軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

……ホリーより?

「ぬははは~! 久しぶりだね旦那君!」

「レニーラか」

朱色の髪を揺らし、悪友が天井に向けて右手を突き上げた。

意味は分からない。ハイテンションで生きてる生き物だから理解出来ない。

「何だよ~。私だとダメなの?」

「って、今回レニーラは何もしてないよね?」

「え~? したよ?」

「何を?」

「……ずっと応援してた」

とりあえず呼び出したハリセンで相手の頭を一発叩いておく。

バシッと会心の音が鳴った気がする。

「いったぁ~! もうっ! 私の扱いが酷過ぎる!」

「知るかっ! それにお前はエウリンカに色々と教えて先生の怒りを買ったんだろ? そんなのが表に出て来るとか問題だろう?」

「大丈夫ですぅ~。ちゃんとアイルローゼの許可は取ってますぅ~」

何かイラッとしたからもう一回叩いておく。

ちょっと目測がズレたけど、そこは天才舞姫だ……自分から調整してハリセンの下に頭を動かして来た。

「むほっ! 酷いな旦那君!」

「今、自分から食らいに行ったよな?」

「行ってないですぅ~」

ケラケラと笑い、ベッドの周りを移動する彼女はこんな他愛もない会話を楽しんでくれる。

ある意味で一番気負わなくて良いから楽は楽だ。

「ねえレニーラ」

「はい?」

「中の様子はどう?」

「ん~」

だからこそ普通なら聞けない地雷のような質問も出来る。

足を止めて軽く考え込んだ彼女は、ポンと手を打った。

「セシリーンがグチャッとしてて、グローディアがネチャッとしてる」

それは知りたく無いな。うん。

「カミーラはお尻を掻きながら寝てたし、リグはいつも通りぐっすり」

その辺は安定の2人だから良いです。

「アイルローゼとホリーも寝てばかりだし……元気なのはシュシュぐらいかな?」

あのフワフワさんは常に元気だろう。何よりホリーが静かになったのが一番嬉しい。

「ファシーは?」

「あ~」

何故か困った様子で、彼女は視線を泳がせて頭を掻いた。

「今回だいぶ無理したってシュシュから聞いたよ。でもあれはちょっとね」

「ファシーに何かあったの?」

「うん」

バツの悪そうな感じでレニーラが渋い表情を浮かべた。

「ホリーが首を刎ねて置き物になってる」

ちょっと待て。その報告は聞いてないぞ?

「何かしらアルグちゃん?」

翌日レニーラから聞いたことを確認しようとお姉ちゃんを呼んでみた。

呼び出したらノイエの髪が青くなってお姉ちゃんが尻尾を振る小犬のように近づいて来た。

その様子はとても可愛らしいが本日の僕は結構本気です。

「ホリー」

「ん?」

「ここに座りなさい」

「何々? アルグちゃんらしくない命令調で」

僕の言葉に従って目の前に座った彼女を正面から見る。

「ファシーの首を切ったって聞いたよ?」

「あれ? ……レニーラ?」

「うん」

「あ~。そっか」

ポリポリと頬を掻くお姉ちゃんの顔をジッと見る。

僕の視線に根負けして、やれやれと言った様子で彼女はため息を吐いた。

「共和国の議会場でシュシュが出たでしょう? あの時に封印していたファシーが暴れたから私が魔法で刻んで黙らせたのよ」

「何でそんな酷いことをするのかな?」

「仕方ないでしょう? 無理だと知っていてもファシーが自ら引き受けた仕事よ。だから私は彼女を使い倒した」

「お姉ちゃん?」

ジッと見つめたらホリーがまた息を吐いた。

「使い倒したって言葉は確かに良くないわね。でも今回の無茶はファシーが望んだことよ。これは本当」

「どうして?」

少しムッとしてホリーが視線を逸らす。

「……大好きな人の為に精一杯尽くしたい。このことはアルグちゃんが一番理解しているでしょう?

ファシーはずっとこの中で嫌われた存在だった。でもアルグちゃんは彼女に優しくした。ファシーは本当に嬉しかったのよ。自分を人として扱ってくれる貴方が。

だから今回はどんな無茶でもするって、自分から私にそう言ったの。たぶんアルグちゃんが止めるだろうけど、最後までやらせて欲しいって」

告げてホリーはその碧い目で僕を見つめて来た。

「あの子は本気だった。だから私も全力で応えた。

もしそれをアルグちゃんが悪く言うなら、いくら優しいこのお姉ちゃんだって許さない。それはファシーの頑張りを踏みにじる行為だからよ」

「……」

確かにその通りだ。だからってそんな無茶などしなくても良いのに。

「だからアルグちゃんが今することは、お姉ちゃんにきつく当たることじゃ無いと思うの」

「うん。そうだね」

「なら……変わるわ」

ノイエに戻った彼女は、僕の顔を見て首を傾げる。

少し待っているとまたノイエの色が変わった。栗色にだ。

「……うふふ……死んじゃえばっ」

「最初っからそう来るかっ!」

慌てて笑い出すファシーを抱き寄せ彼女の背を撫でる。

「あはは。みんな死んじゃえばいい……いいんだ……」

「ファシー。ダメだよ」

背中を撫でるのを止めてギュッと彼女を抱きしめる。

ビクッと体を震わせた彼女が笑い声を止めた。

「ファシーは優しい子なんだから、誰かを傷つければ絶対に後悔する。泣き叫びたくなる」

「……」

「今回はありがとう。でももうこんな無茶は要らない。君が辛くて心を痛めるくらいなら、無理はしないで良いよ」

「……」

相手の背中と後頭部に手を回して増々きつく抱き締める。

「ありがとうファシー。君が家族の一員で本当に良かった」

「……は、い」

返事が耳に届き、腕を緩めると……ボロボロと涙をこぼす彼女が居た。

「ごめんな、さい」

「うん。こっちこそごめんね。無理させて」

「違う。わたしが」

「でもお願いしたのは僕だからね。ファシーの優しさに甘え過ぎたから」

フルフルと彼女は頭を振ると抱き付いて来た。

「甘えて良い。わたし、いつも甘えて……だから甘えて、欲しい」

「うん。でもファシーが無理するようなことはしなくて良いからね?」

「は、い」

いつものように甘えだした彼女が僕に頬を擦り付けて来る。

「アルグスタ、様」

「なに?」

「わたし役に立った?」

「うん」

「……ホリーより?」

可愛らしい仕草をしながらとんでもない爆弾を投げて来たぞ?

だが僕は無茶に対して無茶で応じられる男でありたい。

「勿論だよ」

「良かった」

柔らかく笑ってノイエから色が抜ける。

と、直ぐに青くなった。

「へ~」

物凄く低いトーンでその声が響いた。

まるで地を這うかのような低すぎる声だ。

「アルグちゃん?」

「ふぁいっ!」

「お姉ちゃん……今の発言に対して納得いく返答が欲しいのだけど?」

バキバキと指を鳴らす彼女を前に僕は腹をくくった。

「言い訳などせんわ! 煮るなり焼くなり好きにしろっ!」

「良い心がけね? その言葉が本気か確認してあげる」

うな~! そっちは……ちょっとそっちはっ! そっちはらめぇ~!

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