軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

何を殺せば良いの?

《敵は2人》

月明りを頼りに歩く女性……ユーリカだ。

彼女はただ1か所に向かい足を動かしていた。

王女や魔女はまだ良い。最悪武力で鎮圧できる。

問題は自分の武ではどうにもならない相手と、実力を隠している厄介な元暗殺者だ。

ただ串刺しは動かないと判断した。あれは基本放任主義だ。

一番の強敵はカミューだ。

足を止めユーリカはそれを見た。

待ち構えて居た。元暗殺者が。

「何をしに来た?」

「ノイエを連れて行く」

「ならお断りだ」

指をバキバキと鳴らしてカミューは軽く構えた。

現状魔法が使えないぐらいだ。それぐらいなら問題は無い。

と、スラリと剣を抜いた相手を見て苦笑する。

「卑怯だろう? こっちは素手だぞ?」

「分かっている」

「……」

今にも泣き出しそうな相手の顔を見つめカミューは口を閉じた。

「だけどあの子を連れて行くしかないの。そうしないとアイツ等はあの子の首に巻かれた首輪を破裂させる。それもあの子が死ぬまでずっとっ!」

悲痛な叫びだ。

ズキッと胸の奥が痛むのを感じながら、カミューは顔色一つ変えずに相手を見つめていた。

「だから壊すのか? ファシーのように?」

「っ!」

大きく息を飲んでユーリカが震える。

「……ファシーは?」

「ノイエに大怪我を負わせた」

「うそ……でしょ?」

「本当だ。だから今は隅に放り投げてある。寄ると構わず攻撃して来るからな」

「……」

涙を落とし両肩を震わせながらもユーリカは構えた剣を降ろさない。

覚悟が決まっているのだろうと……カミューも理解した。

「来いよ。化け物に調教を受けた元暗殺者の実力を見せてやる」

「そう」

スッと目を細めユーリカは言葉を綴る。

「魔法かっ!」

首輪をしていたから油断していたカミューは相手の視線から目を背ける。

だが半身が、鉛でも巻かれたかのように重くなる。

「卑怯だろう?」

「何とでも言って」

近づく相手にそれでも踏み込みカミューは拳を振るう。

あっさりと交わされまた目を覗き込まれた。

「ごめんなさい。だけど今度は失敗しないから……」

「だったらファシーを治してやれよ。そうすれば信じる」

「……」

返事は無く相手にその目を覗き込まれたカミューは意識を手放した。

「どう言うことよ!」

襟を掴んで騒ぐ元王女にカミューは眉を顰める。

「仕方ないだろう? ユーリカに魔法を使われたんだ。こっちは素手だし魔法も使えない」

「それでもノイエを護るのが貴女の役目でしょう!」

「勝手に決めるな。私はあの子を大切に思っているし可愛がっても居た。けれどこんな状態で何があってもあの子を護りきれると誰が言える?」

相手の襟首を掴み返しカミューは相手を睨み返す。

「何より私は……お前が大切にしていた人も護れなかったんだぞ?」

「それは……」

グローディアとすれば返す言葉が無い。

必死に王妃を守ろうとして咎人になったカミュー。

何より全ての原因を作りだしたのは他ならないグローディアなのだ。

「信じて待つしかない」

グローディアから手を離しカミューはその目を施設の中央に向けた。

「ユーリカだってノイエを大切に思っているのだから」

「お姉ちゃん?」

「ごめんねノイエ」

涙ながらに謝るユーリカに、ノイエは頬を引き攣らせながら顔を左右に振る。

「へい、き」

「でももし失敗したら」

「平気」

手を伸ばし相手をギュッと抱きしめる。

溢れて流れ込んで来る物で胸の奥がいっぱいなのだ。

「大丈夫」

そっと手を動かして姉の頭を撫でる。

「お姉ちゃんなら出来るよ」

「……ええ」

気づいたユーリカは涙を拭った。

自分は失敗など出来ないのだ。だから失敗など恐れている暇もない。

「お願いお姉ちゃん」

目を閉じてノイエは動きを止めた。

《この苦しいのから、助けて》

胸が張り裂けそうで苦しかった。

頭も破裂してしまいそうで辛かった。

だからもう……ノイエは全てから解き放たれたかった。

「ノイエ?」

ゆっくりと目を開いた少女にユーリカは息を飲んだ。

表情が動かないのだ。

あんなにもクルクルと表情を変えていた少女が笑いもしない。

「ノイエ。私が分かる?」

「……はい」

抑揚のない淡々とした声。

1点を見つめているような視線は、本当に自分を見ているのか怖くなる。

ユーリカは静かにノイエの顔の前で手を動かすが、少女の目は特に動かない。

「ノイエ?」

「平気」

ゆっくりと体を起こし少女は周りを見る。

目的のモノを見つけられなかった様子で……視線をユーリカに戻した。

「お姉ちゃん」

「なに?」

「何をすれば良いの?」

「何をって……」

『この子は何を言っているのか?』

そう頭を悩ませるユーリカに対しノイエは口を動かす。

「何を殺せば良いの? ドラゴン? それともそれ以外?」

「ノイ、エ?」

スッと立ち上がった少女は、顔色一つ……表情一つ変えずにユーリカを見る。

まるでガラス玉のような無機質にも見える瞳で。

「教えて。わたしちゃんとするから。だから教えて」

少女の形をした"何か"がノイエの声を発する。

「何を殺せば良いの? 何をすれば良いの? 教えて……教えて」

「ノイエっ!」

耐え切れず少女を抱きしめたユーリカは、自分の胸の奥が音を立てて砕けるのを感じた。

自分はまた大きな罪を背負ったのだと自覚し……そして耐えられなかった。

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