軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

まずはこれからでしょう?

「深部に居る人たちの手は借りられそうにないけれど、今回はファシーがやる気だから安心なさい。あの子が本気を出すなら私なんて出番が無いかもしれないわ」

先生が苦笑する。

また出て来たよ? ファシー最強説が。

「ってファシーってそんなに凄いんですか?」

「ええ。彼女の魔法は……育ての親とその師の手によって狂わされているから」

「狂う?」

「そうね……どう説明したら良いのかしら?」

軽く腕を組んで首を傾げて先生がポンと手を打った。

「威力重視で使用者の体を一切気にかけていない魔法ね」

「そんなの使わせないで下さい」

「だから私が手直しをしたわよ」

「威力を高めて安全重視に?」

「貴方の体で試してみる?」

頭を深々と下げてお詫びをする姿勢は大切だと思います。

「安全には十分に配慮したわ。ただ結果としてあれはファシーにしか扱えない魔法になったけれど」

「ファシー専用?」

「ええ。もしあの子が使う素振りを見せたら全力で彼女の後方に向かって走りなさい。それが生き残るコツよ」

どんな最終兵器?

「何より敵はあの共和国の魔女でしょう?」

「ええ。最低でも一発殴ります。多分カミーラ辺りが」

「カミーラなら一突きよ」

死亡確定か。まあその時は念仏ぐらい唱えよう。

と、何故か腰に手を当てて先生が前屈みになって僕を見つめて来る。

その表情は……やはりダメか。誤魔化せないか。

「全力で話を逸らし続けている馬鹿弟子に問うわ」

「はい」

「……エウリンカに聞いたのでしょう?」

少し頬を赤くする先生が可愛らしいんですけど!

「あれはエウリンカの冗談かなって、あはは~」

「……」

相手の視線から温かみが消えて一気に氷点下になった。

これはあれだ。地雷だ。

「先生が僕のことを……嬉しいんですけど、何と言うか正直驚きの方が強すぎて」

「私は人を好きになるなんて信じられないと?」

「はい。というか僕を好きになるのが信じられないです」

「そうね」

氷点下だった視線に熱が戻った。

「正直に言うわ。私も分からないの」

「はい?」

「人を愛したことが無いから自分の感情が分からないのよ」

人差し指を立てて先生が僕の鼻先を軽く突いた。

「少なくとも嫌いでは無い。なら好きだと言えるわ。ただ恋しているとか愛しているとかは分からない」

苦笑して先生は自分の胸に手を当てた。

「少なくとも貴方を想えば胸の中が熱くなる。それが恋なら私は恋している。

何かあれば貴方のことを考える。それが愛というならば私は愛している。

でもそれを実証することは出来ないわ」

「あ~」

「なに?」

「たぶんそれは実証できない類のことかと」

ポリポリと頭を掻いて先生を見た。

「僕はノイエのことをこの世界の誰よりも愛してますけどそれを証明しろと言われると……証明のしようが無いんですよね? だから証明とかしなくても良いと思うんです。

ただノイエが僕の言葉を信じてくれて、それで彼女が僕のことを『愛してる』と言ってくれるならその言葉を僕が信じる。そうすることで人って愛し合うんじゃ無いんですかね?」

先生を相手に物凄く恥ずかしいことを言ってることに気づきました。

良し。これが終わったら頭を抱えて眠ることとしよう。恥ずかし過ぎて悶死するわ!

「証明が出来ないことね……」

うんうんと頷いた先生が表情を正して僕を睨んで来る。

「私がそれを聞いて納得すると思ったの?」

「納得するとか」

「魔女である私がそんな曖昧な答えで満足すると思ったの?」

「……」

「許せないわ。ならば私が解明すれば良いのでしょう?」

「そーなりますねー」

もう好きにして。

やる気を見せる先生が何度も頷いて……ビシッと僕に指を向ける。

「だから貴方も手伝いなさい」

「……」

「解明する手伝いをするのよ。良いわね?」

「はい」

「なら……」

一歩二歩と踏み込んで来た先生の顔が近づいて……キスされた。

「まずはこれからでしょう?」

バックステップで離れた先生がそう言うと、何故か小さく舌を出して笑ってみせた。

「これから少しずつ……付き合いなさいよ。馬鹿弟子」

「ふぁい」

色が抜けて先生からノイエへと戻る。

彼女は軽く当たりを見渡すと……真っ直ぐ僕の所に来て抱き付いて来た。

反射的に抱きしめ返して、その耳元に口を寄せる。

「ノイエ」

「はい」

「今夜はもう寝よう」

「む?」

「寝ます」

「……はい」

渋々納得してノイエを抱いたままベッドに横になった。

「何よ?」

「ん~?」

『うふふ』と笑うセシリーンに対し、アイルローゼは凶悪な視線を向けた。

だいぶ無理をして痛む足も腹立たしいが、そもそもそこに居る歌姫が自分が考えていたアプローチをしてくれたお陰で色々と計画が狂ったのだ。

怒りの感情が沸き起こり殺意しか覚えない。

「彼になら普通に甘えれば良いんじゃないのかと思って」

「ダメよ。出来ないわ」

「どうして? 一度甘えたら……戻れなくなるから?」

笑顔で図星を突いて来る相手が本当に憎い。

「彼には話を逸らしたとか言いながら自分だって話を逸らして……本当にアイルはいざという時に弱腰ね」

「煩い化け物」

「まあ大人の私と違ってアイルはお子様だから仕方ないわね」

また『うふふ』と響いてくる声にアイルローゼの中で、ブツリと何かが切れた。

「元はと言えば貴女が先に大人の魅力を振り撒いて誘うからこうなったんでしょう?」

「……」

明確に感じるどす黒い気配と何より殺意の音に、流石のセシリーンも気づいた。

自身のやり過ぎにだ。

「大丈夫よ。アイルなら次には……アイル? 聞こえて来る魔法語は何かしら?」

「もう貴女は頭が残ってれば十分よね? 人探しはしばらく無いでしょうから」

「……」

「溶けてなさい。セシリーン」

遅かった。何より相手は本気でキレていた。

「ごめんなさいアイル。ちょっと調子に乗って……アイルの反応が可愛かったからついっ」

「懺悔は溶けてからなさい。腐海」

「いゃ~! 痛いのは嫌いなの~!」

その言葉を残し、セシリーンは足からドロッと溶けた。

「フンッ! ……もうっ!」

怒りに任せて床を蹴って、アイルローゼはまだ完治していない自身の足を増々痛めることとなった。

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