軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

……まだカエルの方が良いです

「仕切り直してドラゴン退治と行きますか」

「……はい」

消え入りそうな声で身を小さくしているモミジさんは、メンタルに難があるけど何だかんだで打たれ強いから大丈夫だろう。

問題は打たれ強さが、"身"も心も臭いけどね。

腰の前で両手でカタナを横に持つ彼女が僕の近くに寄って来た。

色々とありましたが仕事は真面目にするタイプなので、壁に群がっていた幼体は大半がお亡くなりに。で、後から来た成体が現在お食事中。

「思うんだけどさ」

「はい?」

「この幼体の親があの中で食事している可能性って……どう思う?」

「さあ? ただドラゴンに家族愛があるのかは知りませんが」

「だよね。人間だったら爛れた姉妹愛とかあるけどさ」

言葉のナイフを放っておいたら、胸を押さえたモミジさんが数歩後退して踏ん張った。

「……そう言う姉妹も居るみたいですねっ!」

乗り越えただとっ! 流石真なる変態一族の1人だ。こわっ!

立ち直ってまた横に来た彼女と一緒に壁の下の惨状を見つめる。

皮も骨も構わずバリバリと食べてますな。ドラゴンの特徴として、あんな風に同族の血肉を取り込むことで力を増すって話だけど。

「このまま放置してたら下に居るドラゴンたちって強くなるのかな?」

「直ぐには変化しないと思いますが」

「だよね」

そんなサクサクレベルアップされてもこっちが困る。

何よりこっちはレベルアップの概念が無いんだから同条件であって欲しい。

「では次の実験です」

「はい?」

手にした小石に祝福の力を纏わせて……鬼は外っ!

ブシュブシュと血煙を上げて小石の直撃を受けたドラゴンが地面に伏す。

だが数体は肉を削られてもどうにか立ち上がった。で、新鮮な血の匂いに興奮した隣のドラゴンに首を噛まれて……見事な食物連鎖だ。

「力を押さえると一撃死は無理か~」

「……」

スススとモミジさんが足音を発せず離れた理由は聞かないであげよう。

「あの~アルグスタ様?」

「ん?」

我慢出来なくなったのか、蒼い顔をしたモミジさんが恐る恐る口を開く。

「そのお力は?」

「ただの祝福です」

「わたしのと全然違いますよねっ!」

「まあね」

体ごと向き直って相手を正面から見る。

彼女は小柄で可愛らしい日本人的な女の子だ。こんな風に話していると、ここが異世界だと忘れそうになる。僕の方は金髪碧眼ですけどね。

「僕の力は攻撃。モミジさんの力は防御。根底から違うからね」

「でもその威力は……わたしが聞いた祝福のお話では絶対に変です」

「だろうね」

認めたくないけど僕もそう思うよ。見た目だけならね。

「文句ならあの煩い小姑に言ってくれるかな? この力を押し付けたのはあれなんだから」

「それは……」

まっ普通は言えないか。僕の場合は最初の印象が最悪だし、何より相手の正体を理解している。

魔眼カミューがどうして神様の真似事をする存在に選ばれたのかは知らないけど。

「それに心配しなくて良いよ」

「はい?」

クスッと笑って意地悪な感じで、

「モミジさんには被害が出ないようにしてあげるから。今日だけね」

「……」

顔から血の気を完全に失い彼女が棒立ちになった。ちょっと脅かし過ぎたか?

「ノイエの秘密同様に、言えばこの小石が君の頭を狙うだけ」

「……まだカエルの方が良いです」

「そうだね」

ガクガク震えている相手を見ていると……少しイジメたくなって来る。

僕の中に眠っていたSっ気が目覚めたか?

「なら質問だ。モミジさんは知ったこのことをどうする? 誰かに告げる?」

「……」

胸に手を当てて何度か息を吸った彼女が、ゆっくりと口を開いた。

「言いません。決して……誰にも」

「良い子だ」

覚悟を決めた様子の彼女を手招きする。

震える足を動かして、絞首台でも昇る感じで彼女は目の前まで来た。

「なら次の実験に付き合ってね」

「……はい?」

手を伸ばして彼女のカタナに触れる。

祝福を纏わせて……後はどうなるか見るだけだ。

「一発ドラゴンに向けてやって貰える?」

「……剣気を飛ばせと?」

「うん。乗ってくれると良いんだけどさ」

「……分かりました」

気負いした状況で彼女がカタナを構えて放った。

「断空っ!」

アギャーと直撃を受けたドラゴンが真っ二つに。が、

「今の普通だったよね?」

「みたいです」

視線を刀に向けると祝福を纏ったままだ。

他の人にどう見えるかは知らないけど、金色のオーラみたいな物がカタナを包んで残っている。

「剣気には乗らないか~。面倒臭いな」

「えっとアルグスタ様?」

「まっ仕方ないよね」

気持ちを切り替えて次の実験やってみよう!

「なら次に移ろう」

「はい?」

「モミジさんなら大丈夫でしょ?」

「えっと何……がぁぁぁああ~」

両手でドンッと押したら彼女が壁の向こう側へと消えて行った。

壁越しに下を覗くと、無事に着地した彼女に向かってドラゴンが殺到する。

「頑張って斬り倒してっ!」

「無茶っ! いゃあ~っ!」

突然のことで半狂乱になった彼女がカタナを振り回し無双を開始した。

物体に宿らせないと効果が無いとか使い勝手の悪い祝福だよな。先生も左手の術を作るのに『苦労した』とか言ってたしな。

まあ苦労したぐらいで作っちゃうのは凄いけどさ。

「アルグスタ様~! お助けを~っ!」

「もうちょっと頑張ってみようか?」

「いゃあぁ~!」

人間生きようとすると凄い力を発揮するようで……モミジさんは30体のドラゴンを斬り倒した。

後で縄梯子で回収したら物凄い剣幕で怒られたけどさ。何かあったら小石爆弾を使うから大丈夫だったんだけど、説明を省いたのは良く無かったかな? それに祝福を使えば切り抜けられるはずだしね?

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