軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

もう無理っ! だから後は任せたっ!

ユニバンス王国王都内・王弟屋敷

窓際に立ち呼吸を整える。使うのは初めてなのだ。

「風よ。全ての風よ……」

そっと天に手を伸ばし膨大な力を発する。

「あの場所に……」

見つめるのはただ一点。巨躯の化け物の頭上。

命令は空へと広がり実行された。

エウリンカの魔剣に全てを託す。もうそれしか選択肢は無い。

覚悟を決めて投げやりの体勢を取る。何となくテレビで見ただけで経験は無い。助走を付けて全力で放れば良いんだよな?

覚悟を決めて駆けだそうとしたら、突風が吹いて来た。って、マジか~!

僕の体を持ち上げてキングより後方へ、王都側へと一気に吹き飛ばされた。

ゴロゴロと地面を転がり……何か僕って地面を転がる回数多くない? これって意外と痛いし、そこそこ怪我もするんですけどね?

槍を支えにどうにか立ち上がると、思いもしない光景が目に飛び込んで来た。

暴風に翻弄されるキング様の姿だ。

と言うかキング様の周りにだけあの風っておかしくない?

ビックリ映像を見ていたら今度はキング様の頭上で雨雲が発生して大雨が降り出す。

と、何か白い塊が飛んで来たから回避すると……氷だね。拳ほどの。

「何これ?」

フッと糸が切れたように力を失った相手を急いで抱きかかえる。

「もうフレアったら……お腹の子に何かあったらどうする気なのかしら?」

「お母様が支えるって信じてたです~」

「あら? 私ってそんなに信頼されていたのね。嬉しいわ~」

力の消耗と空腹で目を回す非公式の娘を抱きしめラインリアは嬉しそうに笑い頬ずりをする。

極度の疲労と空腹で目を回すフレアは抵抗など出来ない。されるがままだ。

「でもおねーちゃんの祝福は凄いです~。天候を操れるです~」

「ええ。フレアが居れば毎日お外で洗濯物が干せるわよ?」

「です~」

それ以上の使い道があるが2人は追及しない。

フレアの祝福が見つかったのはただの偶然だった。

シュニットがキャミリーに『このように聖板に反応が』『数が合わないです~』と使い方の説明をしている時に発見されたのだ。

それで『ここ最近王都で死にかけた者で蘇った者は居たか?』と思い起こすと該当者が2人居た。前王と2代目メイド長だ。

城に来たフレアに聖盆を使用し確認すれば、彼女が該当者と判明した。

その力は『天候』だという。その名の通り天候を操作する破格の祝福だ。

「ん~。でも~。あの大きいの落ちて無いです~」

遠くに目を向けたキャミリーがそれに気づく。

風でも雨でも雹でもあの大型は地面に落ちなかった。

ラインリアはフレアをソファーに寝かせると、部屋付きのメイドに食事の準備を命じた。

「それはダメね。折角フレアが頑張ったのに」

「です~」

「ん~」

頬に手を当ててラインリアは少し考えた。本当に少しだ。

だって可愛い娘が頑張ったのにその結果が実らないのは何か許せない。

そっと右手を突き出し、ラインリアは大型のドラゴンを視認した。

「えいっ」

可愛らしい声と同時に彼女は自身の右手を振り下ろした。

あれで落ちて来ないとか……これって僕が飛ぶしか選択肢が無いんですけど?

フラフラとしているけど宙に浮いてい居るドラゴンを見つめ……八方塞がりを体験していた。

無理です。もう無理です。どうしたらあれが……あれ?

気のせいかキング様が激しく羽を震わせ一気に地面に落ちてきた。

「っておい!」

地面に衝突し衝撃波が来る。

またゴロゴロと地面を転がりました。

もう無理。全身が激しく痛いんですけど。

「こん畜生!」

気力で起き上がり槍を引き摺ってキングの元に向かう。

物凄く右肩が痛い。転がった時に打ち付けたのかビリビリする。それでも歩いて近づく。

向こうも体を起こしまた羽根を動かし飛ぼうとしている。これで飛ばれたら僕の負けだ。

急いで、駆けて行きたいのに体が動かない!

「動け~!」

必死に足を動かすが双頭になったドラゴンが、まるで笑ったかのように口を広げた。

「全力勝負!」

響いた声に僕が笑った。

キングの羽根に向かい土の両腕が生じて殴りつけた。

「やれば出来るじゃんか! ニート!」

向けた視線の先で魔力を出し切ったのか卒倒するイーリナの姿が見える。それでも十分だ。

「これでダメだったら後で絶対に泣かすっ! エウリンカっ!」

祝福と魔力を注いで僕は激痛を発する右肩を無理やり動かし、魔剣と言う名の槍を放った。

放った魔剣は速度を増してキングの元へ飛んで行く。

と、左の頭が魔剣を咥え……そして弾けた。頭も魔剣もだ。

散弾だ。あの魔剣の効果と言うか能力は散弾だった。

投擲専用の魔剣とは確かに嘘じゃない。投げた魔剣が弾けて四方を襲うのだ。どんな下手くそでもダメージを与えられる。何よりあの魔剣は僕の祝福まで得ている。

ズズーンと、全ての頭を失ったキングが地面に伏した。

それを確認し僕は崩れるように地面に座る。

「終わりだよな?」

これで延長戦とかあったらただの拷問だろう?

大きく息を吐いて僕は地に伏したキングを見つめる。

せめてもの救いはブレス攻撃などが無かったことだ。あれがあったら……って、今動かなかったか?

ビクビクとキングの体が震え、ゆっくりと羽を動かす。

「嘘だろ?」

頭を全部潰したのに動くとかマジあり得ない。

近くに転がっている石を掴んでそれを投げようとするけど、ズキッと右肩に痛みが走った。

ちょっと無理だ。だからそのまま後ろへと倒れる。

だからもう限界だ。全身痛いし、立てる気もしない。

ゆっくりと動く左腕を動かす。お腹の上まで運んで右手で左腕を擦る。

そして左腕を空に向けて持ち上げて、

「もう無理っ! だから後は任せたっ!」

魔力も祝福も全部注いだ金色のシャボン玉が僕の上空で生じた。

「全部持って行けっ!」

「……はい」

シャボン玉が消えた。聞き慣れた声を残して。

あっダメだ。何か涙が出てきた。

ボロッと涙を溢しながら僕は空を見続ける。

神にもすがる思いだったのに……彼女が来たからもう大丈夫だ。

受け取った物を手にし、ノイエは地面を蹴った。

軽く押すだけで金色の玉は割れる。

「これでっ!」

起き上がり飛び立とうとするドラゴンの背に彼女は降り立つ。

「終わりっ!」

全力で振り下ろされた右の拳は……地面まで抉った。

勿論直撃を受けたドラゴンは、木っ端みじんとなり完全に消滅した。

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