軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

こうして温まる

新年まで残すところあと半月程度。

特に暦などが無いこの世界では、太陽や月の動き、季節の変化でおおよその新年とする。

こっちの世界に来て1年も経っていない僕としては、周りの話を受けて流されるように暦を受け入れるだけだけどね。

「今日も寒いね」

「はい」

二国共同侵攻からザックリひと月半ぐらいが経過した。

山のように存在していた書類がようやく消えたと思ったら、今度は新年の儀式に関する物が山のように。大半が"近衛"宛なのでパパンに苦情を言いに行ったら、『何を申すか近衛副団長? 団長が留守なのだからお主に仕事が回るのは当然であろう?』と返された。

忘れていた自分の肩書を思い出して発狂しましたよ。

ついでにゾンビのようになっていたパルとミルも押し付けられて、馬鹿兄貴の執務室の半分を支配していた書類の山と対峙することになった。

余りの貯めこみように……下手したら末端の役人さんとか自殺者が出て無いか不安になるほどだ。

で、ようやく粗方の仕事が終わった。

「ノイエ。そこの書類も放り込んじゃって」

「はい」

そこそこの書類の束をノイエが無造作に暖炉に放り込んで行く。

証拠隠滅って大切だよね?

全ては仕事を貯め過ぎて遠征しに行った馬鹿兄貴が悪い。

商談の類まで滞っていたから、最終手段の『そんな書類届いてませんが?』を使うしかなかった。

責任は全て団長様に回すだけさ!

「良し。これにて年内のお仕事は終わりです」

ノイエがまだ焼却処分しているけど、これが終われば無事終わり。

執務室に居る僕ら以外の2人、クレアとイネル君に終わりの挨拶をする。

「2人共王都に残るんだっけ?」

「はい。新年の儀式を2人で見ようって」

「それから1番に、人事院に『婚姻申請書』を出しに行くの!」

「……1番は無理じゃない? 混むって言うよ?」

「1番に行くの!」

1番にこだわっているクレアが頬を膨らまして拗ねだした。

新年を迎えれば2人は数え年で15歳。この世界では1人前として扱われる。

どう見てもまだ2人とも中学生ぐらいにしか見えないけどさ……それでも1人前だ。

そうなると2人の結婚を『若すぎる』と言う理由で反対するのも難しく、いい加減認めないといけないのだ。

新年明けてから……イネル君がミイラにならなきゃ良いけど。

「それにこの申請書には腐った元王子様のサイン入りなんだから! 列を仕切る役人を脅してでも1番に申し込む!」

「これこれ。僕は腐ってはいないぞ? ってそんな理由でサインさせたのか!」

何て抜け目ないのでしょうか? クレアは良い奥さんになるかもしれないな……イネル君が尻に敷かれるのは確定しているしね。

「まっ一度書いたものだから好きに使うと良いさ。さてと……ここ数ヶ月きつい仕事ばかりでちゃんと休めなかった2人に僕ら夫婦からの贈り物です」

暖炉の火を眺めているノイエは……そっとしておこう。

燃えてる火って、何でずっと見てられるんだろうね?

とりあえず机の上の包みを手にしてそれをイネル君に手渡す。

内容があれなせいでだいぶ大きくなっているけど、どうにか彼は受け取り抱えた。

「これは?」

「新年の儀式は新しい服で参加しなさい」

「……ドレス!」

「正解」

「うわ~!」

目をキラキラさせてクレアが喜んでいる。

まあ服に関しての伝手は急速に拡大しているので、2人の為のドレスも格安で手に入った。

今直ぐにでも中身を見たがっているクレアを宥めるイネル君の様子を見つめ、雪が降りだす前に帰宅するように促す。

小躍りして歩くクレアを荷物によろめきながらイネル君が追って行った。

ちなみにパルとミルは先に休みを得て実家……養子先の家に戻っている。

もちろん2人にも新年の儀式用に新しいドレスを送らせて貰った。ただ男装のミルにもドレスを送ってしまったが……新年ぐらい女の子に戻ると良い。

「アルグ様」

「ん?」

「まだ?」

「……そろそろのはずだけどね」

部屋に残って2人して暖炉の火を見つめて待機している。今日はとある用事がまだあるのだ。

「失礼します」

「どうぞ」

「アルグスタ様。シュニット様がお呼びにございます」

「はいよ。行こうノイエ」

「はい」

暖炉に薪を投げ込もうとしていたノイエが手を止めて薪を元の位置に戻す。

軽く彼女の服の木屑を払って……うん大丈夫。

「場所は?」

「はい。応接の間の方で」

「了解」

ノイエの手を取りメイドさんの案内で廊下を歩きだす。

今朝降った雪のせいで今日は本当によく冷えている。外の様子を見れば雪が積もって白一色だ。

「今夜も寒くなりそうだね」

「はい」

と、ノイエが僕の腕に抱き付いて来る。

少しだけ表情を柔らかくして。

「こうして温まる」

「腕で良いの?」

「……もっとする」

「はいはい。お手柔らかにね」

増々可愛らしさに磨きをかけて来たノイエの頭を撫でて、僕らは通路を進む。

ただノイエには悪いが、最近夜な夜な出て来る人が増えて来て僕の方はパンク寸前なんだよ。

ホリーはまだ充電中っぽいから出て来ないけど、ファシーとか動けないのにレニーラとか。あと先生が出て来ては愚痴を言われるし。

「ん~」

「なに?」

「落ち着いて考えると僕って幸せなのかなって」

「はい」

ギュッと抱き付いて来るノイエはたぶん意味を間違えている。

僕の言う幸せって……色んな女性と、つまりハーレム的な意味合いだ。

体は全てノイエですけどね。それでも中身が違うと全て新鮮なのです。

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