軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ギロチン

「アルグスタ様~?」

机の上から降り注ぐ声がとっても怖いです。

慌てて逃げ出そうとするイネル君の首根っこを捕まえて逃さない。

拷問も一緒に受ければ半殺し……字余り季語無し。

「うちの妹に何を吹き込んでいらっしゃるのかしら~?」

「……たぶん事実を?」

部屋の温度が数度下がった気がする。

真実を告げたら殺されそうになるとか、どこの恐怖政治ですか?

つかこの人ってたまに変なスイッチが入るよね? 大丈夫? 精神的に病んでる人なの?

「…………ギロチンをご存知ですか?」

また机の上から冷ややかな声がっ!

「人の首を上から落ちて来る大きな刃で刎ねる処刑道具です。このユニバンスでも使われているんですよ? でも他所とは違い処刑道具ではなく拷問の道具としてです。

首に強化魔法をかけて大量の重りを付けた刃を乗せて置きます。すると魔法がゆっくりと力を失うごとにギロチンの刃が少しずつ首に食い込んでいくのです。

私……あの拷問はちょっと好きなんです」

何故かうっとりとした声音に、聞かされているこっちは全身冷や汗塗れだ!

ただいまの発言について審議しますと……決して無視できない部分が最後の一文に!

ゆっくりと机の下から頭上に向かって手を伸ばす。

「は~い先生」

「何ですか?」

「ちょっと好きなんですって……先生はその拷問に立ち会ったことが?」

「……機密事項でしたね。忘れて下さい」

物凄くさわやかな感じで無理難題をっ!

このままではこっちの身が危ないので切り札を使おう。

何かの為に残しておきたかったが仕方ない。

「は~い先生」

「何ですか?」

「先生がお休みの日に……開いた宿舎の窓から卑猥な声が鳴り響くと多方面からの苦情が」

「……あれは部屋の中が暑かったので」

「窓から顔を出した男性が、命乞いをしながら部屋の中に引き込まれて行く姿が怖いと言う苦情も」

「……あれは彼の大好きなあれです。あれなんです」

ひょこっと顔を出して相手を確認する。

顔を真っ赤にしていやんいやんと首を振る姉の様子に……床で腰を抜かしている妹は、ちびったりしてないよね?

ただ相変わらずらしく無くて似合わないリアクションだな。

「一番多いのは、真昼間から『そんなに立たないから~』の叫びが子供に良く無いと言う苦情と、『大丈夫。立たなくても出るから』と言う恐ろしい発言に、男性騎士から怖すぎると言う苦情が」

「……愛があれば平気ですっ!」

「意味が分からんし。何よりフレア先生に対して『女性宿舎からの引っ越しをお願いしたいのですが?』と言う上申書が宿舎の管理人さんから来てます。

現在こっちで保留にしてるけど……まだギロチンとかしたい?」

「……」

全身から気の抜けた感じで息を吐き、フレアさんが疲れた笑みを浮かべた。

「以後気を付けます」

「はい。僕もこれ以上は言いふらしたりしません」

これにて手打ちです。

あわあわとイネル君がクレアを起こしに行って蹴られてる。

何か股間の辺りに手を当てて真っ赤になってるけど……気づかない振りをするのが紳士という者さ。

「で、頼んだケーキは? それを食べながら、クレアが何故家族に黙ってここで働いているのか吐かせることにしよう」

「あの~アルグスタ様?」

「なに?」

「ちょっとその……お花摘みに」

ソワソワした様子で彼女が出口に向かう。

「ダメです」

「何故!」

「そのまま逃亡するから?」

「しません! だから行かせてください!」

「でもダメ」

「何故!」

「やっぱり逃亡するから?」

「本当にしませんって」

まっイジメるのはこれくらいで良いか。

「フレアさん。逃げないようについて行って」

「はい?」

「お姉様が来なくても」

「同行を認めないならこの部屋から出ちゃダメ」

「っ!」

カッと赤かった顔がますます赤く……たぶんちょろっと出たのを我慢したけど、本体ご到着で我慢の限界って感じかな?

「分かりました。お姉様……どうか一緒にっ!」

「ええ」

内容を理解していないフレアさんがもう泣きだした妹ともに部屋を出て行く。

これでまた姉が妹の弱みを握ることが出来たはずだ。

「アルグスタ様?」

「ん?」

「クレアに対して厳しいですね」

「気のせいだよ~」

ちょっと良いオモチャ感覚で居るのは事実だけど。

ただ妹とか居たら、あんな感じ突っかかってくる子が良いな。毎日が楽しそうだし。

しばらくすると……笑顔のフレアさんと着替えを済ませたクレアが一緒に戻って来た。

我慢しきれなかったのか。

ノイエの分にと余計に買って来て貰ったケーキが、姉妹の胃袋に消えて行く。

今日の所は仕方ない。こっちも命あっての物だねだ。

「で、クレアはどうして家族に黙って?」

メイドさんが注いでくれるお茶を待ちつつ聞いてみる。

ソファーでケーキしていた彼女が、フォークを咥えて視線を泳がせる。行儀の悪い。

「……お姉様たちのような人生を送るのが嫌だったんです」

沈黙に耐えかねてフォークを口から外した。

「両親は好きです。でも結婚相手を家の都合だけで勝手に決められるのは……正直嫌です。そう思っていたらフレア姉様が自分好みの人を旦那様にすると聞いて」

「……」

だからフォークを咥えて、いやんいやんと喜ばないの。似合わないんだから。

「わたしは魔力が全く無くて魔法使いにはなれません。でも魔力を持つ子供が生まれる可能性はあります。だからわたしも王都で良い人を見つけられればと……」

「そっか」

まだ未成年なのに人生のことを真面目に考えてるんだな。

僕の場合は……拾った宝くじが1等前後賞付きな人生だけど。

「でもこっちに来ても相手次第だと両親に反対されて結局都合で結婚よ? それに……お姉様たちが嫉んで恨んでこれでもかと一方的に嫌がらせして来るし」

つまりそれを体験したってことですよね? 現在進行形ですか? フレアさん。

「それでもわたしは好きな人と出会える機会が欲しかったんです」

寂しそうに笑うクレアが……ちょっと可哀想に思えた。

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