軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

立派に育つと良いな~

「……」

「ふわわ~」

ノイエが凍り付いている。

覗き込むポーラは感情を露わにしている。

欲している割には対処が分からなくてフリーズしているノイエが可愛い。

僕も覗き込んで確認すると……母親の勝ちだ。父親の成分は微塵も感じない。

例に漏れず小猿にしか見えないけどそれでも母親の勝利だと断言しよう。

「フレアさんも母親か」

「その言葉の意味は?」

「ミシュの残念さを噛み締めました」

僕の言葉にベッドで横になって居る彼女が何とも言えない表情を浮かべる。

予定より早かったらしいがフレアさんが遂に出産した。

万全を期してキルイーツ先生を呼んだそうで、かなりすんなりと産まれたそうだ。

「貴重な体験をしたでしょう?」

「……」

質問をしたらフレアさんが視線を逸らす。

あの先生のことだから、中に手を入れ産道を開いて産ませるなんて言う強引技が出来る。

やられる方は人生初の拷問だけど、それでも短い時間で生まれたらしい。母子共に健康なのは実に素晴らしい。

「で、名前は?」

「……あの人が南部ですから」

「宿題ってわけだ」

子供の名前とか僕も迷いそうだしな。

「ふわわ~」

ポーラが声を上げたからなんだろうと目を向けると、ノイエが胸を晒していた。

対処に困り授乳に逃れようとしたのだろう。

でも出ない乳を前にした赤ちゃんは意外と容赦無いらしいぞ?

ペチペチとノイエの胸を叩くが母乳が出るわけ無い。

『う~』と唸った乳飲み子がわんわんと泣き出した。

「っ!」

「わわわわわ~」

見てて飽きない2人だが今は子供が優先だ。

立ち上がろうとするフレアさんを制してノイエの腕から……無駄な抵抗は止めなさい。離しなさい。今は食事が優先ですから!

ポーラの協力を得てノイエから引き剥がし母親の元へと向かう。

僕に抱き付いて、ジッと横顔を見つめて来るノイエの視線を強く感じます。

「本物のお母さんがどんな物かちゃんと見学なさい」

「……はい」

母親に子供を戻し僕はそっと離れる。

ノイエとポーラが見学する状況でも、フレアさんは上手く隠しながら胸を出し我が子の口へと運ぶ。

「かわわ~」

「……」

頭の良い子なのにポーラの語彙がおかしくなっている。

それにノイエさん。自分の胸を絞っても出ない物は出ないですから。

「と言うか乳飲み子大好きな義母さんは?」

初孫と言う餌を前にあの人が静かなのはおかしい。

普段ならフレアさんが横になるベッドの中に入り込んで一緒に生活しそうだ。

そっと授乳する彼女が視線を逸らした。

「ラインリア様でしたら……部屋に監禁してます」

「軟禁じゃ無くて監禁なのね」

「はい」

重々しく頷いてフレアさんが息を吐く。

「この子が産まれてからずっと起き続け……今朝は吐血しながらこの子の寝顔を眺めてました。様子を見にいらしたスィーク様が強制的に眠らせて今は自室の方へ」

ワンパンくれて気絶させたかな?

「リチーナ様が様子を見ているはずなので、大丈夫だと思いますが」

「そうか。で、叔母様は?」

「ご用があるとのことで私に挨拶をしてお帰りに」

前王は立って歩けないし、後はこの部屋に待機しているメイドさんぐらいか。

「ちょいと大切な話をするから部屋を出てくれる?」

「畏まりました」

恭しく一礼をしてメイドさんたちが部屋を出て行く。

一応扉の鍵を閉める。

「誰か見てる?」

「アルグスタ様?」

まだ自分の胸を絞っているノイエに声を掛けるとフレアさんが首を傾げた。

ウチには絶対的なソナーを完備している歌姫さんが居るから隠れていても見つけます。

「大丈夫よ」

「っ!」

ノイエが色を変え赤くなる。

胸を晒している状況に呆れながら、服を正して軽く髪を払った。

「本当にあのフレアが子供を産むなんて……私も歳を取ったわね?」

「先生……」

色を変えたノイエの正体を知るフレアさんが涙ぐむ。

授乳を終えて背中を叩きゲップさせた子供をアイルローゼが優しく抱き寄せる。

意外と慣れた手つきに驚きだ。

「先生が子供を抱ける事実に驚きなんですが?」

「何を言ってるのかしら? この馬鹿弟子は」

ウチのお嫁さんの視線をそんな凶悪にしないで下さいな。

「私だってこのくらいの乳飲み子を抱いたことぐらいあるわよ」

「……」

「あん?」

何も返事をしなかったらまた睨まれた。不本意だ。

「って邪魔ね」

「先生?」

「こっちの話よ」

フレアさんが不安げな声を出す。

流石に先生だって抱いてる子供を邪魔者扱いなんてしないって。

たぶん中で『抱きたい抱きたい』と騒いでいる人たちが複数居るんだろう。

「って待て!」

気づいた時には遅かった。

ノイエの頭上に存在する宝玉が黄色になり、ポンッと音はしないがそんな感じで煙が立ち昇り……姿を現す。

「あは~。フレアの~子供~だよ~」

「「……」」

姿を現した存在に僕は全力で視線を逸らす。

認めたくない。認めたら面倒臭い。

だから宝玉は置いて行こうとノイエに言ったのに!

頭上のアホ毛の上に置くのが普通だと言わんばかりに置いてノイエが持って来てしまったのだ。

黄色くてフワフワと揺れる存在を見つめるフレアさんが完全に凍り付いている。

分かってます。そうなることぐらい想定済みです。

「……先生?」

「説明なら馬鹿弟子にして貰って。離しなさいシュシュ。今は私の番よ」

「え~。アイルローゼは~気に~いると~絶対に~離さない~から~ダメだよ~」

「分かっているなら説明は要らないわね。離したくないのよ!」

「離せ~だぞ~」

奪い合いになって居るのに満腹のお陰で動じないあの子が凄い。

将来は立派な……性別を聞くの忘れてたな。

「あの? アルグスタ様?」

「あの子の性別って?」

「……娘ですが」

「そっか~。立派に育つと良いな~」

こっちに救いの目を向けて来るフレアさんには悪いが、僕もどうすれば良いのか考える時間をください。

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