軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

貴方たちのハッピーエンドを

「カミューだって元は人間なんだから背後から全力で攻撃すれば勝てると思うんだ」

「……カミューが振り向きながら放った拳で大惨事になったのを見たよ。君もああなりたいんだ。骨は拾うから頑張れ」

即死確定なの? 何より大惨事って何? バックブローで顔面バーンとか?

「最近思うんだよ。ノイエの中の人たちって異常じゃない? 強すぎない?」

「そういう人たちが集められたからね。それが正しいんだと思う」

「誰か僕にカミューに勝てる方法を教えてくださいっ!」

「真面目に鍛えるしかない。それでも多分勝てないと思うけど」

真面目かっ!

僕としてはカミューに勝てる方法を教えて欲しいのだ。

絶望的な会話を僕の前に居るノイエ越しにリグとする。

打倒カミューのプランが全く思いつかないのだ。

ノイエはリグを後ろから抱きしめて居るだけで機嫌が良さそうだ。

いつも通りに無表情だけど、アホ毛が犬の尻尾のようにフリフリと動いて止まらない。

昨夜はリグのお陰でノイエが妊娠しない謎が解けた。

犯人はあの狂暴女だ。過保護も過ぎれば大迷惑なのだと言いたい。

ノイエの祝福はあの狂暴女が与えていないのは知っているがそれは気分だ。

敵は大きくて強いほど良いと誰かが言っていた。誰の言葉かは知らないけど。

起きてからリグを連れ出し、3人でナガトに跨り王都へ向かう。

向かう場所はあそこだ。ただ直接は逢わせられないから……そこはノイエの超機動頼りだ。

リグには変装の為にポーラの旧式メイド服を着て貰った。ある1点のサイズが大問題だったけど、切って生地を足して無理やり誤魔化すという選択肢でクリアーした。

製作を手伝ったポーラがリグの胸を見つめ、自分の胸を押さえ絶望したような表情を浮かべていたけど。

あれと張り合うのは無謀だ。ポーラが成長期であったとしてもあれほど育つとは思わない。

「でも本当に良いの?」

「ああ。と言うか、こっちが頼みたいぐらいなんだよね」

今回の件で先生たちには大変お世話になった。

金銭的な支払いは終わっているけど、貰い受けた過治癒の矢のお礼がまだだ。

診療所に到着するとリグが懐かしそうに目を細めて辺りを見渡す。

確か学院を出てからここで暮らしていたはずだ。そしてここは彼女が罪を犯した場所でもある。

「大丈夫。リグ?」

「……少し」

軽く顔を上げて息を吐いたリグは、目元を拭ってそのまま空を見つめていた。

トコトコと近づいたノイエがそんなリグを背後から抱きしめる。

幾らリグが望んだとしても多少配慮に欠けていたかもしれない。

彼女が落ち着くまで待つのは……家族としては当然かな。

コンコンと音がして診察室に居たキルイーツは視線を巡らせる。

普段ならそんな音など無視するのだが……子供の悪戯にしては荒々しくなく、合図のような叩き方に思えたのだ。

窓の方から聞こえた音だったと思い改めて向けた視線の先に……彼はそれを見た。

最後に見た時と違い成長した 養女(むすめ) の姿をだ。

「……リグッ!」

慌てて窓に駆け寄る。

窓越しに居る彼女は、娘は、そこで柔らかく笑う。

窓を開けようとするが鍵が締まっていた。急いで鍵を外す為に視線を動かし窓を開ければ……そこには誰も居なかった。

視線を逸らした隙に消えてしまったのだ。

「リグ……」

一瞬の幻だったのか? そう思い落胆するキルイーツは、ふと窓の横に立つ人物に気づいた。

「まっそんなもんですよ」

「……お主?」

慌てて外壁に寄りかかる元王子に目を向けたキルイーツは、遠ざかる彼の妻の後ろ姿を見た。

確実に彼女は何かを抱いているように見える。微かに見える腕は褐色の肌をしていた。

「今はこれぐらいで勘弁してください。それと……絶対に秘密でお願いします」

「……黙っていれば、またはあるのか?」

その問いにアルグスタは小さく笑う。

外壁から背中を剥して水桶に頭を突っ込んでいる愛馬の元に歩きながら口を開いた。

「僕は基本幸せな話が好きなんで、死刑にならない程度にこれからも悪さをする予定です」

「……お主らしいな」

苦笑しながらキルイーツは深く感謝した。

もしまた亡き娘に逢えると言うのなら……何と素晴らしい未来が待っているのだろうと心の底から思える。

「絶望をしても生きてみるものだな。本当に」

「……その意見には賛成よ」

クスクス笑いながらポーラの姿をした刻印の魔女は遠い場所に目を向ける。

ハッピーエンドは嫌いじゃ無いが、監視されている身である彼が動けば問題が生じるというのに……本当に全力で好き勝手をして厄介事を生み出してくれる。

何度誤魔化してもそれを幸運だと思っているのか?

たぶん何も考えずに活動しているのだろう。

本来なら……くだらないことなら自業自得で見捨てるが、ハッピーエンドを謳っての行動なら手助けの1つもしてやりたくなる。それにバットエンドは可哀想だ。

自分としても好きじゃない。

「感謝しなさいよね。私がとっても悪い魔女であることに」

軽く指を動かし、宙に言葉を綴ってそれを弾いて魔法とする。

拡散するように広範囲に魔法を飛ばして対象の人物たちを狙い撃ちした。

「……だから私に見せて見なさい。貴方たちのハッピーエンドを」

クスクスと笑い魔女はその場から消え失せる。

悪い魔女は、真面目に仕事をしていた監視たちの記憶を軽くいじって操作した。

だって彼女は自称……とても悪い魔女なのだから。

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