軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

人の不幸で白米を食べられる性悪だ

ユニバンス王国自治領・街道

困ったのである。

現在僕らは用意してもらった馬車で移動している。

ドラゴン退治を終えた時点である意味僕らの仕事は終了した。あとは本業に任せれば良い。

オーガさんたちの安否も気がかりだが、2人の捜索はキシャーラのオッサンがやるそうだ。

まだ敗残兵が隠れているかもしれないから危ないし、何より僕の頭が切れている。出血もあり全体的に怠くて眠いので、大事を取って後方送りとなった。

よって現在僕ら……僕とノイエ。それとポーラの3人で領主屋敷へ向かい移動中だ。

護衛はコッペル将軍が手配した騎士たちが務めてくれている。

ミシュは報告書の都合前線に残った。

あの売れ残りは最後まで『働きたくないのにな~』とか人生を舐め切ったことを言っていた。

僕を見ろと言いたい。こんなに勤勉な者が居るだろうか?

帰ったら絶対に休みを得て温泉に行く。これはサボりとかではない。心と体の洗濯だ。

外に向けていた視線を馬車の中、右手へと向ける。右手に持っているのは宝玉だ。

まさかの宝玉だ。2個目だ。

天幕の中でポーラが抱えて入って来た時は、あのリス(ニク)が回収をミスったのかと思ったのだが、ほどなくしてポーラの姿をした問題児が『ジャジャジャジャーン。ふぇいんと~』とか言って宝玉をガッチリと抱えているリス(ニク)を猫掴みでエプロンの裏から取り出した。

ユニバンスのメイドはエプロンの裏が〇次元ポケットらしい。

普通の異世界物のラノベ主人公なら『これでノイエの姉たちが同時に2人だ!』とか喜ぶのだろう。けれど現実を知る男……そうこの僕はそんな単純に喜んだりしない。

何故ならばこれで下手をしたら同時に3人に襲われる可能性が、増えるのではなく確定するからだ! 知ってるよ! 絶対ノイエ・ホリー・レニーラの底なしトリオが襲い掛かって来るんだろう? どんなR18だよ!

というかこっちを見てニタニタと笑っているポーラの様子からして確定だ。

あの賢者はやる女だ。具体的には人の不幸で白米を食べられる性悪だ。

「何を企んでいる?」

「失礼ね。大好きなお姉ちゃんが喜ぶ姿を見たくて妹が一生懸命お掃除して拾って来たのに」

「……掃除しないと拾えない場所に隠してあったの?」

「ええ」

ニッコリと笑うポーラが愛らしい。問題は中身が邪神の類なだけだ。

目を弓して笑っていたポーラの表情が突然強張り泣き出しそうな物に変わった。

「だめでしたか?」

「あ~。うん。余計なこととは言わないけど、1人で勝手に行動しちゃダメだろ? ここは戦場なんだし」

「はい。でもおそらをとびました」

「……」

空を飛んだら安全なのか?

この世界に航空兵器はない。しいて言えばノイエくらいか。

ただ飛行魔法はない。しいて言えばノイエの異世界召喚の大鷲ぐらいか。

あら不思議。ウチのお嫁さんってやっぱり最強なんだね。

僕の腕に抱きついて離れないノイエをそっと見つめた。

『もう離さない』とばかりにギュッと僕の左腕に抱き着いている。

上腕部を抱いて左手は彼女の太ももでホールドだ。若干痺れているけれど、こんな幸せな感触を味わえるのなら僕は自分の左腕を犠牲にできる。

「あの箒って魔道具なんだよね?」

「はい」

いそいそとポーラが座席の下に隠している箒を取り出した。

「あれに貰ったの?」

「はい。まじょはほうきがひっすだって」

「……」

何処の宅急便かと聞きたくなる。

そうなると次は黒猫か? ウチに居るのは猫ほどの大きさの普通のカラーリングなリスだけだぞ?

ポーラが使っている座席の横で丸くなって寝ているリスが居る。

その近くには改造された宝玉があり、ノイエに何かあればあのリスが宝玉を管理するようになってきた。成長なのかファシーが頑張っているのか。

「それってどんな機能があるの?」

「うきます。とべます……いじょうです」

シュンとしないで!

僕のリアクションを見たポーラが若干俯いた。

凄さに圧倒されただけで決して馬鹿にしたわけじゃない。

「どんな破格の性能だよ? 国家規模で隠ぺいする逸品だぞ?」

ユニバンスだと国宝扱い間違いなしだな。

「……当たり前だけど制約はあるわよ」

「だよね?」

ポーラから賢者へと入れ替わった彼女が言葉を続ける。

「基本私でしか使えない。あと最大の問題……重量制限よ」

「はい?」

「だからこの箒で運べるのは10キロぐらいまでなの」

何この矛盾?

「……乗ってるよね?」

「酷いお兄様ね。可愛い妹がデブだと言いたいの?」

「言うかよ。ポーラはまだ小さすぎるぐらいだ」

「あら? なら頑張ってここのお肉を増やさないと」

胸を揉むな。下から支えるな。何より強調するな!

「まあ私は羽毛のように軽い女だけど」

「頭の中が?」

「失礼ね! 刻印の魔女は自由気ままに生きる女。束縛を嫌う女なのよ。だから日々縛られず自由に軽やかに生きているのよ!」

「結果尻軽だと?」

「本当に失礼ね! だったらこの体でビッチ路線に」

「ごめんなさい! それだけは勘弁してください」

「分かれば宜しい。今度から言葉に気をつけなさいよね!」

プンスカ怒って腕を組みそっぽを向くポーラの様子は愛らしい。

けれど理不尽だ。人質を取られ何かあればこっちが負けるこの仕組み……根底から間違っていると思います。

「で、問題児?」

「何よ?」

「この宝玉をお前はどうする気なんだ?」

問題の先送りは諦めて僕は直球勝負に出た。

愉快犯を相手に対策の取りようなんてない。だったら全てを理解してから対策を練る。

「ん~。とりあえずしばらく保留かな?」

「はい?」

頬に指をあててポーラが軽く傾く。

「加工しようにも魔剣の子が液体になってるし……何よりこれ以上ノイエの魔力を使われると私が使う分が減るしね。仮に加工しても緊急時の予備としてだと思って」

「つまり今の間隔での運用は不可能だと?」

「無理ね。そっちの5日間隔ですら失敗したかなって思ってるぐらいだし……良くて20日に1度かな?」

告げて座席に座るポーラは自分の膝を抱き寄せる。

「作った私たちが言うのもあれだけど、本当に魔法って奥が深くて難解なのよ。だからずっとだって研究も出来る……したくないけどね」

「やれよ。世の発展のために」

「嫌よ。何より発展を望んだ結果が今なんだから」

「はい?」

僕の問いにクスッと笑って、ポーラが膝の上に顎を乗せてこちらを見つめてくる。

「おかしいと思わなかったの? 私たちがこの世界に来てから……結構な月日が経っているけど、でも文明レベルは地球で言う中世ぐらい。変だと思わないの?」

「あ~。思わなかった」

「馬鹿」

「うっさいわい」

思わなかったんだから仕方ない。

来た時からこんな感じだったし、何より田舎で育ったから自然が多い方が落ち着くしね。

「そこまで不自由に感じなかったんだよね」

「そう。それは幸せね」

クスクスと笑いポーラが目を細める。

「なら1つ先輩として質問しようかな」

「何よ?」

ピンと指を立てたポーラは、スッとその顔をただし真面目な表情を見せる。

「民主主義って絶対に幸せになれるって思う?」

「……絶対は無理なんじゃないの?」

「そうね。それが分かっているなら貴方はこの世界で暮らしていける」

「何よそれ?」

「ん」

クスッと笑いポーラが目を閉じた。

「この世界で民主主義の実験をしたことがあるのよ」

という割にはこの大陸に民主主義を掲げる国はなかったはずだ。

「結果は?」

「……独裁者は打倒すれば良い。けれど一度根付いた民主主義ほど厄介な存在はない。ある種の宗教よね」

「何よそれ? どんな謎々?」

「ん~そうね」

ポンと彼女は手を叩いた。

「私って織田信長が好きなのよ。それが答えかな」

「……僕ってば勉強のできない子だったのよね」

「分かる」

全力で頷くなと言いたい!

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