軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

優しく塗ってね

「そうです。軽く馬のお腹を蹴るんじゃなくて触れる感じで。そうそう」

「鞭とか使わないの?」

「馬だって叩かれれば痛いんです。痛いのに叩かれて速く走るとか、そんなの人間の思い込みです。

鞭を使って喜ぶのは、それを作った人間くらいですって」

屈折してるな~。

パカラパカラと歩く、のんびりした馬の動きにリズムを合わせるだけ。

馬は本来頭の良い生き物なので、乗っているこっちが悪さをしなければ勝手に進んでくれるそうだ。

でも馬上って結構な高さだから怖いんだよね。

「ほら王子。腰が曲がって猫背になってます。ちゃんと胸を張って」

「意外と高くて怖いんですけど?」

「慣れれば平気です。そのうち上下に動く振動が気持ち良くなってって……どうして糞を尻尾でこっちに払うのっ!」

確かに頭の良い生き物だ。

良し良しと 鬣(たてがみ) を撫でてやる。

あの変態に対して的確なツッコミを入れた君のセンスはとても良い。

後でニンジンを増量した餌を準備させよう。

今の僕は馬上の人だ。今日から突然馬に乗る練習を課せられた。

理由は……先日、ノイエに抱えられて城下の入り口に来たことが良く無かったっぽい。

まだ見ぬ一番上の兄にそのことが伝わり『王族ともあろう者が情けない。馬ぐらい乗れるようにしろ』とハーフレン王子の似ているのかどうか知らない物まねで命じられた。

で、当たり前だが僕は馬に乗ったことが無い。でもこの体は経験済みだ。

『しばらく乗ってれば思い出すんじゃないのか?』と疑いたくなるようなアドバイスで馬に乗った。

先生は……馬の扱いだけは一級品のミシュだ。

誰に聞いても彼女を推薦して来る。あのノイエですらもだ。

『ノイエ? 馬に乗りたいんだけど……誰に習ったら良い?』 『小さくて胸の無い子』

即答だった。

あのノイエが薦めるんだから諦めて師事を得ることにした。

「良いですよ。怖がらなければ確りと乗れてます」

「売れ残り。大変だ」

「どうかしましたか? ……それと私はまだ未販売なだけです」

「たぶん永遠に売られないと思うよ。……思ったより股が痛い」

「慣れないと擦れますからね。……そろそろ店頭に並ぶはずです。一押しの商品です!」

「え~。皮がズルズルになるのは嫌だな~」

「あとで軟膏を渡しますから湯浴びが終わったら塗って下さい。って私の主張は無視ですかっ!」

だって絶対に売れないでしょ? この世界の婚期は20歳までらしいし。

フレアさんみたいに婚約者が居て、相手の都合で遅くなる場合はあるけど……彼女の場合は売約済みだからね。

「私だって結婚したいんです。旦那さんと夜の営みがしたいんです。子供を産みたいんですっ!」

「あ~あれだ。未開の地に居るかもしれない、怪しげな部族の男性と出会えれば出来るかもね」

「何なんですかそれは! もう普通の人とは無理っぽい発言はっ!」

「そう言ってるんだけど?」

「憎い……隊長が憎い」

負のオーラを纏って馬鹿がいじけ出した。

ちょっと手綱を操って馬の向きを変えたら、素直にミシュの方を向いてくれる。

良い子だ良い子だ。

「なあお前? あの売れ残りと交わってやってくれないか?」

「……プルル」

馬がいなないてそっぽを向いた。

ダメだミシュ。ほ乳類でも君を受け入れてくれる生物が居ないみたいだ。

「自分でやるから」

「……」

「ノイエ。ほら返して」

「……」

案の定、股の所が擦れて真っ赤になっていた。

湯浴びをしたらお湯が 沁(し) みて思いっきり泣いたけど、どうにか冷やして誤魔化し寝室に来た。

で、薬を塗ろうとしたら……先に食堂へ夕食を食べているはずのノイエが現れ軟膏を奪われた。

「大丈夫。自分で塗るから」

「……」

相手の眼力に圧倒され、気付けば部屋の隅にまで追い詰められている。

勝てる訳無いじゃん。相手は大陸屈指のドラゴンスレイヤーだよ? でもね……お股に軟膏を塗られるとかどんなに恥ずかしいか君には分かるまいっ!

こうなったら最終手段だ。

『塗るんだったらノイエの股にも塗らせて』と口まで出かけた交換条件を飲み込んだ。

危ない。そんなこと言ったら彼女のことだ。即答で『はい』だ。

「あのね。ノイエ」

「……」

もう逃げ場所が無い。

分かったよ。僕が頑張れば良いんだ。何を頑張るのか良く分からないけど。

「ノイエ。その……優しく塗ってね」

「はい」

観念してベッドの端に座って股を広げた。

紅くなっている部分に彼女の白くて細い指が、トロッとした軟膏を刷り込んでくれる。

大丈夫。これは医療行為だから。変ことは考えない……考えちゃらめ~っ!

興奮しそうになる息子を宥めてどうにか耐え抜いた。

「あはは。初日だったから凄く擦れて真っ赤になっちゃった」

指に残る軟膏を布で拭きながら、ジッと彼女がこっちを見ている。

「でも乗馬って楽しいんだね。それに意外とミシュが教えてくれるのが上手だったんだ。本当に驚いたよ」

「……」

「また暇が出来たら彼女に乗馬を教えて貰うんだ。そうしたら一人でノイエの所にも遊びに行けるようになるね。

でも仕事の邪魔になるかな?」

「大丈夫」

「良かった。ならミシュに頼んでもっと教えて貰わないとね」

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