軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

追憶 グローディア ③

王都ユニバンスに存在する王城は、長い月日を費やし増改築を繰り返した結果……その城に努める者たちは陰でこっそりと『迷宮』と呼んでいる。

増築や改築の度に隠し通路や隠し部屋が数多く発生しているからだ。

大半は王家の管理下にあるが、それでも工事用に造られた図面に存在しない通路や休憩所なども存在する。

グローディアはそんな誰も知らない通路を通りある部屋を目指し歩を進めていた。

早朝までに必要な物を手にし自室へ戻って帰宅する。

その為にあの魔女の協力を得て作りだした魔法がある。

風の魔法を応用し進める道を探る魔法だ。

目的の場所は確りと記憶している。

それだけに風の案内を脳内で組み立てればどの道が正確なのか分かる。

ランプを手に下へ下へと降るグローディアは地下通路へと出た。

ここまで来れば後は簡単だ。

見覚えのある道を行き、封鎖されている場所を突破してその超重量の扉の前に立つ。

重すぎて普通では開かない扉。

この扉を開けるのには取っ手に縄を巻いて大人数で引いて開けるしかない。

しかしグローディアは壁を触りそれを見つけた。

石と石との間に指一つ分の隙間がありそこに指を入れて魔力を流す。

以前この場に来た魔女がこの仕掛けを見つけたが、報告していなかったのだ。

『安全対策よ。私が言わなければ誰にも知られないわ』と会った時に彼女は言っていた。

カチンと音がし……重い扉が建付けの悪い木戸のように勝手に開いた。

グローディアは迷うことなくその場所へと入って行く。

王城の地下に存在する『封印倉庫』と呼ばれる異世界の魔道具などが収められた場所にだ。

仮眠を取り早朝に馬車を呼んで自宅へと戻る。

その足で自室に入りメイドの手を借りて私服へと着替えた。

「ティーレ」

「はい。お嬢様」

専属のメイドであるティーレは、グローディアより5歳ほど年上の女性だ。

どの屋敷で仕事を得られるであろう程に優秀で顔立ちも良い。出来たら彼女には今日を迎えるまでに結婚して貰い屋敷を追い出す予定であったが……自分の甘さをグローディアは恨んだ。

「今日からしばらくはまた部屋に籠ります。ですから貴女は今日からしばらく休みを得て」

「お断りします。お嬢様」

「……ティーレ?」

驚きと共にグローディアは彼女を見た。

自分の引き籠りのせいで数多くの苦労をし、王妹である母親の癇癪に晒されてもそれを飲み込み自分に仕えてくれた女性の初めての拒絶だった。

「私はお嬢様の専属です。仮にお嬢様が今日からずっとそのベッドで過ごすと言っても傍に居ます」

「でもっ」

「お嬢様」

そっとティーレは柔らかく笑った。

「私は傍に居たいのです。貴女の傍に」

静かな声音が耳を打つ。

込み上がる思いを噛み締め、グローディアはそっと息を吐いた。

「ならば家族の者がこの部屋に近寄れないようにして」

「はい」

静かに一礼をするメイドに、グローディアはそっと笑った。

「今までありがとう」

「何を申します。私はこれからもお嬢様の傍に居ますよ?」

「……それは困るわ。結婚ぐらいしてくれるかしら?」

「でしたらお嬢様こそお早くに」

「……そうね」

クスリと笑ってグローディアはベッドから立ち上がった。

「これが終わったら真面目に考えるわ」

「お願いします」

退出するメイドの背を見つめ、グローディアは初めて『明日』を考えた。

面倒臭くなって国王には良い子の振りをしたが……はっきり言って第三王子との結婚などしたくない。

願わくば王位継承権から抜けて自由に旅でもしたい。無理だと分かっていてもだ。

「まあ良いわ」

王城から盗んで……借りて来た魔道具を手にし、グローディアはまず選別をする。

一応万が一に備えて逃走手段は必要だ。

自室にある中に入れた物の状態を維持する壺に逃走用の転移の魔道具を入れ、それを脇に抱いてコッソリと外に出る。

ティーレとて流石に仮眠ぐらい取っているだろうと庭木の横に穴を掘っていると、穴掘りの道具を手に彼女は無言でやって来た。

グローディアも『今から何かする』感を出し過ぎていた気恥ずかしさから……無言で道具を借りて2人で穴を掘り、壺を押し込んで土を掛けた。

「お嬢様」

「なに?」

「湯を沸かしていますが」

「……ありがとう」

本当に良く出来たメイドだと相手を感心し、グローディアは屋敷の浴場へと向かう。

ティーレの手を借りて服を脱ぎ……グローディアは浴室に入ろうとした足を止めた。

「ティーレ」

「はい。お嬢様」

「一緒に入りなさい」

「ですがまだ薪をくべたりしなければ」

「良いから入りなさい」

逃がさない様子のグローディアにメイドは小さく笑った。

「はい。お嬢様」

着替えの準備をしてからと言うことで先に浴室に入り何もせずぼんやりと立っていると、普段ならメイド服姿で入って来る彼女が全裸となって来た。

「お風邪を引きます」

「大丈夫よ。十分に暖かいわ」

「……」

困った様子でため息を吐くメイドの手を借り髪と体を綺麗にしていく。

『お先に』と湯船の方に行くように言われたが、グローディアはそれを断りメイドの髪と体を洗う。

初めての行為に少し笑いながら……全てが終わるとそっと彼女を背中から抱きしめた。

「お嬢様?」

「ごめんなさい。ティーレ」

「なにっ」

メイドの耳に届いたのは柔らかな口調の魔法語だった。

一瞬で意識を狩り取られ……ティーレは深い眠りの世界へと落ちて行った。

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