軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最近、お願い多い

時はハーフレンたちが王都を出る前日の夜へと戻る。

「集まっているのはこれだけ?」

「だね」

「ふ~ん」

うつ伏せで肘を胸の前で杖にして顎を乗せたお姉ちゃんが、足をパタパタとさせながら目の前の紙を見ている。

束とある報告書をあんなに嬉しそうに見れる人がちょっと羨ましい。

クロストパージュ領が調査に人員を割いてくれたお陰で、コンスーロのオッサンが思いの外早く戻って来た。それはつまり近衛の精鋭が戻って来たことを意味する。

馬鹿兄貴のことだ……明日の朝にでも動くだろう。

良くこの3日間を耐えたと褒めてやりたい。褒めてやりたいけど、動けば大臣たちが仕掛けて来る。

僕なりに仕込みをしてキシャーラのオッサンやお兄ちゃんにも根回しはした。それでもやっぱり怖い。

「で、ホリーお姉ちゃん」

「なに?」

「どうかな? 何か足らない?」

「良く出来てるわよアルグちゃん」

満面の笑みでホリーが褒めてくれる。何か凄く勝った気になるな。

「でもアルグちゃんは王都に残りなさい」

「何でよ! ノイエが納得しないって!」

「この後全力で納得させなさい」

どうやら理由があって言ってるらしい。

「どうしても?」

「ダメよ」

「お姉ちゃん?」

「そんな甘えた声を出しても……」

相手の背中に手を掛けて、肩越しに頬にキスする。

「どうして?」

「……王都が狙われるからよ」

チョロイン属性のお姉ちゃんはあっさりと教えてくれた。ってマジですか?

「何で?」

「ん~」

パタパタと足を動かすお姉ちゃんに再度キスをすると、その口が軽く開いた。

「敵の攻撃は最初から迷いが無いわ。前王と現王の命よ。

そして最初にそれを行いこっちはこの『フレア』と言う存在でかき乱された。共和国の方は完全な便乗かな? ただ裏で繋がりがあるかもしれないから気をつけてね。

それで現在大将軍は王都の外に、近衛団長も明日には王都の外に出る。つまり敵から見ればこの場所は手薄なのよ」

サワサワとお姉ちゃんの背中を撫でてたら、鼻息を荒くして良く喋ってくれる。

ってこのままだとノイエとの聖戦の前に、お姉ちゃんとの突発イベントが発生しそうだな。

「あ~。この消えた街道の化け物?」

「そう言うことよ」

「でも化け物相手だと、僕が相手でも無理なんですけど?」

はっきり言おう。人間相手の僕は無力であると。

「そうね。アイルローゼから聞いてるわ」

「でしょ?」

「でもドラゴン相手ならアルグちゃんは負けない」

「ま~ね」

ん? つまりドラゴン対応で僕に残れと?

「敵は化け物だけじゃないと?」

「そうよ。忘れたの? 貴方たちの結婚式で何があったのか?」

「ああ。納得」

突然中型のドラゴンが湧いて、ノイエが一撃で粉砕したね。

「そう言うことよ。敵はそこの報告書にあった通り、『宝珠』と呼ばれる物で異世界のドラゴンを呼び出すことが出来る。つまりこの王都のど真ん中でドラゴンを呼べるのよ」

「厄介な」

納得させられてしまった。そう考えると確かに僕が残る方が確実だ。

前回のブシャールでは、ノイエもオーガさんのあの岩のドラゴンを倒せなかった。

コロンと転がって向きを変え、お姉ちゃんなノイエが僕を見る。

「それにしてもカミューは貴方に厄介な祝福を与えたのね」

「本人は『勝手に選ばれた』と言い張ってたけど?」

「そんな訳ないでしょ? 知らないの?」

「何が?」

「カミューは私たちの中で『嘘吐き』って呼ばれてたのよ」

「やっぱりか~!」

やっぱりか! やっぱりこのふざけた祝福はアイツの仕業か! 今度会ったらどんな仕返しをしてやろうか!

ベッドの上で憤慨する僕にお姉ちゃんが甘えるように抱き付いて来た。

「で、アルグちゃん」

「はい?」

「お姉ちゃんへの質問はここまで?」

「……だね」

「そう」

うふふと笑ったホリーが、僕を仰向けにすると馬乗りして来た。

やはり強制イベントか。しかしセシリーンが出て以降、今日まで誰も出て来なかったから比較的僕は元気なのだよ!

「アルグちゃん」

「おう」

今日ならホリーの猛攻を耐え切ってみせる。

そう思っていた僕に……彼女はとても冷ややかな優しい笑みを浮かべた。

「……小さい胸を撫でるのが好きなんですってね?」

「そっちか!」

ガバッて覆い被さって来たホリーがっ! ちょっと待って……胸が、胸で、溺れる。

「アルグちゃんの好みを変えてあげるわ! 大きいのが大好きにしてあげるんだから!」

「死ぬ。胸で……死ぬ」

グイグイと胸を押し付けられて、僕は巨乳の良さをその身に叩きこまれた。

「……アルグ様。アルグ様」

「ふあっ! 自分大きいのも好きであります!」

飛び起きて辺りを見渡す。全裸のノイエが座ってこっちを見ていた。

この状況は何だ? 何があった? 確かお姉ちゃんの巨乳こそ至高の教えを受けてから、そのまま実技へと移行して燃え尽きたんだ。

「おはようノイエ」

「はい。どうして裸?」

「あ~うん。覚えてない?」

「なに?」

コクンと首を傾げる相手に、僕は脳みそをフル回転させる。

結構この言い訳って大変なんだけど、誰も気遣ってくれない。

お願いだからせめて寝間着を着てからノイエに戻って。

「ノイエに馬鹿兄貴たちと一緒に行って欲しいと言ったら嫌がって」

「嫌っ」

「で、それでもお願いしてたら」

「嫌っ」

「と言うので、なら帰って来てからノイエの好きにして良いよと言ったら」

「……嫌っ」

「交渉決裂で、だったら前払いだって」

「……」

少し半目のノイエが僕を見る。

納得したら怖いけど、ノイエだったらまあ何となくで受け流してくれるはずだ。

「でも嫌っ」

「ダメかっ!」

「ダメ」

「どうしても?」

「はい」

「後から追いかけるよ?」

「……」

甘えた声を出したらノイエが困った様子で少し拗ねた。ここは押しの一手だ。

「ちょっとこっちで片付けなきゃいけないことがあるから、僕も後から行くよ?

それにノイエが先に行ってドラゴン退治しておいてくれると嬉しいな」

『嬉しいな』の声に反射的に抱き付いて来たノイエが、ゆっくりと体を離して僕を見る。

「……嬉しい?」

「うん。それにノイエならその辺のドラゴンに負けないし、安心して仕事を任せられるよ」

「はい」

コクンと頷いてノイエがまた抱き付いて来る。本当に僕のお嫁さんは可愛いな。

「必ず後から行くからね」

「約束?」

「うん約束」

「……」

ノイエが僕を押して後ろへと倒す。

本日初のはずなのに、さっき同じことを食らった気がするのは何故でしょうか?

答え相手がホリーだったからです。

彼女は迷わず馬乗りして来た。

「アルグ様」

「はい?」

「最近、お願い多い」

「あ~。うん。ごめん」

「ダメ」

言ってノイエが身を折ってキスして来る。

「だからお願い」

「ふぇ?」

「赤ちゃん欲しい。頑張って」

「……あはははは~。よ~し。今から僕の本気を見せてやるぞ~」

「きゃっ」

体勢を入れ替えて、徹夜覚悟でノイエの説得を開始した。

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