軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アイルローゼ以外も居る?

ユニバンス王国・南部ミルンヒッツァ家

「これを知っているとは流石だな。ハーフレン様」

「グローム様?」

片手でミシュを制しながら、ハーフレンはゆっくりと立ち上がる。

「何故それを?」

「……私も夢を見た馬鹿者の1人なのだよ」

「夢ですか?」

「左様。ウイルアム様が唱えた『この大陸に平和を』と言う夢をな」

グロームは苦笑した。

「今となれば愚かなことをしたと後悔している。だがあの頃はその言葉に夢と希望を抱いたのだ」

「だから?」

「ああ。ウイルアム様に手を貸した」

ハーフレンは兄であるシュニットから全てを聞かされていた。

叔父であるウイルアムが描いた平和と言う名の夢をだ。

「ハーフレン様は確か両方の施設を知っているはずですな?」

「ええ」

「そこで何が行われたかは?」

「全貌は把握していません。ですが……」

答えながらハーフレンは言いようの無い違和感を覚えた。

確かに両方の施設は最終的に酷い終わり方を迎えた。

ノイエの居た施設は彼女が全員を殺したと言うことになっている。そしてもう1つの施設に居た者はその体にドラゴンを混ぜられ人工的な竜人とされた。

「お気づきですか?」

尋ねるグロームは何処か答え合わせをしているようにも見えた。

「2つの施設は……それぞれ役目が違った?」

「その通りです」

宝玉を片手で掴み差し出したままの姿勢で彼は言葉を続ける。

「1つはウイルアム様が主体となり運営されました。そしてもう1つはエフリエフ家の者が主体となって運営された」

「ノイエが居たのは?」

「ウイルアム様が運営していたのはロイール領の方です」

軽く頷きハーフレンは内心で思う。『ロイールってどっちだ?』と。

「何故2つに分けたかお判りですか?」

「発覚を恐れて」

「それもあります。ですが勢力争いの部分もあった」

「……資金ですか」

「ええ」

どんなに素晴らしい夢でも、ない袖は振れない。

何より多くの子供を救おうとした結果、1つの施設では収容しきれなかった。

「だから2つに分けて運営したのです」

「そう言うことか」

納得した。だからあの施設は対局と言うか毛色が違ったのだ。

「叔父は本当に夢を見たのだな」

「ええ。あの人はお優しい人でしたから」

だからこそ最後は全てを奪われてしまったのだ。

「彼は考えたのですよ。あれほどの才能を持つ者たちが家族のように協力して目標に向かえばどれほどのことをなせるかと」

「……確かに大陸ぐらい支配できそうだな」

化け物揃いだった可能性のある施設の面々だ。それが全員で協力でもすれば……

「まさか?」

自然とハーフレンの口からその言葉はこぼれていた。

『全員が協力すれば大陸すら支配できる』

「まさか……」

もう一度呟いてハーフレンは義父を見る。

彼は何故か静かに笑っていた。

「きっとウイルアム様がご存命なら、私と同じような顔をなさったでしょうね」

「……アルグスタは何を隠している?」

「さあ? 私には分かりませんよ。ですがウイルアム様のお考えが実現していれば、共和国程度の国など少数で滅ぼすことも出来るでしょう」

告げてグロームは手にしていた宝玉に布を掛ける。

「意志を持って握らなければ簡単には割れないそうです」

「どう言うつもりですか?」

フルフルとグロームは頭を左右に振る。

「私たちが望んだのは平和なのですよ。ですが誰かがそれを歪め恐ろしい道具を作りだした。それを許せるほど私も人間をこじらせていません」

「……次に狙われるのは貴方になるかもしれませんよ?」

「その時は我が息子であるココノが跡を継ぎましょう。それにリチーナも居ます。仮に家名が潰えても血脈が残るのであれば十分です」

改めて突き出された宝玉をハーフレンは両手で受け取る。

見た目よりも軽く感じるそれを斜め後ろに居るミシュに渡した。

「これも調査の対象になりましょうか?」

「……色々と複雑だが対象には出来ませんよ。事情は聴くことになりますが」

「そうでしょうね。一応それは『司祭』と名乗る者が持って来た物です。その司祭が何者なのかは詳しくは知りませんが」

「分かりました。詳しくは副官に」

スッと扉が開いてやって来たコンスーロにグロームを任せる。

義父が出て行ってからしばらくして……盛大に息を吐いたハーフレンは椅子に座り込んだ。

「おうおう。この糞上司」

「ヤバいな。すっかり忘れてた」

「だよね? ですよね? ミシュちゃんもちょっと漏らすかと思ったよ」

異世界のドラゴンを呼び出す宝玉。

そんな化け物の相手が出来る者など王都に居る馬鹿夫婦ぐらいなものだ。

「ヤバいな」

「結構本格的にね」

自分が持つ宝玉をどうしたものかと困るミシュは、とりあえず上司を見た。

「どうする?」

「王都の兄貴の所に持って行くしかないだろう?」

「誰が?」

「……往復で3日やるから頑張れ」

「おうおう。随分と無茶を言う上司だな全く」

だがそれしか方法が無い気もする。

諦めて袋を取り出したミシュは、宝玉を詰めてそれを背負った。

「報告することは?」

「初日である意味大当たりを引いたからな……ありのままを報告してそれを渡せ」

「了解です。じゃあ私は行くぞ?」

「任せた」

「へーい」

窓を開けて飛び出して行ったミシュはもう姿が見えない。

ただ遠くから『どっから湧いた! この変態がっ!』と叫び声が聞こえた気もしたが、ハーフレンは両手で耳を塞いでついでに目も閉じた。

《あの馬鹿夫婦が想像以上のことをするのが普通だと思っていたが……》

考えられるのは、ノイエの中に居るというアイルローゼだ。

もし彼女が嘘をついてるとなれば……それはどんな可能性がある?

《アイルローゼ以外も居る?》

全身がブルッと震えた。

ノイエの中に後数人が居て、それがあの魔女のように自由に出入りが出来たとしたら?

確かに2人で共和国ぐらい弱体化できるかもしれない。

《……今のところは忘れておくか》

厄介な仕事をしている最中にそんな恐ろしい問題を抱え込みたくない。

それがハーフレンの本音であり、何よりあの馬鹿弟への配慮でもあった。

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