軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一生俺の傍に居てくれ

石の地面に突き刺さった胴斬りを引き抜き、ハーフレンは急ぎフレアの元へ駆け寄る。

迫って来た王子の迫力に……彼では無いからと若干放り投げる感じでフレアを押し付けたノイエは、軽い足取りで夫の元に向かい、腕に抱き付いてスリスリと頬を擦り付けた。

「フレアっ!」

抱き締め肩を揺する兄の様子を見ながら、アルグスタはゆっくりと辺りを見渡した。

余りにも呆気ない竜人の終わりに……お約束を感じたのだ。

「この手の敵って絶対にこれで終わりとか無いと思うんだ」

「はい」

「とりあえずで頷かないの」

「むう」

拗ねてノイエが甘えて来るのを、彼は頭を撫でることで回避する。

「そんな訳でお願い」

「……」

甘えた状態で動きを止めたノイエが沈黙する。

と、ジロリとキツイ視線が彼に向けられた。

「セシリーンが言うには居るそうよ」

「流石です」

「さっさと仕留めなさい。欠片も残さずに」

「同意です」

グローディアからノイエへと戻るお嫁さんに、アルグスタはそっと耳を寄せた。

「ノイエ」

「はい」

「まだ居るらしいんだけど……分かる?」

「頑張る」

分かりやすい返事を寄こし、抱き付いていた彼の腕から離れたノイエは辺りを見渡す。

ある一か所だけとても嫌な感じがして、胸の奥がざわざわした。

「居た」

「なら最後はやっぱりノイエで」

「はい」

彼女の手を握り祝福の力を籠める。

それを受け取ったノイエは軽い足取りで歩き出すと、グッと石の地面を踏み込み爆発的な動きで洞窟内の隅にある窪みに向け踊りかかった。

「馬鹿なっ!」

影となり隠れていたバルグドルグは、自分に向かい突進して来るドラゴンスレイヤーの動きに慌て飛び出した。彼女の攻撃をやり過ごし逃げるはずが、ノイエは先ほどまでと違っていた。

手に宿した祝福の力がバルグドルグの影を、実体を逃さない。

振るわれた拳は確実に彼の顔を捕らえ、絶望的な力が流し込まれる。

「これで終わり!」

もう一度放たれたノイエの拳が、初撃の衝撃で実体へと戻ってしまった竜人の胸を打つ。

彼は全身にヒビを走らせると、地面へ落ち……そして崩れて消えた。

「勝った」

「うんうん。やっぱりノイエは最強です」

「はい」

嬉しそうにちょっとだけ口角を上げトコトコと歩いて来たノイエは、大好きな夫の腕にまた抱き付いた。

ずっと長い間嫌な夢を見ていた気がした。

いつから続く夢なのか分からない。ただただ自分を偽りそれを正しいと思う嫌な夢。

夢を見続ける度に心が悲鳴を上げて、その度に胸に手を当て我慢し続けた。

どれだけ泣いても苦しみからは解放されず、甘えたいのにそれすら出来ない。

自分は強く無いのだと知っていたけれど……強い自分を演じて我慢し続けた。

我慢我慢我慢我慢……。

どれほど我慢をしたのか分からないほど我慢をし、でももう無理だと気付かされた。

だって自分は弱いのだから。こんなにも弱いのだから。

だから次からは素直になって相手に甘えようと、そう決めた。

「……ハーフレン?」

「フレア」

「ハーフ……」

ビクンと体を震わせガタガタと痙攣する彼女をハーフレンは全力で抱きしめた。

色々と無茶をさせたのは理解していたが、やはり無理が出たのだ。

「フレアっ!」

「わたっわたしはっ」

「大丈夫だフレア! 何があってもお前は俺が護る! だからもう無理をしないでくれ!」

「ハフ……兄様……」

まだ体を痙攣させつつも、怯えて泣き出しそうな視線を向けて来た彼女は少女の頃のようだった。

改めて抱き寄せ、ハーフレンは彼女の耳元で誓う。

「俺がお前を護る。何があっても護るから……だからずっと傍に居てくれ」

「ハフ……」

嬉しかった。だから溢れた涙が止まらない。

フレアは痛みが走る体を動かしそっと彼を抱きしめ返す。

「でも私は……」

「心配するな。どうにかする。俺がどうにかする」

「でも」

「ああ煩いな! こんな時ぐらい言い訳なんて忘れて黙って頷け!」

「……はい」

沁みついてしまった習性だろう。素直になると誓ったのに……また逃げ出そうとした。

フレアは口を閉じてそっと相手に寄りかかる。

そんな彼女を抱きしめて、ハーフレンもまた自責の念に駆られていた。

まただ。また自分でどうにかしようと先走っている。

素直になると誓ったのに……本当に自分の馬鹿さ加減に泣きたくなった。

「なあフレア」

「なに?」

「正直言って、今のお前はかなりヤバい立場だ。どうしたら良い?」

「……護ってくれるんじゃないの?」

少しだけ離れた彼女の目がジトッと見つめて来た。

「護る。心配するな。必要だったら地位も何も捨てて一緒に逃げてやる」

「……死ぬまで追われるわよ?」

「それも悪くないだろう?」

「もう」

苦笑してフレアは彼の顔を見つめた。

本当に昔から考え無しで無鉄砲だった。馬鹿では無いのにだ。

でもそんな彼だからこそ愛おしくてたまらないのだ。

「ならどうしたら良いか……アルグスタ様?」

覗きの視線に気づき、フレアはその2人に半眼気味の目を向けた。

「見ちゃダメだよノイエ」

「アルグ様もダメ」

「何やってるんだお前らは?」

ハーフレンも気づき非難染みた目を向ける。

あははと笑い妻の手を引いて離れていく馬鹿夫婦を見送り、ハーフレンはため息を吐いた。

「まっとりあえず考えるのは後で良いか。今はこっちが優先だ」

「はい?」

改めて彼は腕の中の大切な存在を見た。

「フレア。一生俺の傍に居てくれ。どうなるか分からないがそれでもだ」

「……はい」

酷いプロポーズの言葉にクスッと笑い、フレアは彼に抱かれそしてキスをした。

貪るように、色々と吹っ切れたように互いに求め合い……そして顔を離した時に気づいた。

それを、

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