軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本気で殺しに行くわよ?

ある時期、ユニバンスの騎士の中で『魔剣』を用いて戦うスタイルが流行った。

騒乱期と呼ばれた過去において、前線で両手に魔剣を持ち戦う少女の姿に即発されたのが由来だ。

見よう見まねで真似をする者が増えたが、大成する者は少なかった。

それを実行するには、十分な魔力と剣の技能が必要だったからだ。

前線で『串刺し』と共に名を馳せた『魔剣使い』なる少女は、その両方を擁していたからこその武勇であった。

故に憧れを抱いた者たちは自分の才能の無さを知り諦めて行く。

それでも極僅かに使える域まで到達した者が居る。

『フレイア・フォン・ロアーネ』

旧姓クロストパージュと言う上級貴族の血を継ぐ女性だ。

魔法使いの家に生まれ、何不自由なく魔法の知識を得た彼女は……減量の為に運動がてら剣を振るうようになり、何故か剣にのめり込んだ。

のめり込み過ぎて周りの意見に反対し騎士になる道を突き進んだ。

彼女の両親は、そんなフレイアに一つだけ条件を出した。

『結婚相手はこちらが選ぶ。その者と結婚するなら好きにすると良い』と。

応じたフレイアは、魔剣使いの道へと邁進し……そして結婚相手が中級貴族の騎士だと知ると、魔剣を握り締めて相手が住む寮へと殴り込みをかけた。

昼から始まった決闘は、夕刻まで続き……そして2人は意気投合して驚く速さで結婚したのだった。

子供を産み育て成長を見守る日々……などと言う大人しい生活を彼女が送る訳もなく、産んだら相手の両親に子守を押し付け剣の腕を磨く。

結果として彼女は、新国王の護衛役の1人に抜擢されたのだった。

炎の魔剣から火花が飛ぶ。

妹同様に強化に優れたフレイアの必殺の武器……それが炎を強化し刃とする魔剣だ。

魔剣が生み出す炎が全て刃となるお陰で、彼女の武器に一定の形は無い。常に変化し硬化して襲い来る炎の刃を、黒く沈んだ瞳を向けて来る妹が寸前で回避し続ける。

「上手く避けているって訳じゃ無さそうね。貴女の運動は男女の営みくらいでしょ?」

「……」

軽口にも反応せず、妹の手が向けられた。

掌から噴き出して来る影がさながら処刑された『串刺し』の魔法を彷彿させる。

串刺しと魔剣使いは、その昔に前線で兵たちから高い支持を得ていた少女たちだ。

今となれば罪人でありその魔法を好んで使う者はいないが、実戦で産み出されたその技術には目を瞠るものが多い。

フレイア迫る影を回避することなく魔剣で叩き斬る。

断たれ、床に転がる影の棒が……パンッと弾けて四方に針のような枝を伸ばす。

『カミーラ』と呼ばれた罪人が好んで使った"串刺し"の最終形態だ。

避けても弾けた枝が四方に広がり敵を穿つ。

相手を殺害するために特化した……殺法と呼ぶに相応しい魔法なのだ。

「容赦が無くて悪くないわ」

ニヤリと笑ってフレイアは、懐からもう1本剣を掴み取る。

こちらはナイフのような短い物だった。

「だから本気で殺しに行くわよ?」

言葉通り……姉の一撃から情けが失せた。

「なん……だと?」

駆け込んで来た騎士の報告に、流石のハーフレンも我が耳を疑った。

兄が、国王が、城内で襲撃を受けた。

そして現在、国王の警護と交戦している。

犯人の名は……フレア・フォン・クロストパージュだ。

目撃して居る者の意見が一致し過ぎている。

腰から力を失いそうになったハーフレンは、目一杯自身の足を叩いて立ち上がった。

「全員武装を確認し至急迎え!」

「「はっ」」

咄嗟に指示を出し、ハーフレンは自分の口を手で覆った。

命じたことは、間違いではない。間違ってなどいない。

だが実行されれば? 向かった騎士たちがフレアと相対することにでもなったら?

覚悟を決めて彼も駆け出した。

ならば自分が彼女を制して、止めさせるしかない。

そもそも本当に彼女なのか確認することの方が大切だ。

震える足で床を蹴り、ハーフレンはただただ急ぐ。

何とも言えない恐怖に首元を鷲掴みにされながら。

「ん~」

「……」

「ん~」

「……」

学院の中庭で、ノイエがプレートを撫で続けている。

ずっと唸って撫でているだけのようにしか見えないが、たまにおかしな色がプレートより放たれるから……その度に全員で盾の後ろへと身を隠す。

大陸屈指の魔力量を誇るノイエであっても、魔法語が分からない状態ではプレートは発動できないらしい。

「うん」

「どうかなさいましたか?」

「……僕のお嫁さんが可愛いなって感動してたところ」

「そうですか」

今回の調査責任者の魔法使いさんが、何とも言えない表情で離れていく。

失礼な。ノイエは本当に可愛いのだ。何時間でも何日でも見ていられる愛らしさなのだ。

それでもずっと視線で愛でていても仕方ない。先生はまだ出てこないだろうしね。

グルっと辺りを見渡すと……離れた場所で酔い潰れた感じのダメ親父臭を漂わせる少年を発見した。

見た目は子供。実年齢は大人。その名はアーネス君だ。

近づくと……酔ってはいない感じだが、完全に燃え尽きていた。

「生きてる?」

「……アルグスタ様?」

「うい。お久しぶり」

「お久しぶりです……」

挨拶して来る彼の表情が崩れる。

ボロボロと涙を溢し、緊急脱出しようとしたけど相手が腰に抱き付いて来た。

「アルグスタ様~!」

「ええい! 男に抱き付かれて喜ぶ趣味は無いっ!」

「話を……話を聞いてくだざいよぉ~!」

「のわ~! 鼻水がっ! 汚いから!」

「だからっ」

目の前からアーネス君が消えた。

ヒュ~っと言う効果音が聞こえそうなほど、綺麗な放物線を描いて彼が遠くへと飛んで行く。

「大丈夫?」

「……」

隣りに来ていたノイエが助けてくれたらしい。

で、投げ捨てたアーネス君は誰が救うのだろうか?

「ノイエっ!」

「はい?」

「地面にぶつかる前に回収して来てっ!」

ノイエの姿がブレて……間に合うのか?

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