軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

教えて! フレア先生 再び

「はい皆さ~ん。ちゃんと宿題は提出しましたね?」

「「は~い」」

「ご家族と話せなかった人も、周りの大人の人と話せましたか?」

「「は~い」」

子供たちの元気の良い返事にフレアの頬が自然と緩む。

最近子供たちの学習意識が高まり、とても楽しく教えることが出来ている。

試験的に導入した"宿題"と言う課題も良い効果を生んでいる。

出した課題は子供からすれば少々難しい物ばかり。

ただそれはあくまで切っ掛けに過ぎない。

家族や家の者など『大人』と話すことで、今から目上の人と話す機会を増やす為の行為でしかない。

話しかけられる大人も、子供の『教えてください』のお願いを邪険にしづらい。話を聞けば大人でも即答できない問題だからついつい説明するのに言葉が増える。

言葉が増えれば会話が長くなり、子供は会話出来ることで相手が『怖い人か怖くない人か』を判断するようになる。怖くないと判断すれば余程の人見知りでもない限り子供に遠慮など無い。追い払いたくなるほどまとわりついて来る。

そうなればこの試みは成功と言える。

大人との会話の中で自然と礼儀などを学び、場合によっては大人が教えてくれるのだから。

お蔭で最近フレアが部屋に入って来ると、お喋りが止まり子供たちから挨拶をして来るようになった。

「ならこの『ドラゴンの数をどうやって減らせば良いのか?』は先生が後でみんなの答えを見て、一番良い答えだった子には、ご褒美としてお家の方へお菓子を贈ります。良いですね?」

「「は~い」」

良い返事だ。

ただ最初は一番後ろの席にいたはずの優秀な生徒の答えが凄く気になった。

自然と一番前の席に座るようになったのは、子供たちからの信頼を勝ち得たとも言える。

宿題の試みも彼の提案だ。

『子供が大人と自然と話しかけるようにしたいと思うんですよね……』と愚痴ったら教えてくれた。

試みが成功して大喜びで感謝を伝えた次の日から、彼の伴侶たる上司が……『嫌がらせ?』かと思うほど凡ミスを繰り返してくれたのは忘れない。

もしかしたら上司もやきもちくらい妬くのかもしれない。妬かれる方は堪らないが。

ちなみに彼が提出した宿題の答えは『もっと頑張る』だった。

それを見たフレアが自然と頭を抱え、震えたのは言うまでもない。

「はい。なら今日は……準備が進んでいる『結婚式』に関係した知識です。転移転送術式についてお話しします」

「先生」

「はい何ですか?」

「それとおにーちゃんのお祝いと何が関係してるの?」

「……」

仮にも王子を『おにーちゃん』と呼ぶ男の子の言葉に抵抗があるが、この部屋の中では地位など関係無い。

それに一番の問題は、当の本人が全く気にしていない。今も真剣に羽根ペンを握って待っている。

「そうですね。一見関係無い様に見えますが……実は凄く関係してます。

あと10日後に迫った結婚式ですが、大陸中の主だった国の関係者がこの王都を訪れます。でもみんなが写して持っている大陸の絵を見れば分かる通り、この大陸はとても広いです。

そうすると遠い国の人はどうやって来るのか? はい君」

「えっと……歩いて?」

「そうですね。健康には良いかもしれないですけどちょっと難しいかな?」

だいぶどころかほぼ無理だ。

この大陸のドラゴンの数は増加の一途だ。

団体で移動していれば、これ幸いにと襲われて食われてしまう。

「だから転移転送術式を用います。別名『門』ですね。聞いたことがある人?」

ぼちぼち手が挙がる。

見た限り外交関係や商業関係の仕事をする親の子が多い。

「この門は、大陸の八か所にあってそれぞれ大きな国が管理しています。ここから一番近い門は、北のウルルメル山の北側にあります。

帝国と共和国の国境に存在するその場所は両国が管理して、そこでは『喧嘩をしない』って約束がされています」

完全なる非戦闘地域。

間違って門が壊れでもしたら大陸中の国を敵に回しかねないからだ。

「この門を使うには、両国が管理している管理事務所でお金を払います」

「はい先生」

「……何ですか?」

年長者で一番勉強熱心な生徒が手を挙げた。

「その門を使ったら遠い国にも行けるんですか?」

「はい。門がある場所なら」

「行き先は指定できる?」

「出来ます」

「なら……悪いことし放題?」

言葉を選んだ質問だ。

学ぶ場所と立場の葛藤を垣間見れる。

『ねーちゃんと喧嘩したら遠くに逃げる気? にーちゃんすげー』など気楽な子供の発想はまだ可愛い。

それで兵隊を送り込んで……と言う質問くらいフレアには分かっている。

ただ夫婦喧嘩だけはしないで欲しい。下手をすればこのユニバンス王国が滅びかねない。

「そうですね。兄弟に意地悪をして逃げるくらいなら出来ますけど、1度に通れる人は10人までで、荷物だと馬車の荷台が2台くらいまでです。

1度使用するのに術式魔法使いを10人ほど必要とするので、そんなにたくさん送れません。

昔……たくさんの人を一度に送ろうとして、国中の魔法使いがみんな死んでしまったなんて怖い話があるくらいです」

子供たちが口々に『怖い』とか『凄い』とか口走る。

ただしフレアの言った例は実話だ。

1000人の兵を送り込もうとして、門に魔力を注ぎ込んでいたその国の魔法使いが全員絶命し、そして送ったはずの兵はどの門からも出なかったのだ。

「だから門を悪いことに使うと、その時に亡くなった魔法使いが現れて攫って消えると言われてます。みんなは連れて行かれちゃうような悪いことはしてないですよね?」

「「……」」

脅かし過ぎたかと思ったが、一番焦っているのは上司の旦那様だった。

裏で何をしているのやら。

「その門を通ってこの国に各国の偉い人が訪れるんです。ですから『結婚式』では悪いことをしちゃダメですよ? でも折角のお祭りなので楽しんでくださいね」

私は仕事で楽しめませんけど、ね。

軽く気持ちを静めながら、フレアは授業を続けた。

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