軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お仕置きよね?

『精神の治療を出来る人はこの学院には居ないそうです』

『そうなの? ご苦労様』

キルイーツの元まで走って戻って来たソフィーアを加え、総勢6人でお菓子を食べながら話し出す。

一応講師であるアイルローゼは弟子たちに魔法を教えなければいけない立場なのだが、ミローテは術式作りへの興味を強めそちらの勉強をしているので、特に教えることは無く普段の作業を手伝わせている。

ソフィーアは自分で何か魔法を作り出したいと思っている様子だが、作りたい物が見つかっていないらしく見つかるまでは基礎の向上に努めることとした。

フレアは魔法に関しては器用貧乏な才能の持ち主で、全体的に満遍なく既存の魔法なら使える。

ただ自分で何かを作るという考えは無いので……徹底的に基礎を鍛えて既存魔法を叩きこむ教育をしている。

結果としてアイルローゼの弟子たちは、必死に勉強をする必要が無い者ばかりなのだ。

だからこうしてのんびりとお茶を飲んで過ごしたりする。こういう時間は必要だとアイルローゼも理解し、自分も加わるのだ。プレートに術式を刻みながらだが。

「ミローテは~黙って~れば~綺麗~だし~」

「口を開いたら問題があるみたいに聞こえるんだけど?」

「ん~。言い方が~キツイん~だよ~ね~」

「……」

シュシュの指摘にミローテは沈黙する。

「ミローテ~って~1人っ子~だっけ~」

「…………妹が居るわ」

「妹~?」

誰も知らなかった事実に、シュシュでなくても驚きの表情を見せる。

アイルローゼは軽く視線を向けただけでまた作業に戻っているが、内心ではちょっと驚いていた。

「どんな~子なの~?」

「腹違いの妹なの。お父様がメイドとこっそりと逢瀬を重ねて……それを知ったお母様が大激怒してそのメイドを屋敷から追放したのよ。挙句に色々と裏から手を回して生活しにくくしたみたいで」

「あ~。ミローテの~話し方は~母親~譲り~かも~?」

「そうかもしれない。お母様は常にわたしを傍に置いてたから話し方が似たのかも」

「なら~少し~その~話し方を~改善~しよう~」

そう言うとシュシュはパクパクとお菓子を食べているリグを呼び寄せ、ミローテの元へ行くように指示を出す。

命令に従った褐色の少女は、ミローテの膝の上に座って甘えるように胸に顔を寄せた。

「リグが~泣いたり~怖がったり~したら~アイルローゼ~からの~お仕置きね~」

「任せておきなさい」

「即答ですかっ! 先生っ!」

「ミローテ。怖い」

「はっ!」

右往左往しながらもミローテはリグを抱きしめて困った感じの表情を見せる。

「それで~妹さんは~いま~?」

「……お父様から聞いた話だと、国軍の魔法使いの方と結婚して王都で暮らしているそうよ。ただその結婚した相手がとても厳しい人らしくて」

「可哀想」

「話の内容で泣き出しそうにならないでリグっ!」

お菓子を食べながらリグが少し涙ぐむ。

「ちなみに~泣いたら~どんな~お仕置き~?」

「シュシュの封印魔法の中に全裸で放り込んで学院の中庭に捨てて行くわ」

「お仕置きが容赦無さ過ぎませんか先生っ!」

「それって~わたしが~疲れる~ヤツだ~ね~」

「頑張りなさい」

言い捨ててアイルローゼは作業を続ける。

勝手にお仕置き要員にされたシュシュは、少し頬を膨らませつつその目をミローテへと向け直した。

「ん~。でも~厳しく~される~って~ことは~?」

「えっあっはい。魔力を持った子です。それも……魔力量だけならわたしよりも遥かに優れているとか」

ピタッと手を止めアイルローゼが顔を上げた。

「ミローテよりも?」

「はい。たぶん……シューグリッド並みと言う話でした」

それが事実ならアイルローゼに次ぐ魔力量の持ち主となる。

「本当だったら実に欲しい存在ね。何なら私が学院長を脅して話を付けるけど?」

「わたしもここに連れて来たいと思っていたのですが……結婚相手の人が反対しているそうで」

「……」

ミローテの言葉にアイルローゼは思案した。

普通に考えれば魔法学院の入学を拒否する魔法使いなど居ない。

自分が入れなくてもその子供が入学したというだけで軍の中なら評価が良くなるはずだ。それなのに断る理由は?

「……その妹に『切断』の魔法を伝えたわね?」

「はい。お父様が将来役に立つかもしれないと……でも才能があったらしく」

苦々しい表情をミローテは浮かべた。

「それを見て父親となった人は考えた。軍に入れれば魔法学院に行かせるよりも評価がされると」

「……」

弟子の沈黙が答えだった。

現在のユニバンス王国は敵に囲まれた状況なので、強い攻撃魔法を身に付けた者が軍に加われば高い評価を得ることが出来る。

何より学院に入れてしまうと、原則卒業するまで武器とすることが出来ない。

《このままの状況だと徴集令が下される可能性が高いと学院長は言ってたけど》

「なら仕方ないわね」

「……はい」

「話の腰を折ってごめんなさいね。折角の機会だから……どうすればミローテが男性に好まれる女性になるか今日中に結論を出してくれるかしら?」

「まだ引き摺ってるんですかっ! 先生っ!」

「ミローテ。怖い」

「はっ!」

胸に抱いている少女の言葉にミローテはその顔の色を蒼くした。

「お仕置きね」

「違うんです。先生。今のはっ」

「お仕置きよね?」

「……はい」

圧に屈してミローテはお仕置きを受け入れてしまった。

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