軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

失敗しちゃった

『これは幸運を呼ぶ神器です。具体的に言うと、ナイスなツッコミと同時に良い音を発すると叩かれた者に幸運を授けます。頑張って極めると良いことがあるかも?』

ふざけた説明が頭の中に浮かんで消えた。

どうやら僕はあの世界に戻ったら、こんなふざけた物を作った人物を探し出して天誅を加えないといけないらしい。

具体的な目標が出来たから良しとしよう。

「アルグ様。それ?」

「ツッコミの道具だね」

「ぶっこみ?」

「何故『つ』が『ぶ』に変化したのかは追求しない。これはこうして振って叩く道具です」

「叩くと?」

「運が良くなるらしい」

「……」

何故だか知らないがお嫁さんが頭を突き出して来る。

「ノイエさん。叩かれたい?」

「頭が良くなる」

「運だね。本日のノイエさんは耳が悪くなってますな」

「大丈夫」

「……」

その自信はどこから? ただ叩かれたがっているお嫁さんが可愛いので、軽く叩いてみる。本当に軽くパシッと。

『ツッコミ舐めんなっ! カスがっ!』

「なんでやねん!」

頭に浮かんだ文章にイラッとしてハリセンを振るったら、丁度ノイエが頭の位置を動かし直撃した。

バシッと良い感触が伝わり、彼女は両手で頭を押さえる恨めしそうにこっちを見て来る。

叩かれに行って叩かれて怒るとは高等テク過ぎないですか?

「もう一回」

「何故に?」

「……気持ち良い?」

パシッの感触が良かったのか、それとも何かに目覚めのか。

『たぶん後者。お嫁さんは真正のマ』

「死にさらせボケがっ!」

本日一番の会心の一撃がノイエの脳天にヒットした。

だから自分から食らいに行かないでノイエ~。

頭を押さえたノイエが……うっすらと消えだす。何事か説明を求める!

「アルグ様」

「ふぁい?」

「……痛い」

「って!」

お嫁さんが痛いと言う言葉を残して消えた。本格的に説明を求む!

違う。たぶんこれが答えなのか! このハリセンで叩かれると帰れるに違いない!

『そんな馬鹿な話とかある訳ないでしょ? どんな異世界?』

「やらしてる奴が何を言ってんの!」

脳内に浮かぶ文章にツッコミを入れておく。

しまった……ついハリセンを振ったが虚空に対してのツッコミになった。

これって相方いないと終わりだな。

『大丈夫。ぼっちを極めれば人類最強だよ?』

「ネトゲの世界で最強とか言う類の奴だろう!」

今度は両手でハリセンを持って自分の頭を痛打した。

『ぼっちが1人でツッコミ漫才を始める恐怖映像』

「だからやらしてるのは誰かと問いたいわっ!」

それからしばらく何十回とハリセンで自分の頭を叩いたら……ようやく移動した。

良かった。これで帰れる。もう本当にどうなることかと……べぶっ!

空中に放り出されてそのまま真っすぐ下の床へとダイブした。顔からね……思いっきり顔から突っ込んだ訳よ。

自分でハリセンで頭を叩いてからのこれって酷くない?

「イテテ……」

ヒリヒリとする顔を押さえて体を起こすと、はて? これは何でしょう? とてもお美しい女性の足が目の前に?

もう少し顔を上げると……ワンピースと呼べば良いのかな? 白い無地の服を着た足の綺麗なスレンダーな女性が。

ってマジか! ノイエが霞む美しさだと? 違う。可愛らしさならノイエは決して負けない!

ただその美人さんと目が合うなり、何故か背筋に冷たいものが走り出す。

泣いていたのだろうか、彼女は静かに腕で顔を擦る。

赤い目と長い赤髪が特徴的な……背筋に悪寒がっ!

「……説明して貰おうかしら?」

「何をでしょうか?」

「どうして貴方がここに居るのよ! その理由をはっきりと私に説明なさい!」

「無理です! 気づいたらここに!」

「説明になって無いわよっ!」

命乞いの土下座をしたら、案の定頭を踏まれた。グリグリ付きの結構本気の奴だ。

「イタタ……。"先生"! マジで痛いです!」

「痛いぐらいが丁度良いのよ!」

「うな~。本気で額が裂けるから!」

「リグに言って治させるから心配ないわ!」

「あら不思議~! 納得しかけた僕が居た~!」

本気で頭を踏み潰す勢いで体重を掛けて来る相手の攻撃から逃れるように、必死に這って逃走する。

前も見ずに這って逃げたら、座っている人を巻き込んだ。

「あら? こんな場所で……私は良くてよ?」

組み敷かれた体勢で、下に居る目を閉じた銀髪の女性が頬をほんのりと赤くする。

優しい感じのする美人さんでスタイルは普通だ。うん。ある意味想像通りだ。お姉さんって感じがする。

「でも初めてを見られながらは恥ずかしいわ。だけど私も大人ですし……何事も経験よね?」

「聞かないで~! って何の話? うおっ! 先生! 今僕の何を踏み潰そうとしましたっ!」

「体の外にある内臓かしらね?」

股間の辺りを全力で踏んづけて来た先生のマジトーンが半端無く怖い。

「大丈夫よ。私も大人だから……最初は優しくしてね?」

「そうなの。私よりそっちの歌姫の方が良いって言うのね? 良いわ……二度と使えないように踏み潰してやる!」

「止めて~! ってセシリーンっ! 抱き付かないで! 逃げられないから!」

「えっ? やり逃げなんて……私もそんな都合の良い女では……でも大人ですし、色々と飲み込んで我慢します」

「へ~」

先生の声が笑えないって!

アカン。何が起きたのか理解する前に自分の余命があと僅かだと理解したよ!

「あっれ~? 何で旦那君がここに居るの~?」

この特徴的な喋りは我が悪友に違いない!

「助かったレニーラ! ……レニーラ?」

「あはは~。旦那君? その表情と視線の意味を聞きたいかな?」

部屋の入り口らしい場所に立つレニーラらしき人物がそう言って腕を組む。

意外と大きい胸に細い腰。スラッとした足も健康的で良い感じ。何より美人だと?

「レニーラ」

「あはは~。何かな~」

「絶対に偽者だな」

「……流石にカッチーンと来たかな? そういう態度を取るなら今から地獄を見せてあげる」

と彼女は外に向かい身を乗り出した。

「みんな~! 旦那君が見つかったよ~!」

抱き付いていたセシリーンが手を放して離れる。アイルローゼも同じだ。

そして奥から……物凄い足音を立てて何かが走って来た。

彼女"だけ"が自身の体に戻って来たドラグナイト家の夫婦寝室で、魔女は軽く頭を振った。

もぞもぞと動いている彼女はそろそろ目覚めるだろう。そして事実を知って……

「しまった~。失敗しちゃった。テヘペロッ」

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