軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

追憶 エウリンカ

自分がすることは普通のことだと思っていた。

何でも自分の家系は先祖代々、あの始祖の魔女の血を引いているとか自慢している一族らしい。そんな一族だから自分みたいなのが生まれてもおかしく無いはずなのだ。

目の前にぬいぐるみがある。自分はそれを別の物に出来る。だから魔力を手にしてぬいぐるみを材料にちょちょいと材料を足して……たぶん料理を作る感覚に似ているんだと思う。料理なんてしたことは無いけど。

クルクルと混ぜ合わせて成型すれば剣が出来る。魔剣だ。

ぬいぐるみとその辺の物を混ぜて何故突風を生み出す魔剣が出来るのかは知らない。それは自分の興味の範囲外だ。自分の興味はあくまで魔剣作りだ。どんな魔剣を作るのかを想像してそれを作りだす。興奮が止まらない。材料があればあるだけ可能性は無限大だ。

どうやら自分は色々とやり過ぎたらしい。反省が必要だろう。反省だ。

ガタゴトと揺れる馬車に押し込まれ自分は王都とやらに移動中だ。見送りに出た両親は自分が居なくなることを喜んでいるように見えた。どうやら魔剣を作りだす自分が怖かったと見える。

我が子だから多少のあれは耐え忍んでくれるかと思ったが、どうやら自分の思い過ごしだったらしい。魔法では無い別の何かを使う自分を心底恐れていた両親は王都の魔法学院とやらに預けることにしたのだ。預けると言っても一方通行で返品不可だ。つまりは捨てられた。

原因はやり過ぎたことだと理解出来る。だから最初の反省に戻る訳だ。

王都に着いて自分は学院長なる人物に魔剣作りを披露した。

実は簡単にやっているように見えるが、これをするのには大量の魔力を使う。自分は日々生産される魔力を貯めに貯めて圧縮してそれを一気に開放して魔剣を作る。

だから出来て10日に1本が限界だ。それ以上は魔力の供給をどうにかして欲しい。

学院長とやらに披露した魔剣はまあそれなりの出来だった。

だけども彼は魔剣を手にすると傍に居る人にこう告げたのだ。

『これはあれだ。世に出しちゃダメな類の人間だな』

失礼を通り越して酷い言葉だと思う。

思ったのだが……彼は自分に特別な場所を準備してくれた。

学院の地下に一室を作りそこで提供される材料で魔剣を作れと言うのだ。

何と素晴らしい学院長だろうか。

三食付きで好きなだけ魔剣を作れと言うのだ。

自分は相手の申し出を受けて地下室の住人になった。

たまに日光に当たらないと病気になるという理由で地下室から引っ張り出されるが、出来たら病気になっても良いからここにずっと居たいぐらいだ。

決して自分が横着しているとかでは無い。自分は魔剣が作れればそれで良いのだ。

「初めまして」

「誰かね君は?」

ある日のことだ長い赤髪の同じぐらいの年齢の相手がやって来た。

ローブを身に纏った偉そうな感じでだ。

「私は術式の魔女。貴女がこの牢獄から這い出たら始末する役目を受けてるわ」

「ふむ。安全のためにか……それは仕方ないな」

どうやら上の人間は自分のことを警戒しているらしい。

自分としては這い出ている暇があるなら、ここで次はどんな魔剣を作るのか考える方が有意義だ。

「貴女はどんな物が作れるの?」

「自分は酷く不器用な魔法使いだ。魔剣しか作れない」

「……自分が何を言っているのか分かってるの?」

「ふむ。残念なことに理解されないが」

適当に材料を手にして手に魔力を集める。

それをいつも通りに混ぜ合わせて……1本の魔剣を作りだした。

「御覧の通りに魔剣だ」

「……槍にしか見えないのだけれど?」

「投擲を目的に造った魔剣だからね。形が槍に寄ってしまったようだ」

出来たばかりの魔剣を魔女に手渡すと、彼女はそれを見つめて苦笑した。

「醜悪ね。魔法を宿して目標の前で破裂する仕掛け?」

「正解だよ魔女とやら。それを見抜くなんて凄いね」

「ええ。魔道具の製造だとこの国一と呼ばれているから」

魔女はそう言って手にしていた魔剣を壁に寄りかけた。

これも材料を届けに来た者が回収して行く。どんな風に使われるかは知らないが、国王陛下に届けられるらしい。

「ねえ?」

「何だい」

「……貴女はここでこんな武器ばかリ作っていて楽しいの?」

「難しい質問だね。自分は魔剣しか作れないから武器ばかりと言われると何とも言えない」

本当に魔剣しか作れないのだからそれをどう使うのかは手にした者次第だ。

包丁だって使い方によっては料理に使えるし、ナイフの代わりにもなる。人殺しにだって使える。つまりは製作者の意図としない使い方をするのまでこっちが責任を取るのは無茶な話だ。

「そうね。確かに」

「ただ剣である以上武器として使うのは仕方ない。こんな物で料理をするのは頭に病を抱えた者だろう」

「そうね」

苦笑して魔女はこちらに背を向けた。

「また何かあったら遊びに来るわ」

「そうか。なら何か珍しい物を持って来てくれ。普通に手に入らない鉱石などは大歓迎だ」

「分かったわ」

そう告げて彼女は出て行った。それから何かあると彼女はここに来て愚痴を言っていた。

最後に来た時はプラチナのプレートを1枚置いて行った。

『たぶん最後だから大奮発よ』

そう言って立ち去った魔女の表情が忘れられず、自分はそれを材料にちょっとしたとても小さな魔剣を作った。作って隠した。

自分の体の中に……女性は男性とは違い隠そうと思えば隠し場所があるのだから。

何日も過ぎたある日のことだ。それは不意に聞こえた。

『……』

背筋に冷たいものが走り、耳障りな声がした。

何かが自分の中を覗こうとしたのが大変腹立たしくなって……出来上がったばかりの魔剣を手に鉄の扉を打ち破り長い階段を昇って外に出た。

誰だか知らないが敵意と殺意を抱いた。だから暴れた。暴れ続けた。

魔剣の魔力が尽きて自分は捕らえられた。

ただ存在が隠されていた自分は魔力封じの首輪を付けられ個室に押し込められた。

それから幾日も経過し……ようやく解放されるとある施設に放り込まれた。

自分はその施設で無限の可能性を持つ存在と出会う。

あれを魔剣に出来たら……興奮が止まらなかった。

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