作品タイトル不明
本当に死んじゃうから~!
「どうかしら?」
「「……」」
僕とポーラが目の前に佇む存在に対して言葉を失う。
ノイエは相変わらずのノーリアクションだ。これを見て反応しないのは流石だ。
「よく似合ってると思います」
「どの辺りが?」
「え~っと」
グイグイと言葉を求めてくるホリーに対して返事に困る。
女性経験はノイエたちとだけの僕にどう褒めろと?
世の男性はデートとかで女性の服をどう褒めるのだろう?
白いシャツとワンピースを改造して作った水色のスカート。
それだけのシンプルなコーディネートなのに、美人が着るとハイファッションのオーダーメイドの一品に見えるから不思議だ。
何よりそんな服をあっさりと手直ししたホリーの器用さに舌を巻く。
姉のコリーさんも器用な人だけど、ホリーはそれ以上に器用すぎる。ウチのお店の針子として雇いたいぐらいにだ。
「誉め言葉が浮かばないくらいに奇麗です」
「もうアルグちゃん。女性は常に褒められたい生き物なんだからね」
「はい」
チョンと伸ばしてきた指先で僕の鼻先を突いたホリーが柔らかく笑う。
どこの姉キャラだ? こんなお姉ちゃんなホリーが完成するとは……服って怖いな。
「でも少し胸がきついのよね」
動きを止めて姿見の前に立ったホリーが両手で自分の胸を揉む。
そのままだとシャツのボタンが飛んでしまうので、簡易的なブラで胸を若干潰している。どうもその圧迫が嫌なのか時折自分で胸を揉むのだ。
その度にポーラが僕の方に手を伸ばしてきて『本当に小さくてもいいんですか?』と言いたげな目を向けてくる。
ノイエは自分で胸を揉みだし……特にリアクションはない。
「もう少し胸周りに余裕のあるシャツが欲しいかな? それか男性用を……手直しするには時間がかかるし面倒なのよね」
言いながら裁縫道具に手を伸ばし、ホリーが余った布を掴んだ。
針に糸を通してチクチクすること僅か……簡単な飾りを作りそれをスカートの腰の部分に縫い付けた。
「これぐらいかな」
「お姉ちゃん」
「なに?」
長く青い髪を大きく揺らしてホリーが振り返る。
服の印象だけで年上のお姉ちゃん度が半端なく割り増しされている。
「すっごく奇麗です」
「もうアルグちゃんったら~」
いつもなら鼻息を荒くするのに今日は頬を赤らめて照れて見せる。
何このギャップ! 物凄くズルいんですけど!
心の中でありもしない床を叩いて僕は悔しがる。
卑怯だ。あのホリーなのにノイエぐらい可愛いとか詐欺だ!
「それで私はこの服を着て中に戻ればいいのよね?」
「ん~」
お姉ちゃんの言葉に現実に戻る。
小さく欠伸をしているポーラはそろそろお眠かな?
「それだとシュシュたちと変わらないよね?」
「そう言われれば」
「違いを確認する方法ってある?」
「……あるわ」
薄っすらと上品に笑うホリーが奇麗なんですけど!
「ならそっちは私が戻ってから確認するから……アルグちゃんはこのシャツの代わりと、あと下着をお願いしても良いかな?」
「それはポーラに一任します」
「……わかりました」
コクリコクリと舟を漕いでいたポーラが慌てて顔を上げる。
ポーラにはまだ夜更かしは難しいらしい。
「片づけは明日でいいからポーラは部屋に戻って休んでね」
「はい」
ベッドから降りてフラフラと歩いたポーラが頭を下げる。
「おやすみなさいませ」
ゆっくりと部屋を出ていき……まあ廊下にはメイドさんたちが待機しているから問題はないはずだ。下手にあんな眠そうなポーラとかをメイドさんたちの前に突き出すと『部屋に運びます。安全のために添い寝して一晩観察します』とか言い出しかねない。
大丈夫かな? 現実になってないかな?
不安になって確認しようかと床に足を延ばすと、グイっと後方に引っ張られた。
犯人はノイエだ。
捕まえた。離さないといった様子で僕の腕を掴んでいる。
「ノイエさん? ポーラが無事に部屋に行けたか確認したいんだけど?」
「平気」
「その根拠は?」
「……平気」
根拠無きその自信がある意味ノイエの凄いところだな!
というか僕の腕を掴みながら器用にもう片方の手で寝間着を脱ごうとしている君の企みは分かっているとも! 本当に最近のノイエは自重が無さすぎだろう!
「助けてホリーお姉ちゃん! ノイエが最近自重を忘れてるんです!」
「あらあら」
服を着替えて自重を思い出してくれたホリーが、頬に手を当てて困った様子を見せる。
そうやって佇んでいる様子は本当にお姉さんしてて最高です。ホリーさん。
「もうノイエ。はしたないわよ?」
「むっ」
『どうしてダメなの?』と言いたげな様子のノイエだ。
ただ今回はホリーの発言を僕は支持したい。
最近のノイエはかなり暴走気味だ。愛されているのは嬉しいけれど、僕が壊れるから。
「淑女はもっとお淑やかに」
告げてホリーが軽い足取りで部屋のランプを消して回りだす。
「人目につかないように行為に及ばないと駄目なのよ?」
「はい」
あれ? 何かおかしい気が?
ベッド脇のランプを残し、ホリーがシャツのボタンを外していく。
何故だろう……ボタンを外す姿が艶めかしく見えるのは?
「それにアルグちゃんは長くするより一気にした方が嬉しいみたいだから……」
迫ってきたホリーが軽く下唇を舐めている。
「押さえつけて有無を言わさずまず一気にするの」
「はい」
「それが済んでアルグちゃんがまだ元気だったら、もう一度すればいいんだから」
「はい」
「あの~? 御二人様~?」
怯え切った僕の声を無視して、服を脱いだ2人がギラっと猫科の肉食獣な目を向けてくる。
そうか。理解した。
人は服で上辺だけ変えることはできても……その本質を変えることはないんだ。
つまりホリーは決して変わることがない、ということだ。
「本当に死んじゃうから~!」
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