軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

にいさまとけっこんしたいです

「ダメよ! そんな硬い動きじゃダメ!」

「はい」

「もっと足はこう!」

「はい」

「あ~。体が硬い! 今日からお風呂上りはこんな風に足を広げてペタッて着くくらいに」

「はい」

大粒の汗をポタポタと落しながらポーラが必死に股裂き……開脚している。

「ノイエはペタッて出来るの?」

「……」

僕の問いにノイエは無言のまま開脚をして行き……床まで残り15センチぐらいで動きを止めた。

「ノイエ~!」

「……はい」

「どうして股が床に着いて無いの? 昔言ったよね?」

「ごめんなさい」

「ダメです。ノイエも今夜からお風呂上りにペタッと着くまで特訓です!」

鬼教官と化したレニーラの指導が止まらない。

ノイエが若干拗ねた気配を漂わせながら、柔軟体操を始めた。

ポーラは向こうで必死に開脚しているが……あれが床までとか今年中に可能なのだろうか?

「昔見たな」

「何を?」

全身汗まみれのレニーラが僕の言葉に食い付いた。

みんな。今のうちに休むんだ。

「椅子と椅子をこんな風に離して置いて」

友人の家で見た映画のワンシーンだったかな?

ムエタイ選手が離れた椅子に足を乗せて開脚するシーンがあった。180度を超えるくらい水平になってた気がする。

「簡単ね」

「ふぇ?」

ひょいと椅子に乗り跨いでみせたレニーラが足を広げていく。

「旦那君。そっちの椅子を動かして」

「はいはい」

背もたれを掴んで横移動していくと、するするとレニーラの股が開いて行く。

「もう良いです! 怖いです!」

「そう?」

そのままお尻が床に着きそうな勢いで腰を沈めないで!

上半身を前に倒し、彼女は開脚したまま前転しつつ立ち上がった。

化け物が居る。こんな場所に軟体生物が居た。

「レニーラに関節ってあるの?」

「あるよ!」

噛みついて来そうな勢いでレニーラが迫って来た。

何か今日は出て来てから彼女の機嫌が悪い。ノイエとポーラへの当たりが強い。

ノイエは少しずつ柔軟を続け……完璧を求めがちなポーラが向こうで無茶してるんですが! 顔色を紫にしてあんなに広げて! 無理するとボキッといっちゃうから!

とりあえずポーラを回収して来る。

「旦那君は本当に節操がないね!」

「何おう?」

可愛い妹を保護したらレニーラに怒られた。

腕を組んで『ふんっ!』とか言ってる彼女の不機嫌アピールが止まらない。

「何よ? 言いたいことがあれば言いなさい。この僕はどんな言葉でもちゃんと耳を傾けます」

王族であり上級貴族でありそして現在この国の軍務の責任者たる僕は、人の意見をちゃんと聞く立派な人物なのである!

「シュシュをお嫁さんにした」

「何も聞こえませーん!」

全力で耳を塞いで部屋の隅に逃走する。

「逃げるな嘘つき!」

耳を傾けた結果聞こえなかったのだから仕方ない。

追いかけて来たレニーラが僕の腕を掴む。

「何でシュシュ? 私の方がずっと前から仲良くしてるよね! ねえ!」

激おこなレニーラの言いたいことが分かった。が、

「えっと……求婚されてないから?」

僕の返事はこれが全てです。

「してよ!」

「だが断る!」

「何で!」

「決まっている!」

立ち上がりノイエを指さす。

「僕が求婚したのはノイエだけです。ノイエ以外の人には、たとえノイエの家族であっても求婚などしません!」

「うが~!」

憤慨して暴れるレニーラがピタッと動きを止めた。

「なら結婚して?」

「良いよ」

「うが~!」

「何故に!」

癇癪を起して暴れるレニーラの様子にスルスルとノイエが接近して来た。

「お姉ちゃん泣かした」

「違います。勝手に泣いてるんです」

「ノイエ~。旦那君が意地悪するよ~」

ヒシッとノイエに抱き付いてレニーラがとんでもないことを!

「アルグ様?」

「違うノイエ。レニーラが嘘をついてるだけだ!」

そう。僕は悪くない。ちゃんとレニーラの告白に即答した。

気づけばこれで嫁が何人だ? 不思議なことに体は1つ……宝玉を使っても2人までだが。

複数の嫁が居てもハーレムは完成しないのだ!

「ノイエ~。お姉ちゃんの言葉を信じないの?」

「む?」

ヤバい。ノイエのアホ毛がレニーラの方に傾き出した。

「ノイエ。僕がノイエに嘘なんて言わないだろう?」

「……言う」

のぉ~! そんな酷いことは言ってないはずだ!

「いつ言った?」

「……お肉食べさせてくれるって、でも野菜」

それ? いつのネタをずっと引きずってるんですか!

「分かった。今度美味しいお肉をノイエの為に!」

「はい」

「ってノイエ! お姉ちゃんよりお肉の方が大切なの!」

「…………違う」

「「すげー葛藤だな!」」

思わずレニーラと同時にツッコんだよ!

「お肉より……お姉ちゃんの方が……大切?」

「「疑問形?」」

またもや同時だよ!

「大丈夫。お姉ちゃんは焼かない」

「「食べる気なの?」」

段々と脱線していくノイエにレニーラが怒って彼女を追いかける。

レニーラの運動神経の良さは知っているが、ノイエの機動力は人の域を脱している。

それでもレニーラに追い回されるノイエはペースを調整しているのだろう。楽しそうにアホ毛を揺らしているからじゃれているのだ。

「にいさま」

「ん?」

いつの間にやって来たポーラが顔を真っ赤にしてモジモジしている。

「わたしもにいさまとけっこんしたいです」

「ん~」

何これ? レニーラに触発された? それともポーラなりのギャグか?

これはあれだ。世の異世界系主人公が言いそうなセリフだな。

「ポーラが素敵な大人の女性になったらまた言ってくれるかな?」

「……はい」

何故かしょんぼりしながらポーラが部屋の隅に移動して開脚を始める。

あれか? 自分、言葉選びを間違えたか? 笑えなかった?

まあポーラはいずれは良い人を見つけて結婚するだろうけど……それまでは僕がしっかりと守らないとな。うん。お兄ちゃんとして頑張ろう!

気づけばレニーラとノイエが手を取り合って踊っていた。

本当に平和だわ~。この平和がずっと続けば良いのに!

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