軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

早く戻してくれる?

一度出会い確認し知っていた。

この場所には物凄い才能を秘めた少女が居ることを。

当初はその少女に作った魔剣を渡し実験……と考えていたが挫折した。

魔剣を作る材料が無いのだ。本当に驚くほど無いのだ。

何より興味があれども動くのが面倒だった。

動くならその力を別のことに使いたい。

つまり魔剣作りをしたい。それが全てだ。

ただ魔力を封じられ材料も乏しいこの場所では魔剣を作るのが本当に難しい。

何より材料が乏しいというか皆無だ。

やはり噂の少女を……ダメだ。流石に人を素材に魔剣を作るだなんて。

でも確か古い文献に人を材料に槍を作って獣退治をしたという記載があったはずだ。

『茶目っ気があることで有名だった刻印の魔女の悪戯書きじゃ無いのか?』と言う説もあったが、刻印の魔女が何も見ずにそんな妄想を描くようなことはしない。

きっと何かしらの何かを見て書き残したはずだ。

つまり人は魔剣の材料になり得るのか?

何回も堂々巡りを繰り返し結論は出ない。

だったらその物を使うのではなく一部を魔剣に出来るか実験するのはどうだろう?

今日の自分の思考は冴えている。忘れないうちに書いておこう。

枝を手に地面にメモを残す。言葉は……『ノイエを魔剣の材料にする』

これで良いはずだ。完璧だ。

問題は普段から誰かと一緒に行動している少女をどう確保するかだ。

「出来ません!」

「……出来ないと?」

突如監視の1人に連れられ中央の建物へと来たユーリカは、そこで初めて施設長なる人物と対面した。

出会った彼はユーリカの魔法を頼ってある1つの命令を下す。

『戦闘に適していない人物を戦えるようにしろ』と。

「私の魔法は強い暗示。限界もあります。人にドラゴンよりも高く飛べとか早く走れとか……そもそも出来ないことを命じることが無理なのです」

正攻法で反論するユーリカに、施設長は苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる。

「ならば仕方ない」

うんうんと頷いた彼はその目をユーリカへと向けた。

「戦えない者は要らないな。別の施設に送ることにしよう」

「っ!」

別の施設? ユーリカはそれが何なのかを知らない。

けれどうすら笑う相手の様子からろくでもない場所だと察しが出来る。

「人体実験を主に行う場所だ。ここから消えた者も数人あっちに運ばれ良い材料になっているとか」

「……」

奥歯を噛んでユーリカは耐える。我慢する。

自分は幼い頃からずっと我慢して育ったのだ。いまさらその我慢を続けることぐらい、

「まずはファシーと言う少女からだな」

その少女はノイエと仲良くしている心優しい少女だ。

暴発していた魔法は止まったが、今まで傷つけてしまった人たちといきなり仲良くすることが出来ないらしく、日々1人で行動している。

そんな彼女の傍でノイエはいつも幸せそうにしているのだ。

見捨てれば良い。実力もなくこの場に来たのが運の尽きなのだから。

「それから何人か処分し……ああ、あの少女も『廃棄処分』とするか」

「どうしてっ!」

堪えきれずにユーリカは叫んでいた。

「決まっていよう? 彼女の異世界魔法とやらは使えない。異世界の化け物を呼び出すが制御できていないではないか? 自分の背中を襲うかもしれない化け物に背を預けて戦えなど狂気の沙汰だ」

そう言われてしまうと反論が出来ない。

「どうするのかね? ユーリカよ」

「……分かったわ」

最初から選択肢など無かったのだ。

項垂れたユーリカ深いため息を吐いて口を開いた。

「分かった。するから……少し時間を頂戴」

「何故時間が必要なのかね?」

「実験をする必要があるからよ」

告げてユーリカは顔を上げて相手を睨む。

しかし彼は口の端を歪めて笑みを浮かべる。

「ならばその実験に成功するが良い。確か君もあの少女を可愛がっているとか?」

「……」

何も答えずユーリカは相手に背を向けた。

早く戻り……自分1人でするしかない。誰にも話せない。

「早く戻してくれる?」

冷たい目を施設長に向けユーリカは口を動かした。

「時間が無いのよ」

「宜しいのですか?」

「何がだ?」

出て行った桃色髪の女性を見送り、施設長であるゾングは部下の声を聴きながら自然と貧乏ゆすりを始めた。

「あれは向こうの施設が欲している人材でしょう」

「だからだ!」

声を荒げてゾングは机を叩いた。

彼は焦っていた。向こうは着々と成果を上げているのにこちらは何も変わっていない。

魔女に魔道具を作らせていた頃はそれほど焦りもしなかったが、余りにも売れる物だからつい市場に流し続けていたら収集家たちから疑いの声が出たのだ。

『アイルローゼの作品が多過ぎる。彼女は生きているのではないか?』と。

あの時は本当に焦った。部下から報告を受けた時は心臓が口から飛び出すかと思った。

急いで製造を止めて市場に出回っている商品が落ち着くのを待った。その隙に向こう側の発言が強まったのだ。

向こうには元魔法学院の副学院長だった者やゴーンズも居る。

何よりあのルーセフルトの天才児が1枚噛んでいるとも聞く。

さっきの女性を欲しているのはその天才児だとか。

「こちらで成果を上げなければ私たちは役立たず扱いだ。分かっているのか?」

「分かってはいますが……」

部下は頭を掻いて苦々しく笑う。

「あまりやり過ぎるとアルフレットの奴が動きますよ?」

「分かっている!」

あの忌々しいお目付け役が居るからこちらの施設では実験など出来ないのだ。

今回のことだってあれが報告に出ている隙を狙ってのことだ。失敗は許されない。

「ああ! どうしてこうも私の足を引っ張る無能ばかりが!」

ガシガシと頭を掻いてゾングは吠える。その様子を見て部下は胸中で呟く。

『お前が無能だからだろ?』

無能でも上司だから従うしかない。彼はバレないようにため息をついた。

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