンスターが確認されることが多いです」

「なるほど、ありがとう」

「必要であれば、きちんと質問にはお答えしますよ」

つまり、探索地は表層と深層に分かれてて、それぞれボスがいるってことだよね。探索もあるわけだし、戦闘もあるのかな? でもプレイヤーにはステータスもスキルもないのにどうやって?

……考えても考えてもキリがないか。必要になったらまた説明してくれるだろうし、今は保留。ガーデンテイマーって銘打つくらいだから、モンスターを防衛に任命したみたいに攻撃命令とかもできるようになるのかもしれない。

悩みつつ、立ち止まっていた足を再び前に進ませる。

やがて、私たちが来た方向からだいぶ離れるとチラホラと腐食モンスターたちが姿を現すようになった。