軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

完敗なの?

空になった酒瓶をサイドボードに置いてカミーラがやれやれと頭を振る。

そろそろ彼女が全裸なことを指摘しても良いんでしょうか? もしかして姐さんってば普段裸族なの?

「……私は別の施設があるとかどうとかは知らない。ただ"あれ"は死んで私たちが居た施設から消えたのだけは間違いない」

何とはなしに姐さんがそんなことを言い出す。

死んだはずの人物が生きているなど結構な確率で起きているから今更気にしないけどね。

「アイルローゼやグローディア辺りなら知っているかもしれないが……」

「あっ先生に何があったの? シュシュが中途半端に口を閉じて知らないんだよね」

「ああ。ちょっと返り討ちにあって焦げてる」

「……」

「グローディアも両腕や両目を潰されて彷徨ってるしな」

中々の大惨事がノイエの中で起きてるんですけど?

「大丈夫なの?」

「気にするな。良くあることだ」

「良くあるの、ねぇ? 普通両目とか潰れないでしょ?」

「あん? 簡単に潰れるぞ? ちょっと燃やすと目玉はパンと弾けるからな。アイルローゼもグローディアもそんな感じで両目を潰している」

先生もなんだ。何よりどうしたらあんな規格外が人間をそこまでやれるのか知りたいわ。

「どうしたらあの人に勝てるの?」

「詳しくは知らないが化け物と戦ったらしい。それで返り討ちにあって、燃やされた所で相手が禁断症状を出したらしくてな……シュシュが処理して魔眼の奥底に捨てたはずだからしばらくは這い出て来ないだろう」

衝撃的な情報なんですけど?

「完敗なの? あの先生が?」

「ああ。たまにある」

「あるの?」

「魔眼の中だとアイルローゼは得意の腐海が全力で使えないんだ。そのせいでたまに負ける」

あの魔法以外でも先生ってば凄い魔法をバンバン使えるはずなんですけど?

「ただシュシュが言うには完全に罠にはまったらしいからな。相手がそんな物を準備しているとは思わず踏み込んだんだろう」

「そっすか~」

先生もある意味で人だったのね。

と、ここに来てようやくカミーラが自身の状況に気づいた。

辺りを見渡して畳まれた服を掴むと、それを広げて一瞥すると背後に投げ捨てた。

「何故着ないっ!」

「そんな薄いの着るぐらいならこのままでも変わらんだろう?」

「目のやり場に困ってます!」

「いつも見ているだろう?」

「それでもです」

中身が違うと言うことが気になるとね……変な興奮を覚えるんです。

しかし姐さんはポリポリと胸を掻くと、そのまま胡坐をしてこっちを見る。

「話を戻すぞ」

「……どうぞ」

「問題はあれが生きていた時だ」

「問題なんですか?」

「ああ。大問題だ」

真面目な表情をして彼女が頭を振る。

「あれは出来るだけノイエと会わせたくない」

「……壊したから?」

一瞬険しい視線を向けられたが、彼女は軽く鼻で笑った。

「気づいたか? 誰の助言だ?」

「主にレニーラ」

「ああ。なら良い。アイツはアイルローゼから罰を受けて、今は下半身を失って置き物だ」

何をしてるんだ悪友よ?

「焦げてるのにレニーラにそんなことしたの?」

「あれが復讐すると決めた相手をそのままにするか? リグの手を借りて下半身を消し去ったぞ」

「そもそもなぜにレニーラがそんな目に?」

あの悪友はたまに自分の好奇心を満たすために暴走するが、基本は良い子のはずだ。そうだろ?

「化け物に『外に出れる』と教えたのがレニーラらしい」

「納得です。それでアイルローゼは……って化け物ってエウリンカ?」

点と点が繋がった感じがしたよ。

「そうだ。良く知ってたな」

サラリと認めた姐さんに対して全力土下座です。

「お願いします。その人の正体を教えてください。ずっと気になってるんです」

「……言う言う。だから顔を上げろ」

呆れ果てた声を出す彼女が口を開いた。

「エウリンカは私たちの施設で『4人の化け物』と呼ばれた内の1人だ。残りの3人はアイルローゼ。セシリーン。カミューだ。で、その化け物だが……工房要らずで魔剣が作れる。付いたあだ名が『魔剣の魔女』だ」

「あれ? 魔女って?」

名乗るには色々と条件が必要なのでは?

「ああ。あくまであだ名だ。アイルローゼのように認められて名乗った訳じゃ無いし、何よりエウリンカ自身名乗ってもいない。ただしその実力は化け物だな。あのアイルローゼを罠に嵌めて半殺しにした」

「凄いっすね」

罠に嵌めたぐらいで先生を倒すとか無理な気がするんだけど。

「でもアイツの実力はその魔剣作りだ。どんな魔法を使っているのかは知らんが魔剣を作り出す。噂だと始祖の魔女の直系の子孫だとも言われている。とにかく色々と狂った女だよ」

「で、そんな人がノイエの中に居るってことは?」

「あの日狂った1人だな。ただ彼女はその実力から本当に恐れられ、学院の地下に監禁されてた。這い出て結構な数を殺したそうだがな」

『これで良いのか?』と言いたげな姐さんの様子に頷き返す。

「おっと……そろそろ魔法を使っているシュシュがダメそうだ」

「ああ。シュシュだったらもう少しこき使っておいて」

「許してやれ。エウリンカを封印するのに大半の魔力を使い果たしているんだからな」

「……なら許すか」

そう言うちゃんとした理由も語れと言いたい。

「何より話に聞いていた通り……空腹が半端無いな」

「しまった。パンしか非常食を確保していない」

「これだとノイエが拗ねるかもな。どうにかしろ」

やれやれと肩を竦め、カミーラがもう一度僕を見た。

「警告だ。あれを絶対にノイエに近づけるな」

「近づいたら……?」

「どうなるか分からん。最悪空っぽのノイエが全てを無くすかもしれない」

空っぽ? それってどんな意味が?

「期待してるよ。旦那」

「ちょっ」

色が抜けて座った状態のノイエがこっちを見る。

「……お腹が」

「今はパンしかないです。それとジャムしか」

「ん~っ」

拗ねたノイエがパンとジャムを掻っ攫う。

慌てて僕は伝声管に飛びついた。

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