軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

言ってはいけない言葉を~

岩山の洞窟内

「馬鹿共がやって来たぞ!」

嬉しそうに駆け込んで来た初老の男性に、剣を磨いていたゴーンズは視線を向けた。

血気ばかり盛んで剣の腕は全くなゾングは、自分の剣に抱き付いて腰に差す。

「これであの馬鹿共に復讐が出来るぞ!」

喜び勇む相手に……壁際の娘の様子を見ていた竜司祭が呆れたように笑う。

(本当に愚かだな。人間とは)

敵が来ただけで復讐を達成した気でいるのだ。

(でもまあ良い。これでこの国は我々の手に堕ちるはずです)

国を奪い新たなる領地を得る。

さすれば自分の地位は高まり、皇の御許へと近寄れるのだ。

(さあ来なさい。我が皇の為に)

岩山の手前にて

「お~お~。この時期にしては壮観だね~」

「ならばこの駄犬を餌にして、あのドラゴンを退かしましょう」

「止めろババア~」

また遊び出した師弟を無視して、ハーフレンは眼前に広がる光景に頭を悩ませる。

今にでも飛び出していきたそうなノイエが頭上のひと房の髪を激しく振っている。その様子は犬の尻尾にしか見えない。

「それでどうするのですかハーフレン?」

「普通ならノイエに任せて俺たちが内部に突入するって言うのが正解だろうな」

「だね~。隊長はドラゴンスレイヤーだし」

ブンブンと頭を上下に振っているノイエに不満は無さそうだ。

だが面白くない。敵だってこちらの戦力は把握しているはずなのだ。

だったらドラゴンスレイヤーを連れて来ることぐらい予定の範囲内だろう。

「たぶん罠でしょうね」

「そう思うよな」

怖いぐらいに冷静なスィークの言葉に、ハーフレンも同意する。

仮にフレアが敵に対して協力状態だとした場合、こっちの手の内は完全に掴まれている。

「ならば仕方ない。愚策を選ぶか」

「どうするのですか?」

「ああ。スィークとミシュが中心となって、残りの者たちとドラゴンを相手してくれ」

「それって死ぬってことかな~?」

「死なない程度に防戦してろ。その隙に俺とノイエで中に入り、敵を制圧してフレアを助けて来る。で、残りはノイエのお楽しみで良いだろう?」

終始頷いていたノイエが一瞬止まったが、最後に纏めて始末して良いと言われたのだと理解しまた頷き出す。

よくもまあこんな相手と夫婦生活を送って居るものだと馬鹿な弟を感心しつつ、ハーフレンは背負っていた武器を手にした。

「直ぐに中を制圧して来る。ちょっと死ぬ気で耐えててくれ」

「相手が悪すぎるんだよね~。まったく」

愚痴を言いながらも、ミシュは騎士たちに指示を出して防御陣形の確認を始める。

「それでハーフレン」

「何だ?」

「あの子は救えるの?」

「……分からんよ。でもやるさ」

「そう。なら頑張りなさい」

クスッと笑い、スィークは腰に差していた剣を抜いて先陣を切る。

人の動きとは思えぬ速度でドラゴンの間を抜け、振るう刃でその目を狙う。直接的な攻撃で倒せない者がドラゴンと遭遇した場合、徹底的に狙えと教えられるのが目だ。

ただドラゴン自体の回復速度が速いので、軽く斬ったぐらいでは時間稼ぎにしかならない。それでもスィークは踊り続けて敵の目を切り刻んだ。

「本当に化け物だな~。師匠は~」

「いいえ。もう齢です。昔より正確さを欠きます」

「それでも十分に強いんだけどね~」

ケラケラと笑いながら、ミシュも飛んではドラゴンの目を狙う。

2人で相手の気と視線を集める作戦だ。別に話し合って決めた訳でも無いが、それが師弟なのだろう。

「先に休みます」

「はいよ」

「20匹程度、目を穿ったら替わりましょう」

「ちょっと数が多くないかな~!」

「何を言う。売れ残りでもまだ若いでしょう? それとももう体も女としても腐り始めましたか?」

「よっしゃこの糞ババア! ミシュちゃんの本気を見せてやるから、これが終わったら死んだと思え!」

ドラゴンに飛びかかる 弟子(ばか) を見送り、スィークは騎士たちが作り出す防衛陣の中へと入る。

「本当にこの力は……不便で困ります」

優雅に食事を取りだし、スィークはお茶まで飲んでみせるのだった。

洞窟の中に入ったノイエは、一瞬動きを止めた。

警戒し前を行く"彼"の様子を見つめ小さく笑うと、腰の鞄を外して中身を出す。

動かないように小さな絨毯を石の地面に広げ、布に包んだクリスタルのような透明な石を手に取る。

「どうしたノイエ? 急ぐぞ」

「はい」

ノイエらしく返事をし、"彼女"は今一度仕掛けの確認をした。

「ルッテさんや」

「あっはい。ってアルグスタ様も大概ですね」

「何だよそれ?」

「だって……ねぇ?」

そう言われると反論しずらい。

でもこの力って皆が思っているほど万能じゃ無いのよ。一点集中型だから。

「とりあえずモミジさんと合流して、王都内の警戒をして貰えるかな」

「良いですけど……って何ですか? 何処触ってるんですか!」

「尻でか」

「言ってはいけない言葉を~!」

ブンブンと振り回される弓を回避し、ルッテの腰から外した鞄の中身を回収する。

「何で今日は飴が多いかな?」

「涼しい時期だと解けないからです! って全部っ!」

「後で請求書回しておいてね~」

コロコロと口の中で飴玉を転がし、僕はその場から離れるように歩き出す。

「どこ行くんですか~?」

「ちょいと野暮用かな?」

「どうして疑問形なんですか! 面倒事は止めて下さいよね!」

「はいは~い」

プンスカ怒るルッテに適当に手を振りつつ、人の居る方へ歩いて行って途中でお弁当代わりになるパンなどを購入する。

ノイエがお腹空かしてるかもしれないしね。

まっ後はグローディアからのお呼び出しを待つこととしましょうかね。

「全く……勝手に行動されると困るんですけどね」

腰に手を当て愚痴を言うことで不満を吐き出したルッテは、胸元に隠しておいたビスケットを取り出すと、それをポリポリ食べながら近衛の騎士たちに被害状況などの調査をお願いする。

ひと通り指示を出し、彼女は近くの椅子に座ると……そっと祝福を使った。

(勝手ばかりするから国王様から監視対象にされるんですよ? 基本とっても良い人なんですけどね)

元王子とは思えないほど話しやすいし、お菓子なども山とくれる。でも普段の勝手極まりない個人主義と言うか、秘密主義が仇となってシュニット国王から直々に『アルグスタを監視すること』と言う指示をルッテは受けている。

「隊長が留守なんだから無茶はしないで下さいよね」

祝福を使い、食べ物を買い漁る上司を見て……ルッテは自分のお腹が鳴るのを感じた。

(c) 2019 甲斐八雲